ラベリングの効用~小見出しの意義4~
年末年始と春日井市の教育論文の仕上げに時間を費やしてしまった。
OECD学力調査の結果を受けての「読解力」向上の授業実践を研究テーマにした。
OECD調査の、ある意味での「目玉」は、論述タイプの設問に答えられない生徒が多かったことである。
というわけで「読解力」をテーマにしながら、意見文を書く手だてを考察した。
その中で、結果的に浮かび上がってきたのが「ラベリング」の重要性だった。
「ラベリング」については、このブログでも何度か下書き風に書きためてきた。
しかし、後で読み直してみると、どうしても難解である。
過去のブログを校正するより、改めて書いた方がいいと思い以下に書いてみる。
このブログだって「タイトル」というものがあり、本文がある。
メールにも「件名」があり、本文がある。
新聞には「見出し」があって本文がある。
書物には「題名」や章ごとのタイトルがあって、本文がある。
このように本文を総括するような予告するような「タイトル」「件名」「見出し」をつける作業が「ラベリング」である(と解釈している)。
「ラベル」は、ないよりはあった方がいい。いや、ないと困ることも多い。
自分の作文に「ラベリング」をするというのは、結局何を言おうとしているのかを端的に示すことである。
教材文を「ラベリング」するというのは、何について書かれているかを端的に把握することである。
だから「理解」活動においても「表現」活動においても、ラベリングの指導をすべきなのだと考えている。
本文の内容が「具体」であるとすれば、ラベリングした言葉は「抽象」である。
要約指導は、この「抽象化」の指導であると言える。
宇佐美寛氏は「要約」は単なるレッテル貼りにすぎないという立場から「要約=抽象化」よりも「具体的に論じる」ことを勧めている(著作集『論理的思考をどう育てるか』)。
宇佐美氏の主張を、僕は次のように解釈している。
「お正月はいろいろな人に会いました。」「いろんな所へ行きました。」という作文に誰も感動しない。
誰と会ったのか、どこへ言ったのか「具体的に」書けない作文はラベリングされていても内容は不足している。 だから大切なのは抽象ではなく、具体なのだ、と。
もし「お正月はいろいろな人に会いました。」というラベルの一文が使いたいなら、次の2つの方法があるのだと僕はとらえている。
===================
A:「お正月はいろいろな人に会いました。
例えば、岐阜のおばあちゃんや伊勢のおじいちゃん、隣の町のあきらおじさんの家族です」
B:「お正月は岐阜のおばあちゃんや伊勢のおじいちゃん、隣の町のあきらおじさんの家族などに会いました。
このようにお正月はいろいろな人に会いました。」
===================
Aは「抽象ー具体」のタイプ、Bは「具体ー抽象」のタイプということになる。
抽象と具体の「架け橋」は「例えば」や「このように」といったつなぎの言葉である。
ちなみに表現不足の子も2つのタイプがある。
(1) 具体的な記述がダラダラしていて要するに何が言いたいか抽象化できないタイプ
(2) すぐに抽象語でくくってしまって、具体的に描写できないタイプ
当然、どちらも指導対象であるが、指導の方向が正反対である。
大切なのは「抽象と具体の往復」。
その往復できる力を支えるのが「『理解』と『表現』の往復活動」なのだと考えている。
自分の作文にラベリングできる力が読解力につながっていき、
読解でラベリングした力が、自分の作文のラベリングに役立つからだ。
ラベリングが難しいと感じるのは、文中にない言葉を自分で考えなくてはいけない場合だ。
文中の言葉を抜き出すような国語の読みとりは簡単だが、自分で考えるのは難しい。
要約指導でも、文中の言葉を別の抽象語で置き換える場合は、なかなか生徒から答えが出てこない。
「主題」を考える時も、文中にない言葉で主題を表す場合は、なかなか生徒から答えが出てこない。
文中にない答えを考える場合、何を言っても正解というわけではない。そこには「論理的な整合性」が必要である。
文中にない言葉を吟味させる場合、思いつかない子は「だから国語は嫌い。どうしてそんな言葉が思いつくかが分からない」といった気分になる。
だからこそ、簡単な小見出しなどのラベリング作業を繰り返し、文中にない言葉で統括する場合もあることに慣れさせる必要があるのだと考えている。
いっても
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