ノブレス・オブリジェ 「高貴なる義務」
ノブレス・オブリジェはもともとはフランス語。
英訳すればnoble obligement。
日本語に直訳すれば「高貴なる義務」となる。
要するに、階級が高く、普段庶民よりもよい生活をしている人はいざ、国の一大事となった場合は真っ先に国民を守る。そのために貴族はまっさきに戦場にかけつけ、危険な場所で生命を賭けて敵と戦うという精神のことを言う。
日本では「武士道」の精神、「いざ鎌倉」の精神が、これに近いと言われる。
「高貴な義務」という美徳は明治維新とともに滅びてしまったとも言われている。
http://www.asahi-net.or.jp/~cn2k-oosg/rakka03.htmlの発言は参考になった。
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日本帝国陸海軍の元帥大将たちは、「生きて虜囚の辱めを受けるな」と兵士に訓示していた。このため真面目な兵士や民間人たちが数多く戦死し、あるいは自決した。ところが敗戦となった時、人間の真価がポロリと出ている。
軍人中の軍人として権勢を極めた陸軍大将はピストル自決に失敗し、米軍の捕虜となった。多くの高級将官たちも自決どころか「生きて虜囚」となった。
人前では威厳に満ちた将官でさえ、生命への執着心がいかに強かったことか。哀れなのは、虜囚の辱めを受けまいと死を選んだ兵士たちや民間人である。
エリートと見えし方々も平凡な人間であったのだ。本当に尊敬に値する人はいつの世でも数少ない。
日本では、「ノーブレス・オブリージ」に相当する身近な言葉がないから規範や倫理となって定着していない。
強いて言えば「率先垂範・出処進退」の心得がこれに相当しようが、どうもこれだけでは少しニュアンスが違う。
「率先垂範」以上に難しいのは蹉跌の場合の「出処進退」であろう。
士農工商の階級社会がなくなったのはよいが、商道や倫理観を欠く商工優位の金権社会に堕落したように見えるケースがしばしぱ起きる。
その度毎に、政治家や経営者や高級官僚の「出処進退」がジャーナリズムの話題になるが、残念ながら根本的な解決にならない。
「ノーブレス・オブリージ」は、辞めれば済むという問題でもないからだ。
「率先垂範・出処進退」などの「行動規範」以上に大事なのは、「ノーブレス・オブリージ」の根幹をなす「倫理規範」であろう。
昔は商いにも「商道」があった。一般的には「良識的判断」「弱者への思いやり」「責任感」「正義感」といった徳目であろう。英国では「嘘」と「賄賂」は通用しない。
進学・体育・芸能などの英才教育は盛んであるが、徳育の英才教育は聞かない。
人格にいささかの欠陥があっても、偏差値が高ければ社会的に高い地位に就けるようであれば、官僚や経営者のスキャンダルは減るまい日本の風土にあった「ノーブレス・オブリージ」の倫理を、身近な日本語による教訓として確立し、規範として定着させ、伝承させる必要があるのではなかろうか。
・・・「武士道」とか「滅私奉公」といった言葉が過剰反応をもたらすなら、
「ノブレスオブリジェ(高貴なる義務)」や「率先垂範」という言葉を用いて、その美徳を推奨していきたい。
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