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August 23, 2008

『さまよう刃』(東野圭吾)

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角川文庫の紹介ページには、次のように書いてある。

自分の子供が殺されたら、あなたは復讐しますか?
[ 内容 ]
長峰重樹の娘、絵摩の死体が荒川の下流で発見される。犯人を告げる一本の密告電話が長峰の元に入った。それを聞いた長峰は半信半疑のまま、娘の復讐に動き出す――。遺族の復讐と少年犯罪をテーマにした問題作。

正義とは何か。
犯罪被害者の叫びを聞け。
遺族による復讐を描いた社会派サスペンス。

長峰の一人娘・絵摩の死体が荒川から発見された。花火大会の帰りに、未成年の少年グループによって蹂躙された末の遺棄だった。謎の密告電話によって犯人を知った長峰は、突き動かされるように娘の復讐に乗り出した。犯人の一人を殺害し、さらに逃走する父親を、警察とマスコミが追う。正義とは何か。誰が犯人を裁くのか。世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎える――。重く哀しいテーマに挑んだ、心揺さぶる傑作長編。

・・・嫌悪感で言えば、重松清の「疾走」の方がはるかに上であるが、それにしても読んでいて辛くなる重い作品だった。殺人シーンよりも陵辱シーンが気持ち悪い。
◆罪悪感のかけらも感じられない犯罪少年の行為のおぞましさ。
◆平気で逃げ回る少年のふてぶてしさ。
◆現代法のもとでは被害者側の復讐行為が罪に問われてしまう理不尽さ。
◆被害者よりも加害者を擁護する法律のむなしさ。
が、読書のスピードを減速させた。
しかし、読書を止めることは現実から目をそらすことなのだから、とにかく読破するしかなかった。
P450の主人公のセリフに作者の問題提起がこめられている。
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自分たちの生活さえ保障されていれば、他人のことはどうでもよかった。少年犯罪について真剣に考えたことがあるか、問題解決のために何かをなしたかと問われれば、何も答えられない。
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この作品の陵辱シーンから目をそむけることは、「他人のことはどうでもよい」自分であり続けることだ。
いくら目をそむけても、現実の世の中では毎日のように性犯罪・少年犯罪・凶悪犯罪が起きている。その事実から目をそむけることが「共犯」なのだと東野は言う。
たまたま、自分の身に犯罪が降りかかることを「共犯者としての報い」だと東野は言う。
松岡祐介の『カウンセラー』も少年犯罪の被害者家族の復讐という点でモチーフは同じである。
『カウンセラー』は、まだ、エンタテイメントとして読める。主人公の奇抜さが現実感を薄くしているからだ。
『さまよう刃』は、現実感に満ちているから重い。
主人公の結末は、あまりに悲しい。
「正義とは何か。犯罪被害者の叫びを聞け」という文庫の帯が訴える通りだ。

下記のHPには、作者東野圭吾の、作品にかけた思いが分かる。
http://from1985.pekori.to/keigotaku/review/yaiba.html

犯罪への思いのぶつけ方は、東野圭吾『手紙』によく似ている。
『手紙』は加害者家族の視点、『さまよう刃』は被害者家族の視点。
あたかも正対する形で、「人を殺す行為」「人を許す行為」について語っている。

「さまよう刃」の犯罪少年には、「手紙」を読ませたいくらいである。

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Comments

Hi there, I read your new stuff regularly. Your humoristic style is witty, keep it up!

Posted by: http://hostthegame.com/ | March 30, 2014 at 11:28 AM

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