「表現」と「理解」の関連指導→「読書感想文の書き方」
「活用」の「読むこと」においては、文部科学省の資料によると次のように解説されている。
「読むこと」の指導においては、読んだことや調べたことを要約したり、感想をまとめたり、評価したりする記述力を高めることが求められる。読むプロセスにおいては、精読段階で要約したり、読後に読書感想文を短文や長文にまとめたりする。また、文章の解釈について具体的な理由や根拠を示したり、主題や要旨について自分の考えを記述したりする場合もある。 例えば、「国語B」の問題2〔人物の場面や描写をとらえる〕は、「読む能力」を問うものである。 ここでは、本の紹介を目的として同じ作者の物語を比べて読み、登場人物の特徴、場面の様子や心情をとらえさせて記述させるようにした。・・・とりわけ「活用」問題は、自分の言葉で表現させることが特徴になっている。 それは、PISA調査における次のような設問とよく似ている。 (問題例1) 「二人が自分の意見を証明するには、それぞれどう言えばよいでしょうか。この物語からそれぞれの証拠をさがして、次に示してください。」 (問題例2) 「(この物語の)最後の文が、このような文で終わるのは適切だと思いますか。最後の文が物語の内容とどのように関連しているかを示して、あなたの答えを説明しなさい。」 (問題例3) 「あなたの意見では、どちらの手紙がよい手紙だと思いますか。片方あるいは両方の手紙にふれながら、あなたの考えを説明してください。
・・・石原千秋氏は、このような傾向を踏まえ、PISAが求める読解力を次の3つに集約しているが、、全国学力調査も同じような傾向があると考えられる。
①文章や図や表から情報を読み解く力
②文章を批評的に読む力
③これらを記述する力 (『国語教科書の思想』石原千秋著 ちくま新書より)
さて、学力調査の「活用」問題も、PISA調査で話題になった問題も、自分の言葉で表現させることが特徴になっている。それは、下記のような他府県の高校入試の論作文問題とよく似ている。
◆次の資料は「小学生がよくする遊び」についてまとめたものです。これを見て、あなたが気がついたことと、それについてのあなたの考えを百六十~二百字で書きなさい。ただし、あなたが気がついたことを述べる段落と、考えを述べる段落との二段落構成とすること。 (宮城)
◆「千里の道も一歩から」という言葉について、体験と感想を二段落構成で書く。(福島)
◆「ものを見る」ということについて、体験や見聞、感想や意見を分けて書く。 (石川)
平成16年の公立高校の入試では79%の都道府県で課題作文が出題され、課題作文のタイプは次のような割合だったそうだ(愛知県は実施していない)。
・テーマ指定型(二段落構成の指定が多い)・・・・・・・・・・・48%
・デイベート型(賛成・反対など1つの立場を選んで書く)・・・・10%
・図・グラフ読み取り型・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21%
・文章読み取り型(詩歌や鑑賞文・論説文への意見)・・・・ ・・ 21%
夏休みの読書感想文も、【あらすじ → 作品の感想 → 自分の生活体験との関連】と指導するケースが多いが、上記の課題作文の「体験や見聞、感想や意見を分けて書く」と形式が似ている。
【文章内容を正しく理解する→自分の感想や意見を書く→自分の生活体験と結びつけて意見を書く】
という形で表現する力を育てるためには、「文章内容・文章構成を正しく理解する」正解志向の授業で終わらず、自分の解釈や判断を述べる場面・自分の生活体験と結びつけて感想を述べる場面等を設定する必要がある。
【例】
①どちらの解釈もありえるような場面で、各自、一方の解釈を選び、その理由を説明させる
②作品の結末の「その後」について、文中の言葉を根拠に、自由に発表させる。
③登場人物の1つの行動や台詞を取り出し、自由に感想や意見を発表させる。
④自分の生活体験と結びつけた感想や意見を発表させる。
⑤1人の子の感想文を単なる紹介し、その感想文についての感想や意見を発表させる。
(いずれの場合も、話し合いや相互交流が、作品の理解をより深める意義ある場面に限定して取りくむことが大事であり、自分とは異なる意見が存在する事実を知ることが大事である)。
・・・根拠のない空想や過大解釈・単なる思いつきは慎まなければいけないが、正しい読解を基盤とした解釈は許されるし、そのような解釈を許容できる授業でないと、
「書かれたテキストを元に自分の意見を述べる」というPISA型読解力
=文科省の「活用」問題に対応できる力
=読書感想文の表現力
の育成は難しい。
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