外国人研修生の不当な労働
3月8日の中日新聞に「自著を語る」という書評が載った。
「外国人研修生殺人事件」(安田浩一著 七つ森書店)
外国人留学生として8万元(約120万円)を借金で工面して渡日した中国人青年。
派遣先は養豚場。研修生は労働法が適用されないから期限付きの安価な労働力として利用されてしまった。
待遇改善を求めて仕事を放棄したため、受け入れ窓口の農業団体は彼を中国に帰すことを決めた。
しかし、多額の借金を背負って来日した青年は帰ることもできず、もみあう中で殺人事件に発展してしまったのだという。。
筆者自身が次のように語っている。
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浮かび上がってきたのは研修制度を人身売買の手段として利用する、日中双方の奴隷業者ともいうべき存在である。
そうした研修制度の”闇”が、労働現場に荒廃をもたらしているという実態を、私は本書で明らかにしたつもりだ。
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BK1の内容紹介では次のように書かれている。
「千葉県木更津市の養豚場で発生した殺人事件に、この国の興廃と病理が凝縮されている。『国際貢献』の美名とは裏腹に、劣悪な労働条件と人権無視がまかり通っていた外国人研修制度。中国での取材も交え、この事件の背景を探る。」
続いて翌日3月9日の中日新聞に「ベトナム研修生”虐待”」の見出しでニュースが掲載された。
国の外国人研修・技能実習制度で来日したベトナムの二十代女性六人が八日、実習先の愛知県豊田市の自動車内装部品製造会社でパスポートを没収されたり、トイレに行くたびに罰金を取られたなどとして、同社や、法務省や厚生労働省などが設立し同研修を運営する財団法人「国際研修協力機構」などを相手取り、今月中にも、人権侵害の慰謝料と不足賃金の支払いを求める訴えを名古屋地裁に起こすことを求めた。
・・・弁護団は、トヨタの3次下請けメーカーでつくる実習生の受け入れ機構「豊田技術交流事業協同組合」の責任も追及、としている。
提訴しただけだから真相が分からないとも言える。帰国した研修生たちの一方的な訴えという可能性もある。
しかし、上の中国留学生の場合が「闇」であるのに対し、下のベトナム研修生の場合は国の研修制度で派遣された「表」の事件である。
表の制度で受け入れた実習生がパスポートを没収されたり罰金を科せられたり「強制送還するぞ」と脅かされたりというのが「事実」だとしたら、もう表も裏もあったものでなない。
トヨタの繁栄も、日本の繁栄も、このような非道な(非合法な)システムによって成り立っているのだろうか。
私は最近「日本人の誇り」のネタを集めている。
日本人のよさを誇ろうにも、このような「闇」が表舞台にまで浸透していることは恐ろしい。
たとえ「一部」の仕業でも、国家の「恥」だと思わざるををえない。
このような「闇や恥」に目をつぶって「日本人の誇り」を語るほど能天気ではいられない。
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