『重力ピエロ』(伊坂幸太郎)
伊坂幸太郎 1971年生まれの若さ(実際に本著が出版されたのは03年だから32歳!)で、これほどの作品を書けるというだけで圧倒されてしまう。手元にある文庫版が34刷だから、すでにたくさんの読者ファンを惹きつけいることもよく分かる。
一番の根底にあるもの(テーマと言っていいかどうかわからない)を、考えてみる。
おぞましい事件=裁かれない少年犯罪が根底なら、東野圭悟の『さまよう刃』のように、仇討のような重苦しさが前面に出るだろう。
しかし、事件に巻き込まれた家族は明るくたくましい。
「遺伝子」、遺伝子を残すための「性」、生命の誕生・・・そのようなさまざまな要素も、結局は「家族」に集約されるだろうか。
文庫の帯は「それでも僕らは家族なんだ」
文中には「俺たちは最強の家族だ」という力強い父親の言葉がある。
兄弟愛もほほえましい。
「二人一緒なら決して負けないんだ」という言葉がすがすがしい。
そして「赤の他人が父親面するんじゃねえよ」という一文による逆転・・・ここがいわゆるクライマックスだ。
血のつながりって何?
非常に重い問題だが、全体のトーンが明るいので救われる。
兄弟や家族の会話が知的で、とてもいい。
どこまでが本気かわからないセリフもいいし、随所に盛り込まれた格言・名言の数々もいい。
引用文献・参考文献が、知的な会話のベースになっているのだ。
後半は、うすうすストーリーが読めてくる。それでも兄の様々な言動の意味までは読めなかった。
2回読むと、細かな仕掛けが分かる。実は何か所も布石がまいてある。そのような2度読みの楽しさも味わえる。
格言・名言をメモしたいので、あと2~3回は読み返してみたい。
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Comments
I enjoy reading through an article that can make men and women think. Also, maby thanks for ppermitting me to comment!
Posted by: prepaid credit cards | June 01, 2014 03:37 PM