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January 30, 2010

ミウラ折り~吉村パターン

Miura2
Miura3


 NHK爆笑問題の「ミウラ折り」の特集を観た。

http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/20100126.html

NHKの番組紹介のサイトには次のようにある。
 

宇宙ステーションなど無重力の宇宙に造る建造物には、地上の常識が一切通用しない。建材を運ぶロケットの直径は10メートル以下。大きさや重さが極端に制限されるうえ、展開や構築が容易でなくてはならない。その難題に突破口をもたらしたのが、三浦公亮東大名誉教授が考案した「ミウラ折り」と呼ばれる折り紙だ。
コンパクトにたため、紙の一端を引っ張れば一気に全体を開くことができ、力をかけずに自然と元に戻せる。宇宙実験で太陽電池パネルなどに活用できることが明らかになったほか、ガイドマップなどの身近なところでも活用されている。その発想のもとになったのは、なんと壊れたロケットだった。
 三浦はNASAにいた1960年代、ロケットのような薄い円筒が潰れると綺麗な菱形模様ができることを知る。「美しいからには何かある」と考えた三浦が調べると、潰れる前より後のほうが強度が増すことが判明した。これをヒントに幾何学的に編み出した「ミウラ折り」は、実は甲虫の羽や植物の葉など自然界にも存在していた。宇宙に通じるだけでなく、毛織物やモナリザの絵のなかにまで見いだされるというその神秘の形に、爆笑問題が迫る。

・・・すごい。30分、釘づけになった。
 映像で見ると折り紙のすごさ・発想のすごさがよく分かる。
 ミウラ折りの数式はとんでもなく複雑で、これも仰天した。
 最近は缶飲料でも部分的にダイヤ柄になっているが、これもミウラ折りだった。昆虫の羽。モナリザの衣装まで・・。

 ミウラ折り→アルミ缶のダイヤ柄から調べを続けていく。
 「チューハイ缶と宇宙研の関係」というサイト
http://www.isas.jaxa.jp/ISASnews/No.258/shochu.html
http://www.nttcom.co.jp/comzine/no061/wise/index.html

 ここから、吉村パターンという言葉を知る。

◆吉村パターン(Yoshimura pattern)
薄肉の円筒に上下方向から強い荷重をかけたとき,ダイヤモンド形の連続したしわ構造が生じる.
この形は,円筒の破壊の理論を研究された吉村慶丸(当時東京大学教授)に因んで,吉村パターンと呼ばれている.このダイヤモンド構造の連続した円筒(擬似円筒)は,「チューハイ」の缶などでおなじみであるが,横方向からの破壊力に強く抵抗することが知られていて,海中構造物などへの応用が考えられている.

◆東大の研究者に吉村慶丸先生という方がおられます。
 この先生が1951年11月号の東京大学理工学研究所報告書に発表された論文に
 「航空機の胴体のような薄肉の円筒は、“概不伸張有限変形”で座屈する」と喝破されたものがあります。
その特殊な変形の展開可能面は、現在、吉村パターン(Yoshimura-pattern)として広く知られていますが、
これは破壊の様子です。

 吉村パターンを応用した「オリオリアーチ」。
http://www.waseda.jp/sem-geijututen/2006/pdf/howto_orioriarch.pdf
 ぺらぺらした1枚の紙でもアコーディオンのように折り曲げることで、とたんに大きな強さと美しさをもちはじめます。 オリオリアーチの折り方は、その研究者の名をとって「吉村パターン」と呼ばれています。
身近なところでは、KIRINの缶チューハイ「氷結」、缶コーヒー「FIRE」などの商品パッケージに使われています。

 日本の「折り紙」という伝統文化の賜物であるというアプローチ
 図工で実際に作業させてみるというアプローチ
 自然の世界~宇宙工学につながる科学の魅力というアプローチ

 さまざまな方向を考えてみたい。

Yosimura
Yosimura3


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January 24, 2010

国の総予算207兆円を全面組み替えは?

小沢一郎の件で混乱し、大事なニュースが薄れてしまった。
あまり話題にならなかったが、以下は大事なニュース。

============================
 総予算215兆円に膨張=来年度案を国会提出-政府
                2010年1月22日(金)22:03
 政府は22日、2010年度予算案を今通常国会に提出した。
 一般会計と特別会計を合わせた総予算(重複計上分除く)は09年度当初比4.1%増の215兆0656億円に拡大した。
 民主党は衆院選マニフェスト(政権公約)で、国の総予算(09年度当初207兆円)の全面組み替えにより、予算規模を膨らませることなく財源を確保し、公約は実現できると説明。
しかし、行政刷新会議の事業仕分けなどを通じた無駄削減の取り組みが不調に終わり、10年度総予算は逆に膨らむ結果となった。
 10年度予算案の一般会計総額は4.2%増の92兆2992億円、特別会計歳出総額は3.4%増の367兆0738億円。        [時事通信社]
==============================
・・・分かっていたことではあるが、総予算は200兆を超える。
 某キャスターは「税収37兆に対し新規国債44兆、これでいいのか」と今年度の一般会計だけを問題視していた。
 しかし、「母屋でおかゆ。離れですき焼き」と言われる状況は変わり映えせず、一般会計92兆に対し特別会計歳出総額は367兆。
 国債発行額44兆が多いか少ないかは総額の215兆円(367兆)と比較すべきだ。
 一般会計も特別会計も増加しているのだから、見直しも削減も事業仕分けも、全く歯が立たなかったということになるだろうか。
 一般会計の内訳は一般歳出52,5兆、国債20.6兆、地方交付税17兆とテレビで解説していた。
 この一般歳出52.5兆円だけが、あれこれ事業仕分けの対象になり、367兆の特別会計はブラックボックスでは困る。

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 10年度予算案を国会提出 国債、埋蔵金頼みで論戦へ
 
 政府は22日、一般会計総額を当初予算で過去最大となる92兆2992億円とする2010年度予算案を国会に提出した。
 09年度第2次補正予算案成立後に審議が始まる。野党は、政府がマニフェスト(政権公約)を一部断念したことや、国債と「霞が関の埋蔵金」頼みに終わった問題点を突く構えで、厳しい国会論戦となりそうだ。
 10年度予算案は揮発油税などの暫定税率を実質維持するなど、減税を含めて公約予算を約3兆1千億円へ圧縮したが、新規国債発行は最大の約44兆3千億円に膨張。
 政府は税外収入約10兆6千億円を確保するため、特別会計の積立金などを取り崩す特例法案も同日の閣議で決めて提出した。
 2次補正を審議する衆院では、自民党の大島理森幹事長が代表質問で「持続性のない予算だ。(公約圧縮は)バナナのたたき売りではない」と攻撃。
 特別会計を含む「総予算」の組み替えが不発に終わったと批判。菅直人財務相は「年内編成まで時間の制約があり、十分準備できなかった」と釈明、11年度予算編成に向けて特会改革に再挑戦する意向を示している。

 2010/01/22 20:11 【共同通信】
=========================
・・・この記事からすれば、「特別会計を含む『総予算』の組み替えが不発」だったということで、組み替えようとしていたことが分かる、
 そりゃあそうだ、そもそも「国の総予算207兆円を全面組み替え」は民主党のマニフェストに明記してあるのだから、ポーズだけでも取り組まなくては公約違反だ。
 にもかかわらず、特別会計を含んだ総予算についての議論が、あまりなされていない。
 「離れのすき焼き」に対するマスコミの追及も甘い。

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January 11, 2010

フィンランドメソッドで「ごんぎつね」の発問計画

フィンランドメソッドについての北川達夫氏の講演メモを整理していて、次のサイトにも詳しい解説があることが分かった。
 http://www.kotoba-manabi.jp/pdf/kouen_kitagawa.pdf

 国語教育で用いる2つの読書カードは、そのまま授業で用いる発問になる。
 このような問いを用いて、いつも物語を一人読みしているとしたら、これは思考力がつくはずだ。

◆2年用読書カード (1枚目)
① 主人公はだれかな?
② 主人公が直面した問題はなにかな?
③ ほかにどんな問題が起こったかな?
④ 主人公のほかに、どういう人が出てきた?
⑤ 物語の中で好きなところはどこ?
 どうして好きなのかな?
⑥ この物語を読めば答えが分かる問題を作ってみよう。

◆2年用読書カード (2枚目)
① 主人公はどういう人だと思う?
 物語から証拠を挙げて説明しよう。
② 主人公にききたいことはないかな?
③ 主人公に教えてあげたいことはないかな?
④ 主人公はどうやって問題を解決したかな?
⑤ 自分だったら、どうやって問題を解決する?
⑥ いろいろな解決方法を比べてみる。
 これだけでも十分感激する内容だが、まだ続く。

◆教科書を使って基礎技能を習得させる読解授業の展開

1.読前の対話
 ① 内容と知識・経験とを関連付ける活動
 ② 挿絵を「読む」
 ③ タイトル・挿絵・小見出しなどから内容を推測
2.読中の対話
 ① 内容の確認
 ② 部分理解に基づく発問
 ③ 考え・感性・価値観の比較
 ④ 次の展開の自由な推測
3.読後の対話
 ① 内容と体験とを関連付ける活動
 ② 全体理解の確認(問題・解決策の認識)
 ③ 全体理解に基づく発問
 ④ 考え,感性,価値観の比較

◆発問の区分
 ① 文中の一か所から答えが見つかる問い
 ② 文中の複数箇所から答えが見つかる問い
 ③ 推論を要する問い(文中に答えがない)

 このあたりをもう少し整理してみよう。
 まずは読書カード①②を「ごんぎつね」を想定して統合してみる。
 上記の発問区分①②③を加え、分裂しそうな部分は「話し合い」の機会とする。
「話し合い」は討論に近い形をねらっているが、解釈を1つに絞るためのものではない。
「考え・感性・価値観の比較」というのは、自分と同じ考えもあれば違う考えもあることを知る場面であるからだ。

ア② 主人公はだれかな?・・・・・・・・・・・・ごん
イ② 主人公のほかに、どういう人が出てきた?・・・兵十・おっかあ・村人

※②主人公は、ごんですか、兵十ですか?

ウ② 主人公は「ごん」だとして、どういうきつねだと思う?物語から証拠を挙げて説明しよう。
・・・・・・・いたずらずき・さみしがりや・本当はやさしい・ひとりぼっち
  
エ② 主人公に聞きたいことはないかな
・・・・・どうして「ぼくが栗や松茸を運んだ」って言わなかったの?
※ともだちの意見を聞いてメモしよう。
※どんな答えが予想できるか自分なりの考えを書いてみよう。

オ② 主人公が直面した問題はなにかな?
・・・・・兵十に悲しい思いをさせた
・・・・・兵十のおっかあにうなぎを食べさせられなかった

カ② ほかにどんな問題が起こったかな?
・・・・・兵十が盗人と思われてしまった。兵十に撃たれてしまった

※② この作品で一番大きな問題は何ですか?

キ② 主人公はどうやって問題を解決したかな?
・・そっと栗や松茸を届けた

※②③ 主人公の問題は解決したのですか、していないのですか?

ク③ 主人公に教えてあげたいことはないかな?
・・・・兵十のおっかあが死んだのは、ごんのせいじゃないかもしれないよ。

※ともだちの意見を聞いてメモしよう。

ケ③自分だったら、どうやって問題を解決する?

※ともだちの意見を聞いてメモしよう。

コ③ いろいろな解決方法を比べてみよう。

※ともだちの意見を聞いて、よりよい解決方法を考えよう。

サ②③ 物語の中で好きなところはどこ?
 どうして好きなのかな?

※自分の意見を発表し、ともだちの意見を聞いて比べてみよう。

シ②③「この物語から読み取れる教訓は何か」

ス①② この物語を読めば答えが分かる問題を作ってみよう。

・・・北川氏の講演記録に次の部分がある。

   私の提案で,フィンランドの5 年生に「スイミー」を読んでもらいました。
  その際,フィンランドの先生が考えた問題です。
  「ほかの赤い魚の兄弟たちは無個性である / 個性的である」。
   両方根拠づけることができます。みなさんも考えてみてください。

・・・選択的に問うことで論点が明確になり、根拠づけることでさらに文章検討が進む。
 それにしても、はっとする面白い発問だと思う(日本の5年生には難解だろう)。
 このような発問が思いつくような基盤がフィンランドメソッドにはあるということだ。
 また、次の記録がある。

  全体理解に直結した発問として「この物語から読み取れる教訓は何か」というのがあります。
  これが,解釈の違いで微妙に違ってくることがあります。
  先ほどお話しした「スイミー」で,日本の子どもたちにこの発問をすると, 「協力することの大切さ」などが多いですね。ところが,フィンランドの5 年生は21 人中18 人が「集団には指導者が必要だ」と言いました。
 この後,会話が続きます。「では,スイミーというのは優れた指導者だろうか,無謀な指導者だろうか」と。
 すると,「無謀な指導者」という答えが多いのです。
  「外の世界は楽しいよ,なんて軽薄な理由で,全員の命を危険にさらしたから」と。
  なるほど。そこで,日本の子どもたちはこんなふうに読むよというと,逆に彼らは「なるほど」と言うのです。確かにそれは大切だと。おもしろいですね。

・・・子どもたちからの様々な意見を聞く中で、さらに教師が選択的に発問し、思考を絞り込んでいる様子が分かる。話の流れに沿って、次の発問を提示するあたりは、お見事である。

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January 09, 2010

フィンランドの教育~3つのコミュニケーション~

 フィンランド教育について話す北川達夫氏の講演メモに次のようにある。

コミュニケーションの3つのレベル
(1)個人的コミュニケーション
(2)地域的コミュニケーション
(3)国際コミュニケーション

 地域(同じ国)なら、言葉で説明しなくても分かる。「普通は○○するだろう」と通じ合うからだ。
 しかし、国際的には、自国の文化の「常識」や「普通」が通用しない。価値観の共有を前提としない。
 だから、いちいち説明をしなくてはいけない。
 相手を論理的に説得しなくてはいけない。
 
 北川氏は、このあたりをPISA型読解力の有名な問題で解説された。
==================
 落書きをどう思うか、賛成反対の2つの意見のどちらの「書き方」を支持するかを述べる問題。
 「落書きもアートだから許される」という意見は日本の倫理や常識では考えられない。
 そのような事例で、自分の本心は別として提示された2つの意見文の「書き方」を比較・吟味させている。

===================
 つまり、この問題の内容こそが、国際コミュニケーション能力のレベルを試している典型例なのだそうだ。

 また、「理屈は分かるが納得できない」「頭では分かるが腑に落ちない」
という状況についても触れた。
 北川氏は、コミュニケーションの優先順位として、
===============
相手意識が全ての基本
◆相手がきちんと納得するように論理を組み、相手が理解できるよう表現する。
◆どんなに論理的でも相手が納得しなければだめ
◆表現の正しさ・論理の正しさよりも、相手に伝わる言葉かどうかが大事

===============
と言われた。
 相手が「理屈では分かるが納得できない」と思うような状況では駄目だということだ。
 例として小泉首相の話し方を挙げられた。
 小泉首相の語りは、論理的でないかもしれないし、強引かも知れないが聞く人を納得させてしまうところがあった。
 論理の正しさよりも説得のうまさ」というのは、自分にとってはショッキングな主張であった。
 でも「正論だけ主張しても受け入れてくれない」のが世の中で現実離れした正論を述べる人物は嫌われるし
国際的な常識で考えたら、自分の「正論」が、他者にとっても「正論」だとは限らない。確かにそうだ。
 先にも述べたように、同じ国なら、言葉で説明しなくても分かる。「普通は○○するだろう」と通じ合うが
国際的には、自国の文化の「常識」や「普通」は通用からだ。
 さて、このあたりは、かってのキムタク主演のドラマ「CHANGE」の第五話に通じるものがある。
 ここで「話し合い」の意味を語る場面があった。
 こんな内容だ。
◆以前僕は小学校の教師をやっていたのです。去年は5年生を受け持っていたんですけど、とにかくよく喧嘩するんですよ。
でも中には、陰湿なものとかがあって、そこからイジメにつながっちゃったりもするんですけど、
そういう問題があったときには、僕は子供たちにこういう風に言っていました。
「考えよう」って。
クラスメートなんだから、気に入らないこととか納得できないこととかあったら、自分の言いたいことはちゃんと相手に言って、
相手の言うことはちゃんと聞いてお互いにとことん考えよう。
 そうすれば相手と自分は違うんだということに気づくんです。
 同じ人間だと思っているから、ちょっと否定されただけでムカついたり、誰かが一人別行動をとったら、何だあいつってそこからケンかとかいじめが始まるんです。
 でも同じ人間なんていないじゃないですか。みんな考え方も事情も違う人間ですよね。
 だからボクは、子供たちに自分と相手は違うんだということを理解して欲しかったんです。
 その上で、じゃあどういう言葉を使えば、自分の気持ちが相手に伝わるのか、どうすれば相手を説得できるのか、そこを考えろと言ってきました。
 
 外交も、同じだと思うんですよ。
 先ほどビンガムさんがおっしゃった、とおり、僕たちは同盟国です。
 でもやっぱり違うんですよ、日本とアメリカは。だからビンガムさんが思っていることとか、いいたいことがあったら、全部言ってください、僕もそうしますから。
 日米構造協議は今年で終わったわけじゃないですよね。
 だからこれからもっともっととことん話し合いましょうよ。
 そうすればお互いが納得出来る答えがきっと見つかると思うんです。

http://kukku.tea-nifty.com/tea/2008/06/change_8031.html

 話し合うことは「分かりあう」ためではなく、「自分と相手は違うんだ理解する」ため。
 これは、国際的なコミュニケーションを進める上で重要なポイントだ。
 キムタクがアメリカの大臣に語るこのシーンは、このセオリーを踏まえての台本なのだと思う。

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January 08, 2010

フィンランドメソッドによる読解指導

 北川達夫氏の講演からの学びメモが出てきた。
 3年前に参加した安芸高田市立向原小学校の研究発表大会の際のものだ。

▼PISA型の読解力で、よく「熟考」の部分が強調される。
 フィンランドの読解指導(論理教育)は、次の4つの流れだと言われた。
 ①問題の認識
 ②問題の分析
 ③解決策を模索
 ④最前の解決策の提案
・・・②も③も④も「熟考」を要する場面である。

 記憶が不十分だが、デューイの Reflection Thinking が大事と言われた。
 改めて調べてみると、次の言葉が該当する。
▼ジョン・デューイ(John Dewey)やドナルド・ショーン(Donald Schon)などによって唱えられたリフレクティブ・シンキング(自己省察)
 http://www.ennovation.co.jp/xps/modules/xwords/entry.php?entryID=9&categoryID=2によると、

 リフレクティブ・シンキングとは、内省型思考。
 ある出来事に対して反応する思考を反応的思考とすると、内省型思考は、自らのこれまでの経験や内在している価値基準などを深くふり返りつつ、起きた出来事に対して、判断をしていく思考することを指す。

 次のような例がわかりやすい
 反応的思考 ○誰かに怒鳴られた → むかっときたの怒鳴り返した
 内省型思考 ○誰かに怒鳴られた → かつて、どのような状況において、こんなことがあったであろうか
        → もしかすると、自分の行いがそれを引き起こしたのであろうか
 
 リフレクティブ・シンキングは、自分と周囲のつながりを深く自覚する必要があるリーダー職には欠かせない思考形式といえる。

 さて、北川氏講演の続き。
▼どのような文章も、問題があり解決策があるから、4つのステップで授業できる。
 ①「桃太郎」の中で何が一番の問題か(鬼の存在)
 ②どう解決することになったか(鬼退治)
 ③他に解決策はなかったのか
 ④自分にとっての一番の解決策は何か

 ①②がテキストの読解
 ③は自己のブレーンストーミングであり他者との意見交流
 ④は自分の意思決定
ということになる。
 ③④が、テキストから離れた自己表現の部分で、そこまで含んで「PISA型読解力」の育成だ。
 フィンランドの読みの過程は、まさに忠実は「PISA型読解力」対応なのだということが、よく分かる。

▼フィンランドの6年生の教科書に日本の「かわいそうな象」が掲載されているそうだ。
 翻訳版のフィンランド教科書に物語がないのは著作権の関係で、実際には物語はきちんと授業されているとのことだった。
 さて、「かわいそうな象」を読ませる際の指導の過程は
 ①自分がどういう気持ちかを他人と比較する。
 ②自分と違う意見が存在することを知る。
 ③他者を通じて自分を知る・自分の感情を知る。自己表現のリスクを知る

 こうやって書くと難しい。
 要するに「他者がこの作品をどう思っているかを知る」ということだ。
 国際的には、自分の常識と他者の常識は違うから、この話を読んで「泣くかどうか」は誰にも強制されない。
 「自分は泣いたけど、この話で泣かない人もいるんだ」ということを知ることが①や②にあてはまる。
 ③の自己表現のリスクというのは、ほとんどの子が「悲しい」と反応しているのに「悲しくない」と宣言することは、
それなりに覚悟をしろという意味である。そのリスクを背負いたくなければ黙っていればいい。
 内心の自由=ただ自分が思うことに関しては誰にも制約を受けないのだから。
 「自分って他の子とちがう感じ方をすることもあるんだな」と知ることでもあるのだろうが、そこまでは北川氏は言わなかった。
 
▼物語文指導における「自己移入」(自分ならどうするだろう)の発問として次の3つを紹介された。
 ①主人公に教えてあげたいこと・質問したいことは何か
 ②もし、あなたが主人公だったらどうするか
 ③この物語の悲しい結末と楽しい結末を考えなさい

▼フィンランドの物語読解の話の中で、「empathy」と「sympathy」という言葉を紹介された。
 ・感情移入 sympathy・・・登場人物の気持ちになりきって考える
 ・自己移入 empathy・・・・状況を客観的に判断し、自分ならどうするか、どう感じるかを考える。

 辞書で調べると次のようになっており、あまり違いが分からない。
sym・pa・thy
━━ n. 同情, あわれみ ((for)); (普通pl.) 同情の言葉; 悔やみ; 同意, 同調, 共鳴 ((with, for)); (pl.) 共感; 調和, 一致 ((with)); 【生理】交感, 感応; 【物】共振.
em・pa・thy
━━ n. 【心】共感, 感情移入.
エクシード英和辞典より

 相手の立場に立って考える2つの思考法。文芸研で言うところの「内の目」「外の目」に近い印象を持った。
 「内の目」が登場人物になりきって感情表現する思考でシンパシー。
 「外の目」が人物を客観的に見る思考でエンパシー。
 そう考えれば、決して目新しい提言ではないのだが、ずいぶん刺激になった。

 さて、「桃太郎」「かわいそうな象」の指導過程について、メモが足らずに困っていたら
http://www.kotoba-manabi.jp/pdf/kouen_kitagawa.pdf
に詳しく書かれていた。
 先の「かわいそうな象」では、自分のまとめ足らない部分がきちんと分かる。
 「確かに、こんな話だった」と3年前の講演がよみがえる。
=================
 例えば6年生の教科書に日本でも知られている「かわいそうな象」があります。
これを読んで20人が全員泣いたら,「ああ,みんな泣くんだな」と,それを教えるためにします。
6 年生ぐらいだと,たまに1 人ぐらい冷笑する子がいます。「動物がこんなことできるわけない。これは作り話だよ」と。
そのとき,19 人の泣いた子たちは「ああ,20 人いたら19 人泣くんだ」と,自分との共通性の感覚を知ること。
「20 人いたら1 人ぐらい笑う子がいるんだ」というのを知ること。
そして笑った子は,「ああ,20 人いると19 人は泣くのか。だけれども,自分はそれを笑ったんだな」という,その認
識だけです。
この比較というのは,読解教育で文学をテキストにする場合,特に初等教育では絶対に行わなければならないこととされてい
ます。
=================
 
 ① 問題を認識する
  爺さん・婆さんに子どもがいないことか?鬼の存在か?
 ② 問題を分析する
  なぜ鬼が問題なのか?
 ③ 解決策を模索する
  本の提示する具体例:退治して,宝物を奪取
 ④ 最善の解決策を提案する
  自分だったらどうする?
  一定の条件下で最善の解決策は?

 この①から④については、「対話」を絡めて次のようにまとめている。 
 ● 本との対話により ――
  ○ 問題を認識し,
  ○ 問題の解決策の具体例を認識し
 ● 人との対話により (先生・友達) ――
  ○ 本との対話の内容を確認し,
  ○ 問題の解決策について相談し,
  ○ 最善の解決策を見出す

 「本との対話」「人との対話」は、なるほど!と思った。個人思考と集団思考の意味だ。
  また、フィンランドで用いる2つの読書カードは、そのまま授業で用いる発問になる。
  このような問いを用いて、いつも物語を一人読みしているとしたら、これは思考力がつくはずだ。

  2年用読書カード (1枚目)
① 主人公はだれかな?
② 主人公が直面した問題はなにかな?
③ ほかにどんな問題が起こったかな?
④ 主人公のほかに、どういう人が出てきた?
⑤ 物語の中で好きなところはどこ?
 どうして好きなのかな?
⑥ この物語を読めば答えが分かる問題を作ってみよう。

2年用読書カード (2枚目)
① 主人公はどういう人だと思う?
 物語から証拠を挙げて説明しよう。
② 主人公にききたいことはないかな?
③ 主人公に教えてあげたいことはないかな?
④ 主人公はどうやって問題を解決したかな?
⑤ 自分だったら、どうやって問題を解決する?
⑥ いろいろな解決方法を比べてみる。

 これだけでも十分感激する内容だが、まだ続く。

 教科書を使って基礎技能を習得させる読解授業の展開

1.読前の対話
 ① 内容と知識・経験とを関連付ける活動
 ② 挿絵を「読む」
 ③ タイトル・挿絵・小見出しなどから内容を推測
2.読中の対話
 ① 内容の確認
 ② 部分理解に基づく発問
 ③ 考え・感性・価値観の比較
 ④ 次の展開の自由な推測
3.読後の対話
 ① 内容と体験とを関連付ける活動
 ② 全体理解の確認(問題・解決策の認識)
 ③ 全体理解に基づく発問
 ④ 考え,感性,価値観の比較

 読前・読中・読後の「対話」という区分も面白い。
 また、以下の発問の区分もさすが、である。
■ 発問の区分
 ① 文中の一か所から答えが見つかる問い
 ② 文中の複数箇所から答えが見つかる問い
 ③ 推論を要する問い(文中に答えがない)
 ④ 児童生徒の意見を求める問い
 ①②はマニアックには「解読」と言われ、③はごくごく一般的に「解釈」と呼ばれる。
 従来なかったのが④だが、先の「対話」「考え,感性,価値観の比較」を促す上では、ここが重要である。
 そして、授業が「自分は○○と考えたけど、他の子はどう考えたのかな? ぜひ聞いてみたいな」
というワクワク感にあふれていることが望まれる。
 自分の意見の言いっぱなし・自説のごり押しでは国際的なコミュニケーション能力に欠けるからだ。
 「

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January 07, 2010

「世界で一番美しいぼくの村」(東京書籍 4年)

 「世界で一番美しいぼくの村」(東京書籍 4年)の実践レポートを見る機会があった。
 この作品は戦争という状況下でたくましく、またやさしく生きる主人公や家族・村人の様子を描いている。
 授業者は、明るい部分と暗い部分とが対比的に描かれていると指摘していたが、実は作品の中に暗い場面はそれほどない。
 時々戦争の痛手や不安を表す部分も出てくるが、そういう状況を忘れさせるほど、みんな一生懸命明るく生きている、とプラスイメージで押さえる構造だ。
 そして、この作品全体を包む「明るさ・たくましさ」が最後の一文

 その年の冬、村ははかいされ、今はもうありません。

で全て消去される。
 そのラストの暗さをこそ「対比」的に扱うべきだ。
①こんなに平和な村がなくなってしまった。
②こんなにやさしい人たちの暮らしがすべて失われてしまった。
③(ひょっとしたら)こんなに暖かい村人が全員殺されてしまった。
 それまでの「明るさやたくましさ」が強調されればされるほど、それが奪われた悲しみが強調される。
 それが「対比」の効果である。
 このような対比の意識がなければ、この作品の悲劇性は伝わってこない。
 ところが、その「対比」の自覚がないものだから、授業者は、この話の続きや主人公への手紙・主人公のお返事などを書かせている。
 その内容は、最後の一文の悲劇性に注目せず、
 「村を失ったが別の場所で元気に暮らしている」
 「大変だけどがんばってね」
 「お手紙ありがとう」
といった極めて脳天気なハッピーエンド型の内容だった。
 子どもがハッピーエンドにしたがる気持ちは分かる。
 村が破壊されたという事実を否定したい気持ちは分かる。
 しかし、だからといって作品の事実を否定した読みは許されるべきではない。

 少し整理する。
 実践レポートの対比は、作品中の【明るい場面】と【暗い場面】の対比だった。確かに作業は容易だ。
 しかし、作品中の暗い場面はないのだから、本来対比すべきなのは
 【作品に見られる明るい場面】と【その明るい町が破壊されてしまった事実】
 では、具体的には、どんな作業を入れればいいのか。
 例えば、次のような流れだ。
①作品の中で明るい部分・陽気な部分をたくさん抜き出す。
②「その年の冬、村ははかいされ、今はもうありません」とあるので、
 今は、先に列挙した明るさ・陽気さが残っているかどうかを考える。
③町が破壊されてしまったのだから、ほとんどの明るさ・陽気さはなくなっている。
 だから、列挙した部分の大半に×をつける。
④ほとんどに×がついたノート(板書)を見て、気がついたこと・思ったことを書く。
⑤気がついたこと・思ったことを発表し相互交流させる。
  
 その年の冬、村ははかいされ、今はもうありません。

 このラストの1文の重みをきちんと実感させないなら、この作品を教える価値はない。

◆追加
 作品の中に出てくる「戦争から帰ってきた人」のような存在は、いわゆる布石である。
 布石として存在させているものを「明るいー暗い」の対比の要因に入れることはないと思う。
 
 絵本のあとがきに解説がある。
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 この絵本の舞台は、アジアのどまんなかにある国、アフガニスタンです。
 (中略)
 ひとびとは、ながいあいだ、家畜を追い、畑をたがやして、くらしてきました。
 ところが、平和だったこの国で戦争がはじまりました。1980年ごろにはじまった戦争は、15年たったいまも、つづいています。アフガニスタンじゅうの村から、たくさんのわかものが、戦場へでかけていきました。戦いは国じゅうにひろがり、あれはてた土地をすてて外国へ避難する人たちは、500万人をこえました。(後略) 
 
 

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January 06, 2010

江戸時代から続く日本の教育力

 中1国語(光村)の『江戸からのメッセージ』の冒頭に次のような記述があった。
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  江戸時代は、二世紀半という長い間、平和が続いた時代である。
  同時代の西欧諸国が、戦乱に明け暮れながら近代を招いたのに比べれば、二百六十年におよぶ江戸の平和な歳月は、驚異的なことだといえるだろう。

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・・・この「驚異的」だという記述は、本文からだけでは分からない。
 深入りしない程度に生徒に提示した情報は、例えば次のものである。
◆江戸時代の日本は1637年の島原の乱以降、幕末まで「泰平の世」が続いた。
◆1600年というと、そもそもアメリカは大陸が発見された時期で合衆国などは存在しない。
◆ベルサイユ宮殿で有名なフランスではルイ14世が処刑され、フランス革命で活躍したナポレオンも処刑された。

 植民地にするための西欧列強の「侵略」の様子を紹介すると、「確かに江戸時代の平和って驚異的なんだよな」と実感できる。
 江戸時代の繁栄という点では、人口も該当する。
 江戸の人口は120万人で、当時の世界一だそうだ。
 
 また教育力もなかなかのものだった。
①江戸末期の識字率は約50%。 当時もっとも近代的なロンドンでも20%程度だった。
②明治初期に来日した外国人が日本人の読み書きの能力の高さに驚いている。
③当時の寺子屋の数は、今の小学校の倍近い5万箇所。

・・・つまり、江戸の日本の底力は教育の力であったことが分かる。
 江戸時代に鎖国政策をとった日本は世界の進歩から遅れをとったという説もある。
 たしかに、イギリスの産業革命は1700年半ばだから、日本より100年早い。
 しかし、国内の文化は深まり、国民の教育力は高まり、農業生産量も増加し豊かになった。

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  狭い国土に3000万もの人口が、こと食料や生産用品に関して完全な自給自足を達成していた。
 その国土は、当時の世界水準からするとまさに究極にまで開発され、そこには実に高度な社会システムや文化が発達していくのである。
  このことを速水融氏は、ほぼ同時期に行われた西洋の産業革命と対照させて「勤勉革命」と呼んでいる。
 (『江戸時代 間違って教えていませんか』P178 岡崎均 明治図書)
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 西欧の「力の文明」に対して、江戸は「美の文明」があったと当時国際日本文化研究センターの川勝平太教授は言う。・・・・現静岡知事!
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 武器が、鉄砲から刀へと退化させたことからも、うかがわれる。
 茶碗一つにも洗練された美の追究があり、簡素な暮らしの中にも一輪挿しの花をかざる様子に当時来日した外国人は驚嘆した。
 参考 WEB「江戸社会から学ぶ」 http://n-geneki.com/edo_01.htm#4
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 NHK番組「知るを楽しむ歴史に好奇心」の2006年10月「江戸の教育に学ぶ」のテキストで小泉吉永氏は次のように述べている。
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 日本にやってきた大勢の外国人が、日本人の子育てや教育について書き残しています。
 時は安土桃山時代、ルイス・フロイス(1532~97)というポルトガル人宣教師が日本にやってきました。織田信長と18回以上も会っていて、信長に大きな影響を与えた人ですが、彼が日本人の子育てを見てびっくりしたのは「子どもにムチを使わずに言葉で戒める」ということでした。日本人にとっては当たり前のような話ですが、ヨーロッパ人は非常に奇異に感じたのです。
 それもそのはずで、同時代のフランスの思想家・モンテーニュ(1533~92)が『随想録』で書いたヨーロッパの学校教育は驚くべき状況でした。学校はさながら子どもたちを入れる牢屋か監獄のようでした。悪戯も何もしていないのにムチで子どもをたたく、授業中に聞こえてくるのは子どもたちの悲鳴と先生の怒鳴り声だけだったといいます。(中略) そんな教育が日常的に行われていたヨーロッパから日本にやってきたのですから、ルイス・フロイスが驚くのも無理はありません。そして彼は、ムチのない教育でも日本の子どもたちは「立ち居振る舞いが完全で、のびのびしていて愛嬌がある」と書いています。それから約300年後の明治6年(1873)に来日した日本学者・チェンバレン(1850~1935)も、日本の子どもは「善良で礼儀正しくのびのびしている」と指摘しています。幕末の松前藩で約2年間捕虜となったロシアの海軍士官・ゴローニン(1776~1831)は、日本を「子育て上手の先進国」として賞賛し、「日本人は子どもに読み書きや法律・歴史・地理などを上手に教えるが、もっとも大切な点は、幼い頃から子どもに忍耐・質素・礼儀を極めて匠に教えることである」と述べていますし、このほか、「これほど子どもを可愛がり、いつもいっしょにいる国民を見たことがない」(イザベラ・バード)、「日本は子どもの天国」(モース)、「日本の親は子どものために捧げ続ける」(フイッセル)等々、日本の子育てに対する絶賛の声は枚挙にいとまがありません。
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・・・このような教育力の支えの1つが、『和俗童子訓』である。
 江戸元禄時代の儒学者であり『養生訓』の著者貝原益軒(1630~1714年)が「子どもの教育に関する体系的な書として『和俗童子訓』を著わした。
 益軒の著作は武士庶民を問わず江戸時代の人々によく読まれた。
『和俗童子訓』は日本初の"子ども教育論"であり寺子屋のバイブルだった。
 益軒によれば「しつけとは幼い子どもに生活上の習慣や社会で守るべき規範を身に付けさせること」としている。
 「およそ小児は智なし、心もことばも万のふるまいも、皆かしづきしたがう者を見習い聞きならいて、かれに似する」=子どもの心も言葉も全ての行いも、見習い聞き習い模倣することで、その人に似通ってくる。
といった教えのほかにも、次のようなことが記されている。
 
①およそ子を育てるのに、生まれたときから度を越した愛情を注いではならない。度を越した愛情を注げば、子を台無しにする。

② 「人の悪徳は衿(きょう)なり」=人が徳にはずれて悪いのは、誇ること、いばることである。
 子どもに善行があったり、才能があっても褒めてはならない。褒めると、高慢になって学問もしなくなり、また、人から学ぶこともしなくなる。

③幼いときから、心、言葉は「忠信(まこと)」、すなわち誠心誠意を主とし、嘘・偽りがあってはならない。
 もし子どもが嘘をつき、人を欺くような場合には、厳しく戒めなければならない。
 まして、親の方から幼い子どもを欺いて嘘をつくことを教えてはならない。親が嘘をつけば、子どもがそれを習うからである。

④ 父母が子どもを厳しくしつけなくて、度を越してかわいがることをすれば、子どもは父母を軽蔑し、行儀が悪くなり、道に背くようになってしまう。

⑤子に対しては幼い時より、孝悌の道をもっぱら教えるべきである

 このような基盤で日本人は育てられた。
 だから、士農工商の一般人の教養が高い。
 そのような伝統が今も続いている。
 日本の「モノづくり」の技術、洗練された文化の発展は、一握りの偉人によるものではなく、一般庶民のレベルの高さによるものだ。。
 日本はトップエリートは少ないが、平均的な日本人の道徳心や教養が高い(高かった?)のである。


 ◆日本社会の最大の強みは、「一般人」です。日本には世界一の「一般人」がいますよ。米国のエリート教育はすごいと思いますが、エリートは一部の人間だけです。日本には優れた一般の人々が大勢いて、いつだ
って一生懸命。日本は健全な社会だと実感します。
 
    『文藝春秋』平成18年8月臨時増刊号 『私が愛する日本』   115頁
 
 同書で金美麗さんが次のように書いている。

◆台湾では、戦後、日本時代を懐かしんで、「リップンチェンシン(日本精神)という言葉が使われるようになりました。それは、旧日本軍などが使った国粋主義的な意味合いではなくて、清潔、公正、誠実、信頼、責任感といった人間が生きていく上で守る倫理、美徳といったものを総称した言葉なんですね。

・・・このように、リップンチェンシンという言葉がほめ言葉として用いられるのも、多くの旧日本軍人が、戦時下においても教養高い振る舞いをしたからにほかならない。
 日本の一般人の教養の高さ・・・この事実と、そのルーツについて、教育に携わる者としてきちんと把握しておかねばならない。

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子どもたちの健全な「仕事観」を育てたい。

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 2007年4月5日の中日新聞夕刊で、「町工場 世界を超える技術報告 」(小学館文庫) の著者である小関智弘氏の文章を目にした。
その時のメモ書きが見つかった。
 タイトルは「町工場から格差を見る」。
「ピラミッド型産業構造最底辺の町工場は、かつては雇用の不安定と低賃金の代名詞であった」という一文が衝撃的だった。
 1970年代後半の不況で、小関氏の働く下請け工場もつぶれた。
 再就職した町工場の初任給は失業保険の月額と同じという低賃金から始まり、旋盤工生活50年で年収が500万円を超えたのはたった1年だったという。
そして、その町工場も2002年、長引く不況で廃業した。
・・・このような厳しい労働環境の事実を知ってしまうと脳天気に「ニッポンの町工場は世界を超える技術を持っている 」「町工場も立派な働き場所だ」などと勧められない。
 山根一眞氏も、『メタルカラーの時代3』のあとがき454頁で、明石海峡大橋の歴史的な開通式に、建設に携わった「メタルカラー」の人たちにほとんど会えなかったことを嘆いていた。

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  この橋の建造には、設計者、技術者、素材や構造物の製造者、世界最高の腕をもつ橋梁鳶など無数のメタルカラーたちが人類初という挑戦を続けてきたのだ。せめて、メタルカラーたちが橋の両側に整列し、『渡り初め』を見守るなどの演出がなぜできなかったのか。
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 中には式典の駐車場係に回された方もいたという。山根氏の憤りはもっともだ。
 『ローテクの最先端はハイテクよりずっとすごいんです』と賞賛する赤石学氏も同書の中でモノづくりが評価されていないことを嘆いている。
 かつて、中学校で行った日本のモノづくりの最先端技術に関する授業では、給料について触れなかったが、ある生徒は「給料は一緒ぐらいなのに、そんなに気の遠くなる仕事を何年もやっているほどこの仕事が好きなんだなと思いました」と書いている。

 デフレ不況で、大企業は町工場にさらなるコストダウンを要求し、あるいは、海外生産にシフトしている。
製品が安価であることはうれしいことだ。
しかし、生産者の生活を脅かすようなローコストは、やっぱりよくない事態だと思う。
 技術的にも収入面でも、子どもたちが喜んで町工場への就職を望み、かつ雇用が安定するような国家戦略があってよい。
 そのような国家戦略がないと、「町工場もいいよね」と思えるような「仕事観」を育成できるわけがない。

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January 04, 2010

「まずい米で一石三鳥」

 中日新聞1月1日の1面に「常識革命1 まずい米で一石三鳥」との記事が掲載された。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/joushiki/list/CK2010010302000108.html

 かいつまんで言えば、手間のかからない家畜飼料用の米(モミロマン)を大量生産すれば
◆食料自給率向上
◆放棄地の減少
◆雇用の創出
が期待できるというものだ。

 米(水田の復興)については、このところ2度ほど話題になった。
 1度目が,ガソリン価格の急騰に伴う、バイオエタノールの見直し。
http://take-t.cocolog-nifty.com/kasugai/2008/01/post_45c8.html
に書いた。
 2008年1月11日の記事だ。
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愛知県は10日、バイオ燃料による公用車の試乗会を名古屋市中区の県庁駐車場などで行った。
公用車に同燃料を使用したのは東海地方初という。
燃料はコメから製造したバイオエタノールとガソリンを混合した「E3」。

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とあるが、国のエタノールの生産目標3万キロリットルに対して

◆収穫量は15キロ
◆バイオエタノールは4.8リットル
◆E3のガソリンの製造量は、約170リットル。
◆生産コストは1リットル553円

だから、夢物語の段階だ。

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 そこで米どころ新潟県では、イネを原料としたバイオエタノールの製造に取り組んでいます。
 イネを原料としたバイオエタノールの製造には、次のようなメリットもあります。
・コメの消費量が減るにつれて、水田面積も減少している地域の水田農業の振興に役立つ。
・特に、水はけが悪く水田の畑地化が難しい地域では水田として有効活用できる。
・耕作放棄が増えている中山間地域などでは水田の荒廃を防ぎ、農地や水、農村環境を良好な状態で保全できる。
(イネ原料バイオエタノール地域協議会パンフレットより引用、一部改変)
 http://www.pref.niigata.lg.jp/jouetsu_norin/jn_ng_wadai03.html
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 「上越地域では平成19年度から原料イネの栽培が始まり、平成20年度には約100ヘクタールで作付けされました」とあるように、これも実用量にはほど遠い。
 ガソリン価格が安定したので、バイオ燃料の話題は遠のいたように思える(表舞台からは遠ざかった)。   
 
 2度目が、小麦粉価格の急騰に伴う、米粉の見直し。
 2008年4月27日の記事。
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農水省、小麦高騰で米粉増産を支援へ
2008年04月27日 21:27 発信地:東京

【4月27日 AFP】小麦価格の世界的な高騰を受けて日本政府は、米粉(コメの粉)の増産に補助金を出すことを検討している。
 日本経済新聞(Nikkei Business Daily)が27日報じた。
 日本経済新聞によると、政府は来年にも米粉増産を後押しする法案を国会に提出すると見られている。
 農林水産省は、小麦の代わりにコメを生産する農家へ補助金を出すことを検討しており、2009年度予算に盛り込みたい考え。
 また、将来的には輸入小麦の2割を米粉で置き換えることも視野に入れているという。
 日本は小麦の全消費量の9割を輸入に頼っており、農水省は小麦価格の高騰を懸念しているという。
 現在、米粉は小麦粉よりも高価だが、既に小麦の代替としてパンや洋菓子などで利用されており、小麦アレルギーの人も食べられる食品としても注目されている。
 日本の2007年度の食糧自給率は、悪天候やコメ消費量の減少などで39%と低迷し、13年ぶりに40%を下回った

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 米粉パンが注目されたのは、それでも見合うだけ小麦粉価格が上がったからだ。
 小麦粉の価格が安定したので、米粉パンも見なくなった。
 2009年の予算はどうなったのだろう。

 そして、今回の飼料用のコメ。
 飼料米の作付面積は、08年度1600ヘクタール。
 政府は10年度に10万ヘクタールが目標だとか。
 
 都会で職を失った人が、放棄地で、簡単に耕作できるモミロマンを作る。
・・・このようにスンナリ1石三鳥が可能なのだろうか。

 2009年3月の雑誌WEDGEの特集タイトルが「農業・介護をバカにするな」。
 この特集に触れて、自分も書いた。
http://take-t.cocolog-nifty.com/kasugai/2009/03/ge-f9e4.html

◆全国新規就農相談センターによると、就農1年目にかかる平均費用は、水稲が約690万円、露地野菜で約470万円に対し、
平均売上高は水稲・露地栽培がともに約230万円と、5年以上経過しても事業を軌道に乗せることは難しいからだ。

・・・食用にならない飼料米の生産で、それなりの収入が得られるのだろうか。
 戸別所得補償制度を適用しなければ生計がたたない・生産すればするほど赤字というようでは国民の支持は得られない。
 否定的に書いているが、3度目の正直で期待はしている。
 派遣切りにあっている人を救う秘策になることを願っているのである。

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