「読解力」と「論理エンジン」
先日書いた「読解力向上プログラム」にトラックバックいただいた渡辺知明さんのブログでは、文部科学省の「読解力向上」の提言に対する疑問が示されている。
氏の主張の一部を箇条書きで示してみる。
・一と口に読解力といってもさまざまなレベルがある。
・その基礎となる能力は、構文論――文の組み立てとつながりの文法である。
・何よりも大事だと思うのは、まずしっかりと文(句点でまとまる文)を正確に読むことである。
・ものごとについて評価したり、考えを記述するためには、文によって考えを組み立てる能力が必要である。
先日、『ドラゴン桜』で紹介された出口汪の受験参考書を探しに行った。
分かりやすそうだったので入手したのが『日本語トレーニング』(小学館)。
キーワードは「論理エンジン」と呼ばれる独特の日本語トレーニングのステップ。
レベル1からレベル100まで全体で1000の問題プリントからできているのだそうだ。
そのレベル10までは、主に一文を論理的に扱うための訓練になっている。
前掲書P84・85には次のように書いてある。
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一つの文でも、主語ー述語、修飾ー被修飾など、そこには論理的な関係が存在している。そうした一文の構造を論理的に把握し、さらに言葉の規則を習得する。(中略) 以下、どのような効果があるか、列挙しておく。
①言葉の規則を知ることで、文法力が身に付き、客観的な解法が可能になる。
②現代文の問題を解くときに必要な、一文の構造を分析する能力が身に付く。
(中略)
③古文は省略の文章であって、その省略部分を補うのが、論理力と文法力である。まさに読解のための生きた文法を使いこなすことができるようになる。(中略)
④言葉の規則を知ることで、規則に従った正しい文章を書くことができる。これが後に記述式問題を解く際の武器になるし、作文・小論文の基礎となる。
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渡辺氏の、文の組み立て・つながりの文法を重視しようと言う考えは、出口氏の基本姿勢と同じである。
出口氏は、「日本語を鍛える=論理を鍛える」としてとらえている。
論理とは、筋道である。私たちは物事を筋道を立てて考え、筋道を立てて人に説明し、また同時に、話を聞き、文章を読んで相手の筋道を理解していく。(前掲書P49)
と述べ、大学受験まで対応させている。小論文を書く能力まで見据えての論理トレーニングである。
したがって、出口氏の論理トレーニングは、小論文に近いPISA型の読解力の向上に役立つのである。
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