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September 02, 2006

読んでない本『記憶がウソをつく』

045251
 まだ読んでいない(買ってない)本である。
 養老孟司と古館伊知郎の対談(扶桑社)。
 ネットで書評を読んでいて驚いた本である(そのHPが見つからないので紹介できないのが残念)。
 記憶は自分の都合の良いようにインプットされたり修正されたりするので、老人の昔話などは決して真実ではないのだそうだ。
 そのようなことが、この本には書いてあるらしい。
 その話を聞いたのが7月。その後の夏休み、たくさんの戦争体験話を新聞で読んだりテレビで見たりした。
 すると、これまで信用していた戦争体験談に、どうも懐疑的になってしまったのだ。
 
 現代の事例で考えよう。
 今年のサッカーワールドカップで日本代表は1勝もできないで予選敗退した。
 今なら誰もが「まあ、しょせん実力がなかったと言うことだよ」「負けると思っていたよ」といったコメントを言う。
 今さら「オーストラリア戦はミスジャッジで負けた。初戦の敗退が最後まで響いた」などと力説してもむなしいだけだ。
 たとえ大会前にハイテンションで「決勝進出だ~」と騒いでいた人もマスコミも、今となっては冷めた批評をしているか、盛り上がった過去はなかったかのようにオシムJAPANに気持ちを移している。
 今から思えば「ブラジル戦に勝機はある」なんていうのは無謀な予想記事ではあった。
 けれど、戦う前から「勝てるわけがけない・決勝は絶望的」なんて記事はとうてい世に出せない。
 日本代表を最後までで声援しようという気持ちも分かる。
 たとえ決勝に行けなくても応援しようよ、という姿勢はとても大事だ。
 (それなら、敗戦濃厚な状況下で「勝てる・勝てる」とあおった戦時下のマスコミも責められないということだ)。

 そのことを戦争体験談に、仮想的にあてはめると、
たとえ「日本は勝つぞ」「アメリカなんかに負けてたまるか」「国のために喜んで命を捨ててやる」と意気込んでいた人もマスコミも、その時のハイテンションな心境を今になって正直に告白することは難しい。
 「俺だって死にたくなかったんだよ」
 「負けると思ったんだよな」
 「あんな戦争無意味だと思ってたんだよな」
というトーンで語るのは、無意識の自己弁護のようなもので誰も否定できない。
 誰もがそのようにして自分の気持ちまでも改訂して語ってしまうのだろう。
 
 『少年H』という本も、事後法のような冷めた戦争批判の視点で書かれているらしい(読んでいない)。
 当時の少年では知り得なかった事実を語る部分があるらしいが、それは、知ってしまった事実を排除して過去を振り返るのは難しいし、やはり無意識に(結果的に)「ウソ」をついてしまうからなのだろう。
 

・・・読んでいない『記憶がウソをつく』から、勝手に「ウソをつく心理」を考えてみた。
 本当にこんなことが書いてあるのかどうかは、きちんと検証しなくては。

 それにしても、戦争にのめりこんでいった人の気持ちも、「靖国で会おう」と言って散っていった戦士の気持ちも、今の感覚でコメントすることは「事後法」と同じで極めてナンセンスだと思う。
  「うおー日本軍すげー」と戦果に大喜びして提灯行列した戦時中の人たちを、今になって責めることもできないし、そのように狂喜乱舞して盛り上がった事実を語ろうとしない(忘れようとしている)人を責めることもできない。
 繰り返すが、現代の我々だってワールドカップやオリンピック前に盛り上がった気持ちを今になって正直に語るのは難しいのだ。
 ホリエモンや村上ファンドを持ち上げた人もオウム真理教を擁護した人たちも、今は自己否定の毎日であろう。
 
 他人の体験談を、少し疑って聞いてみる。
 だいたい人間は過去を美化したがるものだ、自分に都合の悪い記憶はすり替わっていくものだと思うだけで世に中を見る目が変わった気がする。
 それぐらいインパクトのある本だった(って、まだ読んでないよ)。

・・・読んでいない本に感銘するという全くおかしな構造になってしまった。早く読了しないと。

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