読解力の3段階
市の国語研究会(理解部会)があって、フィンランドの教育を特集した『実践国語研究』の一部が紹介された。
この特集号は、買ってはいたがしっかり読んでいなかった。
紹介されてみてビックリする箇所があった。フィンランドの国語書の翻訳版を担当された北川達夫氏の原稿の中に、読解力の到達目標が三段階で示されている(P13)(要約の文責は竹田)。
①復唱読解レベル・・・素材文に含まれる情報をそのまま取り出し「何が?」「だれが?」「どこ?」などの問いに答えられる段階
②結論読解レベル・・素材文相互の情報を関連づけ、解釈や「なぜ」に答えられる段階
③推論(評価)読解レベル・・素材文に含まれる情報と自分の知識や経験を関連づけ独自の結論を推論できる段階。内容を踏まえた自分の意見や物語の続きの推論を書く。
これは、そのまま「評価規準」になる。
①復唱読解レベルを最低ラインのCとして、②をB規準、③の推論をA規準と想定できるのだ。
ただし、「いつ?」「だれが?」などと書いてあることをそのまま問うだけの問題でも答えられない子がいるのが現実で、①ができない子をCにしてしまうことが多い。
それにしても、注意しなければいけないことが、いくつか列挙できる。
◆日頃の自分の授業の中心発問が復唱読解レベルになってはいけない。
◆小学校の市販の国語テストは大半が復唱読解レベルの問題なので、それができたからといって油断させてはいけない。
◆とはいえ、力のなさを感じる子には、きちんと「復唱読解レベル」の発問で最低ラインの力を保障してあげたい。
◆①②のレベルを飛び越えて③のレベルの問いをしては、単なる思いつきの文章ができるだけで、内容を踏まえた自分の意見とは程遠いものとなってしまう。解釈や空想を超えて「妄想」のような状態になってしまった作文を評価することのないように注意しなくてはいけない。
◆「なぜ」とさえ問えば②レベルの活動と思いがちだ。しかし「・・・・から」と明記されている部分があれば、いくら「なぜ」を尋ねても「復唱読解レベル」になるはずだ。定期テストでも「・・から」と書いてある部分を指摘させるために「なぜ」を尋ねることはあるが、それは「復唱読解レベル」の問いであることを自覚しなくてはいけない。
◆とはいえ、答えが分散しないようにするのは、テスト問題は「復唱読解レベル」に終始することも多い。テストとは別に授業の中では②や③のレベルの活動をさせていきたい。
◆そのためには、まず自分が②や③のレベルで自分がどれだけ書いたり思考したりできるかを試してみたい。
◆国語の読み取り問題には、答えとなる表現を「摘出」するだけでいいものと、自分で「表現」なければならないものがあることは意識していた。それを3段階のレベルで示されたら、ずいぶんスッキリできた。
◆「一字読解」とか「教科書の見開きで100問」といった問題作りは、「復唱読解レベル」の問いを大量に体験させる効果がある。だからこそC規準の子の学力を保障できるのだと思う。
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