アガリクスは「ガンに効く?」
(今回は、時事ニュースの考察ではなく、メデイアリテラシー教育の1例として書きます)。
10月に「アガリクスはガンに効く」と架空の体験談を掲載した書籍を出版した史輝出版の役員が逮捕された。 アガリクスはガンに効く、という書籍の広告なら、私もよく目にした。
医学博士が監修ではなかっただろうか(あるいはそのように思わせる宣伝広告だっただろうか)。
いかがわしい宣伝本は「バイブル本」と呼ぶことになっているそうだ。
そして、アガリクスのような健康食品を「がんに効く」と広告したり、販売したりすることは薬事法違反ということになっている。
ただし、表現の自由の問題もあって、バイブル本やHPで紹介するだけでは規制対象になっていないらしい。 だから、今のところ「ガンの体験者」の投稿もそのままHPに掲載されている→ここ
それにしても、今回のようにバイブル本の出版が規制され、逮捕者が出るならば、広告を垂れ流した新聞社も責任を負うべきだと思わざるをえない。
今の世の中では、新聞に掲載されたんだから大丈夫だろうと思うことは自然の発想で、新聞広告まで「疑うのが常識」にはなっていないからだ。
もし、「うちは広告を載せているだけですから責任を負いませんよ」と新聞社が開き直ったら、新聞そのものの信憑性まで否定することになってしまう。
でも、やっぱり、広告内容の信憑性まで新聞社に要求することは無理か。
ならば、みなさん、新聞広告は新聞社が内容を保障したものではないことをきちんと理解しましょう。
そして、また時に新聞記事そのものも、たまたま取材した人の一方的な立場の意見しか載らないこともあるということを理解しましょう。
また、当然ながら、その新聞社の後援や主催行事が詳しく紹介され、他社の後援や主催行事が小さく扱われるのはごくごく当然のことだということも理解しましょう。
ちなみに厚生労働省のHPから次の文書を見ることができた→ここ(PDF)。
条例の名称は恐ろしく長い。
健康増進法第32条の2
「食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告適正化のための監視指導等に関する指針」
特に次の太字の箇所を新聞社はどうとらえているのかの回答が欲しいものだ。
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これに対し、広告依頼者から依頼を受けて、当該「広告その他の表示」を掲載する新聞、雑誌、テレビ、出版等の業務に携わる者は、依頼を受けて広告依頼者の責任により作成された「広告その他の表示」を掲示・放送することから、直ちに同条の対象となるものではない。
しかしながら、当該「広告その他の表示」の内容が虚偽誇大なものであることを予見し、又は容易に予見し得た場合等、特別な事情のある場合においては広告依頼者とともに同条の適用があり得る。
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今回の私の発言は11月8日の中日新聞夕刊、早わかりQ&A「アガリクスの『バイブル本』なぜ出版社が摘発されたの?」という特集を参考にしている。
この特集は、新聞広告を掲載してしまった新聞社の責任には一切触れていない。
新聞社の責任回避のための特集にも思える。
なぜなら上記の32条の2の太字の部分に触れていないからだ。
かつて、カイワレが0-157の原因として騒がれたときも、その後「なぜ、このような問題が生じたか」を他人事のように特集している新聞があった。煽ったのは新聞やテレビだろうという意識の見られないその記事にあぜんとしたものだ。
オウム真理教の時も同じように他人事のような総括をしていた。
今回も似たようなもんだな。
(補足)
史輝出版とライブ出版と青山書籍は同じ会社のようで、会社名を変えて巧妙にバイブル本を売っていたようだ。
写真の本の著者「桜井一正」は、以下のように紹介されている。
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桜井一正[サクライカズマサ]
昭和27年生まれ。昭和55年、東京大学医学部卒業。第69回医師国家試験合格。その後東京大学付属病院老人科物療内科、青葉台病院、相模原南病院に勤務。ガン免疫の臨床研究に携わる。平成14年より、医療法人社団東西会理事に就任。現在、東西医学ビル若若クリニック副院長を務める =======================
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