ハリウッド映画を支える日本人CGデザイナー
18日、帰宅中の車の中で「クローズアップ現代」を音声だけ聞いていました。
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11月18日(水)放送
“衝撃”のVFX
~ハリウッドを席巻する日本人~
ニューヨークの街が大洪水で水没する…。亡きオードリー・ヘプバーンが、現代に甦ってセリフをしゃべる…。
そうした"あり得ない"映像を「リアル」な迫力で見せるのがVFX(ヴィジュアル・エフェクト=視覚効果)。
この秋公開されるハリウッド映画「2012」は最先端の技術を駆使し、およそ1500カットがVFXで作られた"VFX大作"。
地球滅亡の危機を描いたこの映画には、ビル群の崩壊、大地震、洪水等々あらゆる「パニック」が登場。
「リアルを超えたリアル」な衝撃が観客を圧倒する。
もはやハリウッドはVFX無しにはあり得ない、とさえいわれる状況のもと、VFX制作各社は、名門大学に学んだ超一流の理系の学者や、NASAの職員までをも獲得し、よりリアルな映像を求めてしのぎを削る。
番組では「2012」VFXチームのリーダーの1人で、去年、映像制作者として日本人で初めて、アカデミーの科学技術賞を受けた坂口亮氏に密着。一人の日本人技術者の成功物語を通じて、ハリウッドVFXの最前線を見つめる。
(NO.2819)
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・・・このあらすじだけではわかりにくいです。
記憶だけを頼りに書くと次のようになります。
大学を休学してアニメーションの専門学校に入り勉強に取り組んだ坂口さん。
十分な知識もないまま渡米し、下働きを続けます。
誰もなしえなかった「水の動き」のCG化を目指した坂口さんは、流体力学の勉強が必要だと感じました。
しかし、大学の文書は理解できないので、高校の教科書参考書・中学校の参考書にさかのぼり、3年間基礎から学びます。
同じ番組を見ていた先生の話によると、この時、小学校の受験参考書「自由自在」まで並んでいたとか。
残念ながら、坂口さんが仕上げた巨大な滝の映像は見られませんでした。
でも、この映像の成功で、坂口さんは第一人者として認められていきます。
現在、ハリウッドの映画を支える日本人のVFXデザイナーはかなりの数に上るそうです。
すごいですね。
http://www.su.cit.nihon-u.ac.jp/lab/furuichi/index.php/component/content/article/9-furuichi/67-cg.html
には、次のように紹介されています。
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昨年のアカデミー賞 Science and Technology部門を受賞した坂口亮氏は,慶應義塾大学の環境情報学部でCGや映像制作等を専攻していた3年生の時,デジタルドメイン社で1年間のインターンシップを体験し,卒業後はそのままデジタルドメイン社に就職した方だ。
坂口氏は流体シミュレーションが専門で,Load of the RingやThe Day After Tomorrow等に出てくる洪水等のCG技術が評価されてアカデミー賞を受賞した。
工学的に流体シミュレーションを行うと,いかに実世界で起こる現象とマッチしているかを再現できたか否かが,その手法の妥当性判断基準となる場合が多い。
しかし,坂口氏の妥当性判断基準は「監督の指示したリアル性」であるとのこと。
すなわち,監督が水流をこのコーナで曲げろと言えば,そのように振る舞うような流体をモデリングするということ。
これはまさしく,モデリング&シミュレーションにおける妥当性確認方法として専門家の判断による,に当てはまる妥当性確認方法である。
坂口氏に関しては,CG-ARTS協会のHPで詳しく紹介されている。
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http://www.cgarts.or.jp/frontline/vol23/index.html
のHPは、僕の記憶を補足し、また、それ以上の情報を提供してくれました。
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坂口氏は1978年生まれ。
慶応義塾大学の環境情報学部でCGや映像制作を学んでいた。
大学3年のときに、デジタルドメイン社へのインターンの制度を持った新しい専門学校が開校することを知る。
これはハリウッドでの映像制作への近道にあたると思い、大学を一時休学してインターン取得に集中。
その後、デジタルドメインで1年間インターンをして帰国。
帰国後は慶応大学に戻って再び映像制作やCGを学び、卒業と同時にデジタルドメイン社に就職した。
幼いころからずっと、映画や映像制作に興味があった坂口氏だが、
大学在学中にLightWaveというソフトを知り、もしかしたら自宅で「フィフス・エレメント」のような映画が作れるのかもしれないと思ったのが、CGを始めた直接のきっかけだったという。
そして、小さい頃から仕事の環境は自分の性格に合うアメリカと決めていた。
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学生のころから、ハリウッドの映像のクオリティは、博士号をもった人たちが独自のソフトウェアを開発して成し遂げているという印象を持っていたという坂口氏だが、流体シミュレーションというテーマに取り組むことになった直接のきっかけは、映画「ディ-プインパクト」のメイキングを本で読んだことだった。
そこには、流体力学の学者がILMでソフトウェア開発をして他では成し遂げられない映像を作り出したということが書かれており、ハリウッドで最先端の映像を作るには流体力学を用いたソフトウェアを書けるようにならないといけないということを実感したのだそうだ。
流体シミュレーションの魅力を、坂口氏は次のように語っている。
「映像を作る以上は、他の誰もつくりだせない映像をつくれるようになりたいと思っていました。
その当時、流体を用いて作る映像には、まだまだ新しい開発が必要であり、それができる様になれば業界で初の映像が作れるというところに魅力を感じたと思います」
しかし、それから受賞にいたるまでには、坂口氏なりの影の努力の積み重ねがあったようだ。
流体力学、アカデミー科学技術賞と聞くと、さぞかし理系の分野が得意なのかと思われがちだが、同氏は決して理系が得意であったわけではなく、大学時代も数学からは遠ざかっていたという。
ところが、流体シミュレーションのテキストや最新の論文の内容を正確に理解するためには、数学的知識が不可欠だ。
そこで、デジタルドメイン社に入社したのちに、中学校の数学の本からよみ返して数学を学びなおして、流体力学や流体シミュレーションの理論を習得したのだという。
もともと理系が得意な人の受賞とは違い、自分の苦手分野での受賞であったということが、同氏にとっては大きな意味をもっていたようだ。
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すごいですよね。
好きなCGのために得意でもなかった数学を中学から学び直す姿勢。
「誰も作れない映像をつくれるようになりたい」という気迫が夢を実現させたんですね。
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