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June 14, 2006

「要約指導」の2タイプ

  中1(光村図書)の国語の教科書に『クジラたちの声』の要約指導を行う。
  例えば、①②段落を、まとめて要約する。
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①大昔から船乗りたちは、船がクジラの群れに近づくと、低く不気味な音が船底にこだまするのを知っていた。彼らはそれをクジラの鳴き声だと信じていた。

②しかし、当時の研究者がいくらクジラの体を調べても、声を出すために必要な声帯は見つからなかった。人々は、声帯がない以上、鳴き声を出すことはできないはずだと考え、船乗りたちが聞いたのは、何か別の音だろうということになった。
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 長々と文をつなぐのは難しいから、この場合は「キーワード」に着目させる。
 「大昔」「クジラ」「不気味な音」「鳴き声」「研究者」「声帯」「別の音」あたりがキーワードになるだろうか。
 ぎりぎり絞って「クジラ」「鳴き声」「声帯」の3つである。
 つまり、この3つのキーワードが入った文を自分で考えればいいわけだ。

A)大昔、船底にひびく不気味な音をクジラの鳴き声だと信じられていたが、声帯がないので違うと考えた。

B)クジラには声帯がないので、船底にひびく不気味な音は鳴き声ではないと考えられた。

 ちなみに、要約のポイントとしては「クジラ」を何度も使わないことも挙げられる。
 同じ言葉を繰り返すのは文字数がもったいないのである。

 続いて③④を要約する。
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③だが、彼らを観察していると、時として互いに情報を伝え合っているとしか思えない場面に出会う。
④例えば、コククジラの群れでは、一頭がおとりになって、敵から群れの仲間を別の方向に逃がすことがある。逃げる群れを九十度の角度で曲がらせた先頭の一頭が、逆もどりして、目立つように泳ぎながら、仲間とは別の方向に一直線に進むのである。おとりになるのはよほど泳ぎに自信のあるクジラらしく、一頭で逃げきってまた仲間の群れに合流する。そうしたことから、研究者たちは、クジラには情報を受信・発信する何か優れた手段があるにちがいないと考えるようになった。
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 この2段落は、キーワードで考えるより、トピックセンテンスで考えた方が早い。
 この2段落をまとめているような1文を探すのである。
 すると「そうしたことから・・・」という統括の言葉があるから最後の1文がいい。

そうしたことから、研究者たちは、クジラには情報を受信・発信する何か優れた手段があるにちがいないと考えるようになった。

 この1文を縮めてみる。

◆研究者は、クジラには情報を受信・発信する手段があると考えた◆

 1段落ずつ要約をしなかったのは、全部検討したら多すぎてうんざりするかもしれないことと、段落によっては非常に短くて要約する意義が見いだせないからだ。
 ちなみに、③④のトピックセンテンスとして選んだ「そうしたことから、研究者たちは、クジラには情報を受信・発信する何か優れた手段があるにちがいないと考えるようになった」の一文だけ改行して1段落として独立させることができる。自分が筆者だったらそうする。
 1文1段落を多用する人もいるので、段落指導を1段落ずつやるか複数段落で扱うかはケースバイケースということになると思う。

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Comments

竹田博之さん、こんにちは。山梨の井上秀喜といいます。

竹田さんの「クジラたちの声」関連の記事について、私のホームページで取り上げさせていただいています。

ぜひ、お読みいただき、ご意見をお寄せください。

けんか読みの記事についても、取り上げたいと思っているのですが、こちらについてはまだ、原稿が完成していません。

Posted by: 井上秀喜 | August 16, 2006 10:32 AM

井上さんのHPを読んで圧倒されています。ブログは下書き・覚え書きの段階で発信してしまうことが多いので、緻密に検討されるとボロが出ます。井上さんの意見に忠実に答えるのは時間がかかりますが、いい勉強の機会にしたいと思います。要約の手法を「たった1つ」と思わないことで、僕は要約指導がずいぶん楽になりました。その分「きわめて恣意的な手法」になっているということは自覚しています。

Posted by: 竹田博之 | August 17, 2006 10:07 AM

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