数値の意味を考える
数値の大きさは「相対的」に判断される。
世の中で何十万部売れた書籍が大ヒットと言われるが、教育界に限定すれば1万部でもすごい。
野球観戦や有名アーテイストのコンサートなら一夜で3万人集まることもあるが、教育の集会ではそうはいかない。
さて、先日ラジオで聞いた「乳がん」の死亡者は年に約1万人ほどだと言う→ここ
乳がんにかかる年令と性別を考えると、該当年令の女性にとっては、かなり高い率での死亡率ということになる。だから、さまざまなメデイアで乳がん検診が話題になる。
一方、交通事故による死者は1万5000人をピークに今は7500人程度だという→ここ
数値の意外な少なさにばかり目がいってはいけないことは、次の記述からも明らかである。
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厚生労働省の「平成16年 人口動態調査」によりますと、平成16年のわが国での死亡原因のうち、悪性新生物による死亡は、死亡総数の31.1%にも上りました。一方、交通事故による死亡は、総数のおよそ1%に過ぎません。こうしてみると、不慮の事故としての交通事故で死亡する確率は、死亡者の総数全体から見れば、それほど高くはないといえるでしょう。
ところが、警察庁交通局の「平成16年中の交通事故の発生状況」によりますと、平成16年の1年間で、わが国で発生した交通事故は95万2,191件、重軽傷を合わせた負傷者数は118万3,120人にも上りました。死者の数こそ近年では減少傾向にはあるものの、発生件数、負傷者数はともに増加。これらの数字は実に過去最悪を記録しているのです。
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それはそれとして、あらゆる年代層が対象になる交通事故で死ぬ率と、一部の年齢層に偏る乳ガンで死ぬ率をン考えたら、これは後者の方がはるかに大変な事態と言うことが分かる。
ちなみにwikipedeiaで交通事故を検索すると「交通戦争」についての次の記述があった。
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交通事故死亡者は、戦後の高度経済成長期に自動車保有率が上昇するのと比例して増加し年間1万人以上が死亡する事態となった。1970年は1万6765人が死亡した。戦争でもないのに膨大な人数が犠牲となることを比喩して「交通戦争」と呼ばれた(日清戦争の戦死者は約1万3千人)。)
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日清戦争の戦死者の数から「交通戦争」と呼ばれたのか、というのも1つの驚きだった。
さて、死者の数値として、もう1つ考えたいものがある。
自殺者数である→ここ
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2004年のデータでは、日本の年間自殺者数は32,325人(警察庁発表)に達していて、2003年の自殺者は34,427人で過去最高を記録している。日本を含むいくつかの国では自殺は主要な死因のひとつである。(日本人の死因の第6位で、とりわけ20代、30代では死因のトップ。)
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自殺死者3万人は、交通事故死者の4倍。
20代、30代の死因のトップ、全体での死因の6位、というのはすごい数値である。
最近新聞やテレビで「うつ病」についての特集が多いのもその対策なのだろうか→たとえば、ここ。
1つの数値では、その意味を理解することは難しい。
数値は「相対化」されて初めて意味を持つことも多い。
「相対化」するためには、比較すべきさまざまな他の情報にあたってみる必要がある。
調べた先には、またさまざまな「知らなかった」数値が出てきて、調べるというのは本当にあくなき追究なのだと思うのである。
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