「海のいのち」(立松和平)は、共生の物語か
「海のいのち」は「共生」の物語なのだと作者の立松和平の講演で聴いたという方がいる。
したがって、作者の思いとして、この話は「共生」がテーマなのだろう。
しかし、作者の思いを読者がそのまま読み取らねばならないわけではない。読者には読者の読みが許されている。
それにしても「共生」か。
◆「千びきに1ぴきでいいんだ。千びきいるうち1ぴきをつれば、ずっとこの海で生きていけるよ」
◆太一は村一番の漁師であり続けた。千びきに1ぴきしかとらないのだから、海のいのちは全く変わらない
といった叙述に、「共生」の思想が読み取れる。
しかし、そもそも「捕るー捕られる」「食うー食われる」「殺すー殺される」という関係しかない「人間ー魚」に「共生」の思想があてはまるのだろうか。
一方的に魚を捕まえて殺して食しておきながら「千匹に1匹でいい」から「共生」だというのは、あまりにエゴイステイックな話ではないだろうか。
宮沢賢治の『やまなし』が「共生(輪廻)」を感じさせるのは、いい匂いを放つやまなしが動物に実を食べられることで次世代を育てるというサイクルが存在するからだ。
人間のみの世界を描いては、なかなか自然のサイクルは見えてこない。
残念ながら人間は自然界のサイクルとは異なる場所に位置することが多い。
作者の意図は別にして、小学生に、「海のいのち」を読ませるというのは、どこまで読ませることを意識すればいいのだろうか。もちろん、この疑問は「海のいのち」に限ったことではない。
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