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October 01, 2006

「シャカ」 油野誠一(福音館書店)

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手塚治虫の「ブッダ」を読んでいると、それだけでは満足できなくなる。
なんといっても手塚版は架空の人物も設定してあるそうで、どこまで史実なのか気になってくる。
しかし、仏教や釈迦の本はかなり専門書になるので、手にとりにくい。
そこで、絵本。
これはシャカの一生を、おそらくかなり史実に忠実に描いているのだろう。
非常に分かりやすくまとめられていて、ありがたい本である。

シャカは王子である。
それゆえ「世間知らず」に育てられる。
ある日「老人」を初めて見てショックを受ける。
次に「病人」を見る。
次に「死人」を見る。
ショックを受けた王子を慰めようとして、王はこの世の楽しみを教えるための3つの宮殿を造り、毎晩のようにパーテイーを開く。
酔いつぶれた人々の姿をのあまりの愚かさに、王子は城を出る決心をする。
結果から言えば、贅沢を尽くした宮廷生活が、王子に「本当に生きること」への思いを駆り立てたのだ。
父親は反面教師だったということか。
王子としての29年間の生活が、むしろ出家後のシャカの基盤になったということだ。
その1点だけでも、シャカの人生は数奇で魅力的である。
手塚版「ブッダ」で知った名前がたくさん出てくる。
ビンビサーラ王・スダッタ・アーナンダ・・。
手塚版では見なかった(と思う)印象的なエピソードがある。

子どもを亡くして混乱している女性にシャカが言う。

「まだ死者を一度も出していない家を探し、その家から白いケシの実をもらってくるがよい。」

死者を1人も出していない家など、どこにもないことに気づき、女性は「生きている者は必ず死ぬ」ということを理解し、子どもの死を受け入れたのだと言う。
・・・すばらしい。教え諭すのではなく、本人に気づかせるように指示を与えたのだ。
この女性は自分で気づき、自分で納得し、自分で解決していかねばならなかった。
このようなシャカの教えと教え方の深さにうなってしまった。
このようなエピソードを「宗教色が強い」と排除するのでなく、さりげない形で子どもたちに伝えていければと思う。

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