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June 06, 2008

ニュースの読み方

6月4日の中日新聞朝刊の記事は、奇妙だった。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008060401000731.html
「低所得、39%負担増 後期高齢者医療の保険料」と題した記事。

2008年6月4日 18時38分
 後期高齢者医療制度(長寿医療制度)導入に伴い、市町村が運営する国民健康保険(国保)から移行した1000万人強の保険料の変化について厚生労働省が全国の実態を調査したところ、負担増となった世帯割合を所得別に比べると低所得で39%、中所得25%、高所得22%と、所得が低い世帯ほど保険料負担が増えたと推計されることが4日分かった。
 厚労省は「所得の低い層は負担減、高所得層は負担増の傾向にある」としてきたが実態は異なり、これまでの説明が覆った形だ。
 同省は「3種類ある国保保険料の算定方式のうち、過半数の自治体が採用する1種類の方式で説明してきた」と釈明している。
 実態調査は5月中旬、全国の1830市町村で実施。4形態の世帯類型と3形態の収入区分を組み合わせた12のモデル世帯の保険料変化に関し自治体の報告をまとめ、これを基に推計した。(共同)

・・・ん?
 「負担増」という見出しの割には、書いてある内容は結構「負担減」ではないか。
  「低所得で39%、中所得25%、高所得22%と、保険料負担が増えた」
ということは、
 「低所得で61%、中所得75%、高所得78%と、保険料負担が減った」
ということだ。なんだ、マスコミが騒ぐわりには、けっこう負担は減っているではないか!
 だから、同じニュースソースで、次のように「下がった」を見出しにしているメデイアもあった。

http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/080604/wlf0806040134000-n1.htm
「7割が保険料下がった 後期医療制度で実態調査」と題した記事。
 (2008.6.4 01:34)。
 
 75歳以上が対象の後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の対象者約1300万人のうち、新たに保険料徴収対象となったサラリーマンの扶養家族だった約200万人を除く約1100万人の7割ほどが、従来の老人保健制度からの移行に伴い、4月からの保険料が下がっていたことが3日、厚生労働省の実態調査で分かった。政府高官が同日、明らかにした。
 後期高齢者医療制度をめぐっては、これまで「新制度で保険料が上がった」との批判が多かったが、実態調査結果を見る限り、大多数の高齢者の保険料は下がっていたわけで、政府・与党が検討している運用改善策や後期高齢者医療制度廃止法案の審議にも影響を与えそうだ。
 政府高官は同日夜、記者団に対し、「きょう厚労省から報告があり、1100万人のうち7割の人は保険料が下がっている。残る3割は上がっている。7割のうち、所得がどの程度の人が多いとかは分からない」と述べた。野党4党は新制度の廃止法案を提出していることにも触れ、「民主党はどうするつもりなのか」と指摘した。
 保険料をめぐる実態調査は、舛添要一厚生労働相が4月末、新制度をめぐる混乱が続いていることを受けて、次回保険料が年金から天引きされる6月13日までに実施するよう指示。厚労省は市区町村にモデル世帯の保険料の増減を報告するよう要請していた。

 ところが、である。
 この日の「報道ステーション」で、このニュースソースにクレームをつけていた。
http://www.tv-asahi.co.jp/hst/
 後期高齢者医療制度の導入により、75歳以上の高齢者1100万人のうち約7割の人の保険料負担が減っているとの厚生労働省の調査結果を受け、民主党は5日、厚生労働部門会議で担当者を追及した。厚労省では今回、12のモデルを取り出して集計したが、担当者は民主党側の質問に対し「必ずしも実態を反映しているとは言えない」と説明。また、これまで子供に扶養されていたため10月から新たに保険料を払うことになる200万人を含めると、保険料の負担が減るのは55%であることを明らかにした。一方で、医療団体「民医連」が全国309の医療機関や薬局などで4645人の患者を対象に行った調査によると、保険料が「高くなった」と答えた人は42%、「変わらない」が18%、「安くなった」が7%だった。こうしたなか、野党が提出した廃止法案が5日、与党が欠席するなか参議院の委員会で採決され、野党の賛成多数で可決された。民主党は週明けにも福田総理の問責決議案を提出する方針を決め、対決姿勢を強めている。

・・・先の記述を繰り返してみる。
 「低所得で39%、中所得25%、高所得22%と、所得が低い世帯ほど保険料負担が増えたと推計されることが4日分かった」の「推計」が、厚生労働省の作為的なデータだったというのだ。

 A:あるデータを「増えた」と報道
 B:あるデータを「減った」と報道
 C:あるデータを「作為的」と報道

 あきれかえるような事実だが、同じニュースソースで3種類も反応があるなんて、メデイアリテラシーのネタとしては、ゾクゾクするような掘り出し物である。


追加
次のようなニュースがネット配信された。
見出しは「大ウソツキ厚労省!制度欠陥の言い繕い」。
http://news.nifty.com/cs/item/detail/gendai-02037188/1.htm

全体の7割は負担減になる」ことをことさらPRしていたが、7割という数字の根拠は、4つのモデルケースからはじき出した推計に過ぎず、実態を調べた数字ではない。推計する際の計算方法も不明で、いい加減な数字にしか見えない。こんなものを記者発表前に一部の大新聞・TVが報じた。厚労省の意図的リークとしか思えない。

厚生省の発表を「垂れ流し」したのだとしたら、一部の大新聞・TVが、おそまつだったとしか言いようがない。

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