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October 27, 2006

未履修の実態調査は誰のため?

必修科目の未履修で高校卒業できない生徒が出る・・・という話題が波紋を呼んでいる。
「世界史くらい世の中の常識だから、受験に無関係でも知っておくべきだ」という批判もあった。
世の中の常識程度の世界史なら「中学社会」で十分習っている。
中学社会・中学理科のレベルは、他教科の教師からみると正直なかなか「常識以上」なのである。
高校の歴史の授業が「大人の常識として知っておいて損はない」というのは、やや現実離れした話である。

昨日のブログでは「受験生に過酷な補習はすべきでない」という趣旨で述べた。
仮に自分の子どもが該当したら、いたたまれないからだ(実際は違います)。
もう1つの理由は「そんなこと言い出したら、かなり多くの学校が大なり小なり違反やら違反すれすれのことをやっている」と直感的に思ったからだ。
本日の共同通信のニュースは次のように述べている。

未履修、29都道県で 東京、新潟など新たに判明  高校の必修科目の授業を他の科目に振り替えなどしていた未履修問題で、新たに東京、新潟、岡山などで未履修があったことが判明、生徒に必修科目を履修させず、3年生が卒業できない恐れのある高校は全国29都道県で168校に上ることが26日、各都道府県教育委員会などの調査で分かった。  文部科学省は各都道府県教委に対し、27日までに実態を報告するよう求めており、さらに数が増える可能性がある。  未履修が判明しているのは北海道、青森、岩手、山形、福島、茨城、栃木、群馬、東京、長野、新潟、山梨、静岡、愛知、岐阜、富山、石川、福井、岡山、広島、鳥取、山口、香川、愛媛、福岡、佐賀、長崎、大分、宮崎の各都道県。  東京都教育庁によると、都立八王子東高では、3年生の在校生320人のうち181人が公民分野で「政治・経済」「倫理」の履修を選択していたのに、実際には倫理を履修しておらず、世界史など他の科目の授業を受けていた。  香川県の私立大手前高では、理系を選択した3年生87人に、地理の時間に世界史の授業を実施。福岡県の県立田川高では、3年生の全員275人が、必修の世界史や日本史を履修せず、ほかの科目の授業を受けていた。

ますます人数が増えてきたぞ。
再度言うが、正直に報告した学校だけ厳しい対応に迫られるなら、それは酷な話だ。
それを言うと正直に必修科目を履修した高校の生徒が不利になると反論が出る。
そういう批判は高校生自身が確信犯だった時に言ってほしい。
高校側は確信犯だったと思う。「開き直りだ」という批判もあるが、実態はほぼ「右へ習え」ではなかったのかと思う。
じゃあ、教育委員会や文部科学省は、本当に知らなかったのか。
確信犯的に「見て見ぬ振りしていた」のであれば、断罪すべきは管理側であって現在の高校3年生や過年度生の落ち度ではない。 
「分かってしまった以上、放置はできない」の強硬措置をとる発想は管理者にとっては当然だと思う。
しかし、文部科学省は見過ごした自分たちの落ち度を含めて多いに反省し、現在3年生への過度な負担には最大限の配慮や特例措置を講じて欲しい。
繰り返すが、自分の子どもや教え子が今年に限って、しかも夏休み前ならまだしも、この時期になって、こんな話題で振り回されることを想像したらいたたまれない。
未履修の調査は、あくまで実態把握を目的として欲しい。
そうでないと、実態調査にさえ不正が生じる。 
 
「お前は教師だから身内に甘い」と言われるかも知れない。
私は「学校に甘い」つもりはないが、「生徒に甘い」と言われれば否定はしない。
「生徒に甘い」という立場に立って、ルール無視を肯定していると言われるのは悲しい。
でも、思い切った意見を述べることで、議論が深まるなら光栄である。 

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