事実の裏側
複眼的思考と一部重なるが、「事実」は決して一面的ではないし、特にマスコミ報道の裏側には、たくさんの事実があるということを時々思う。
『週刊ポスト』か『週刊現代』に二宮清純氏の「追憶のベストゲーム」というコラムがあり、1968年9月17日の阪神巨人戦で江夏豊が年間奪三振記録を更新したエピソードが紹介されていた。
阪神の公式ページにあるように
この日、江夏豊は年間354個目の三振を王貞治から奪っている。
二宮氏は、この出来事について、次のような事実を紹介している(要約して紹介)。
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タイ記録である353個目の三振を早々と奪ってしまった江夏は、記念すべき354個目の奪三振を王貞治から奪うために「これから9人に三振を取らない」という離れ業を実現しなくてはいけなくなった。
そのため「バッターの好きなコースからほんの少し内側を投げて内野ゴロ」という作戦を立てた。
その結果、無事、奪三振の記録は王さんから奪うことができた。
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すごい。
三振をとる強烈な自信の裏返しで、三振をとらせない投球もできるわけだ。
でも王さんから354個目の三振をとるために、結局はとれたかも知れない奪三振を断念したのだとも言える。
僕は、そこがすごいと思った。潔く記録更新を捨てたと言うことでしょ?
実は、以前から、「記録より記憶」というケースがあることが気になっていたし、「新記録より勝利優先」というケースがあることも気になっていた。
例えば、プロ野球で優勝が決まってしまうと、勝利チームの選手は調整に入り、個人記録よりも日本一にこだわる場合が出てくる。
例えば、ロサンゼルスオリンピックで活躍したカールルイスは100M・200M・幅跳びとリレーで金メダルを狙っていたから、世界記録は狙わなかったと思う。種目を絞ったら、もっといい記録が出たかもしれない。
例えば、僕は大学3年の時、400メートルハードルで愛知県選手権6位になった。
決勝の1つ前の種目が400リレー予選で、僕はこの予選の3走を走った。
バトンを渡してスタート地点に戻ったら、もう「位置について」の状況だった。わざとフライングして少しは時間を稼いだが、さすがに400Mを走るにはダメージがあった。
それがなければ6位ではなかった。後から考えると、僕はあの頃が一番調子がよかったので、僕は自己新記録の更新のチャンスを失ったのだった。こんなことは誰も知らないし、記録には全く載らない。
事実には裏がある。
事実の一面だけ見て、全てを知ったようなフリをしてはいけない。
大リーグだって、確かに今の日本人選手はすごい。
でも、江夏がピーク時に大リーグ入りしていたら・・というように気になる「仮想」をすると、往年のスタープレイヤーの名前も次第に挙がるだろう。
今だって、現在の球団とのシガラミ(感謝の念)からメジャーを断念している選手もいるだろうし。
巨人の上原投手は、最初からレッズに入団するところを巨人にまるめこまれた(はずだ)し。
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