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November 20, 2006

言える立場の人、言えない立場の人

 先週、東京都知事の石原氏が「いじめ自殺予告」の手紙について、あれは大人が書いたものだと思うという発言をした。
 

いじめが原因で「11日に自殺する」との手紙が文部科学省に届いた問題で、石原慎太郎都知事(74)が10日、「あんなのは大人の文章だね」と手紙が“偽物”であるとの見方を示した。また石原知事は、いじめを苦にした自殺が相次いでいることについて「甘ったれている」などと指摘。問題解決のために「もうちょっと親がしっかりしたらいい」との持論を述べた。文科省はこの日、自殺を示唆する手紙が新たに5通届いたと発表。自殺の決行日とされる11日、東京都豊島区では、管轄の3警察署が“厳戒態勢”をしくという。
 文科省に6日に届けられた「いじめが原因の自殺証明書」について、石原知事が信ぴょう性に疑問を投げかけた。
 「あんなのは、大人の文章だね。愉快犯っていうか。今の中学生にあんな文章力はない。理路整然としていて。私は(本物とは)違うと思う」

 大胆な発言である。
 もし、本当に子どもが書いていたら、その子はどう思うだろうか、を想像したら、ひょっとして大人が書いたのではと思っていても、なかなか口にできないものである。
 と思ったら、知事の発言が「さらに自分を追いつめることになりました」などと書かれた自殺予告はがきが知事あてに届いたというニュースも流れた。そのような反響は当然予想されることだ。だから誰も何もいえなかったのだ。
 ちなみに、その後、別の地区の自殺予告の手紙は大人のねつ造だったということで逮捕者が出た。しかも教員だった。したがって実際に大人のねつ造作品が他にもないとは言えない。

 教師の立場では口に出せないことがある。
 たとえば
「学校だって大変なんです」
「いじめの犯人探しは難しいんです。加害者は認めない場合も多いですから」
「きつく叱れば解決するとは限らないんです。仕返しもあれば、かえって陰険ないじめになるケースもあります」
ということは、教師の言い訳・弱音になるから、なかなか表に出てこない。
 もちろん、このような言葉を持ち出して開き直って責任逃れをする教師がいるかもしれない。

 マスコミが、おそらくできないこと。
 たとえば
・遺書に名前の載った子どもに直接インタビューする。
・遺書に名前の載った子どもの親に直接インタビューする。
・自殺するまで全然いじめに築かなかったという親に直接をインタビューする。
ということは、なんとなくタブー視される。校長先生や担任の会見では、しつこく責め立てているくせに・・。
 まあ、それはやらなくていい事だし、別にやってほしいとも思っていないが。

 私は教師の立場だから「いじめられる側には問題はない」と言い切る。
 その方針で指導をする。
 しかし、私が親の立場なら話は違う。
 自分の子どもがいじめにあっていて、我が子にいじめられるだけの落ち度があると分かったら
「お前だって悪い。そんなのいじめられて当然だ」
と言う。言うというよりは叱る。
 我が子のふだんの言動の中でわがままぶりが見られたら
「そんなこと学校でやっとったら、みんなに嫌われるぞ」
「お前なんてそのうち仲間はずれになるぞ」
と言う。言うというよりは叱る。
 これは、親の立場だから言うことであって、学校でいじめられている子には絶対に言わない言葉である。
 
 以前も書いたが、我が子が一方的に暴行を受けたら、学校を通さずに、直接相手の家に行く。あるいは警察に被害届を出す。
 しかし、教師の立場だったら、双方の本人・保護者を学校に呼んで「謝罪・和解の場」を設定する。直接ご家族同士で話し合ってほしいなどとは絶対に要求しない。直接交渉をしてもらっても構わないが、学校がそれを要求することはできない。そこまで双方の家庭に頼ってはいけないのだ。

 お互いの立場を想定することが「思いやり」である。
 今の大人の社会に、相手の立場を想定する「思いやり」の心はあるか。

・相手には相手の立場があり、事情がある。
・思っても口にしてはいけないことがある。
・思っても相手に期待してはいけないことがある

 このように場の雰囲気や相手の感情を斟酌(しんしゃく)し、自分の言動をコントロールできることが、「いじめ」のない風土を築く大前提になる。
 自分の権利だけを主張する、言いたいことは言っていい、やりたいことはやっていい、という風潮は、どこかでひずみが来る。例えばそれが「いじめ」なのである。

※「斟酌する」なんて言葉を初めて使ってみた。PCだからいいけど、手書きでは書けない熟語だ。
 「斟酌する」という言葉を知らないから「相手の事情・心情を汲み取ること」ができないわけではない。
 でも、中学生には、どこかで教えておきたい表現だと思う。

しんしゃく 【▼斟酌】大辞林 第二版より

(名)スル
〔「斟」も「酌」も汲(く)む意〕
(1)相手の事情・心情などをくみとること。
「相手の立場を―して裁定を下す」
(2)手加減すること。手ごころ。
「採点に―を加える」
(3)条件などを考え合わせて、適当に取捨選択すること。
「虚心にこれを―商量すべきことなり/西国立志編(正直)」
(4)遠慮すること。ためらい。
「―せず推返(おしかえ)し言へば/五重塔(露伴)」
た。

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