フィンランドメソッドによる読解指導
北川達夫氏の講演からの学びメモが出てきた。
3年前に参加した安芸高田市立向原小学校の研究発表大会の際のものだ。
▼PISA型の読解力で、よく「熟考」の部分が強調される。
フィンランドの読解指導(論理教育)は、次の4つの流れだと言われた。
①問題の認識
②問題の分析
③解決策を模索
④最前の解決策の提案・・・②も③も④も「熟考」を要する場面である。
記憶が不十分だが、デューイの Reflection Thinking が大事と言われた。
改めて調べてみると、次の言葉が該当する。
▼ジョン・デューイ(John Dewey)やドナルド・ショーン(Donald Schon)などによって唱えられたリフレクティブ・シンキング(自己省察)
http://www.ennovation.co.jp/xps/modules/xwords/entry.php?entryID=9&categoryID=2によると、
リフレクティブ・シンキングとは、内省型思考。
ある出来事に対して反応する思考を反応的思考とすると、内省型思考は、自らのこれまでの経験や内在している価値基準などを深くふり返りつつ、起きた出来事に対して、判断をしていく思考することを指す。
次のような例がわかりやすい
反応的思考 ○誰かに怒鳴られた → むかっときたの怒鳴り返した
内省型思考 ○誰かに怒鳴られた → かつて、どのような状況において、こんなことがあったであろうか
→ もしかすると、自分の行いがそれを引き起こしたのであろうか
リフレクティブ・シンキングは、自分と周囲のつながりを深く自覚する必要があるリーダー職には欠かせない思考形式といえる。
さて、北川氏講演の続き。
▼どのような文章も、問題があり解決策があるから、4つのステップで授業できる。
①「桃太郎」の中で何が一番の問題か(鬼の存在)
②どう解決することになったか(鬼退治)
③他に解決策はなかったのか
④自分にとっての一番の解決策は何か
①②がテキストの読解
③は自己のブレーンストーミングであり他者との意見交流
④は自分の意思決定
ということになる。
③④が、テキストから離れた自己表現の部分で、そこまで含んで「PISA型読解力」の育成だ。
フィンランドの読みの過程は、まさに忠実は「PISA型読解力」対応なのだということが、よく分かる。
▼フィンランドの6年生の教科書に日本の「かわいそうな象」が掲載されているそうだ。
翻訳版のフィンランド教科書に物語がないのは著作権の関係で、実際には物語はきちんと授業されているとのことだった。
さて、「かわいそうな象」を読ませる際の指導の過程は
①自分がどういう気持ちかを他人と比較する。
②自分と違う意見が存在することを知る。
③他者を通じて自分を知る・自分の感情を知る。自己表現のリスクを知る
こうやって書くと難しい。
要するに「他者がこの作品をどう思っているかを知る」ということだ。
国際的には、自分の常識と他者の常識は違うから、この話を読んで「泣くかどうか」は誰にも強制されない。
「自分は泣いたけど、この話で泣かない人もいるんだ」ということを知ることが①や②にあてはまる。
③の自己表現のリスクというのは、ほとんどの子が「悲しい」と反応しているのに「悲しくない」と宣言することは、
それなりに覚悟をしろという意味である。そのリスクを背負いたくなければ黙っていればいい。
内心の自由=ただ自分が思うことに関しては誰にも制約を受けないのだから。
「自分って他の子とちがう感じ方をすることもあるんだな」と知ることでもあるのだろうが、そこまでは北川氏は言わなかった。
▼物語文指導における「自己移入」(自分ならどうするだろう)の発問として次の3つを紹介された。
①主人公に教えてあげたいこと・質問したいことは何か
②もし、あなたが主人公だったらどうするか
③この物語の悲しい結末と楽しい結末を考えなさい。
▼フィンランドの物語読解の話の中で、「empathy」と「sympathy」という言葉を紹介された。
・感情移入 sympathy・・・登場人物の気持ちになりきって考える
・自己移入 empathy・・・・状況を客観的に判断し、自分ならどうするか、どう感じるかを考える。
辞書で調べると次のようになっており、あまり違いが分からない。
sym・pa・thy
━━ n. 同情, あわれみ ((for)); (普通pl.) 同情の言葉; 悔やみ; 同意, 同調, 共鳴 ((with, for)); (pl.) 共感; 調和, 一致 ((with)); 【生理】交感, 感応; 【物】共振.
em・pa・thy
━━ n. 【心】共感, 感情移入.
エクシード英和辞典より
相手の立場に立って考える2つの思考法。文芸研で言うところの「内の目」「外の目」に近い印象を持った。
「内の目」が登場人物になりきって感情表現する思考でシンパシー。
「外の目」が人物を客観的に見る思考でエンパシー。
そう考えれば、決して目新しい提言ではないのだが、ずいぶん刺激になった。
さて、「桃太郎」「かわいそうな象」の指導過程について、メモが足らずに困っていたら
http://www.kotoba-manabi.jp/pdf/kouen_kitagawa.pdf
に詳しく書かれていた。
先の「かわいそうな象」では、自分のまとめ足らない部分がきちんと分かる。
「確かに、こんな話だった」と3年前の講演がよみがえる。
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例えば6年生の教科書に日本でも知られている「かわいそうな象」があります。
これを読んで20人が全員泣いたら,「ああ,みんな泣くんだな」と,それを教えるためにします。
6 年生ぐらいだと,たまに1 人ぐらい冷笑する子がいます。「動物がこんなことできるわけない。これは作り話だよ」と。
そのとき,19 人の泣いた子たちは「ああ,20 人いたら19 人泣くんだ」と,自分との共通性の感覚を知ること。
「20 人いたら1 人ぐらい笑う子がいるんだ」というのを知ること。
そして笑った子は,「ああ,20 人いると19 人は泣くのか。だけれども,自分はそれを笑ったんだな」という,その認
識だけです。
この比較というのは,読解教育で文学をテキストにする場合,特に初等教育では絶対に行わなければならないこととされてい
ます。
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① 問題を認識する
爺さん・婆さんに子どもがいないことか?鬼の存在か?
② 問題を分析する
なぜ鬼が問題なのか?
③ 解決策を模索する
本の提示する具体例:退治して,宝物を奪取
④ 最善の解決策を提案する
自分だったらどうする?
一定の条件下で最善の解決策は?
この①から④については、「対話」を絡めて次のようにまとめている。
● 本との対話により ――
○ 問題を認識し,
○ 問題の解決策の具体例を認識し
● 人との対話により (先生・友達) ――
○ 本との対話の内容を確認し,
○ 問題の解決策について相談し,
○ 最善の解決策を見出す
「本との対話」「人との対話」は、なるほど!と思った。個人思考と集団思考の意味だ。
また、フィンランドで用いる2つの読書カードは、そのまま授業で用いる発問になる。
このような問いを用いて、いつも物語を一人読みしているとしたら、これは思考力がつくはずだ。
2年用読書カード (1枚目)
① 主人公はだれかな?
② 主人公が直面した問題はなにかな?
③ ほかにどんな問題が起こったかな?
④ 主人公のほかに、どういう人が出てきた?
⑤ 物語の中で好きなところはどこ?
どうして好きなのかな?
⑥ この物語を読めば答えが分かる問題を作ってみよう。
2年用読書カード (2枚目)
① 主人公はどういう人だと思う?
物語から証拠を挙げて説明しよう。
② 主人公にききたいことはないかな?
③ 主人公に教えてあげたいことはないかな?
④ 主人公はどうやって問題を解決したかな?
⑤ 自分だったら、どうやって問題を解決する?
⑥ いろいろな解決方法を比べてみる。
これだけでも十分感激する内容だが、まだ続く。
教科書を使って基礎技能を習得させる読解授業の展開
1.読前の対話
① 内容と知識・経験とを関連付ける活動
② 挿絵を「読む」
③ タイトル・挿絵・小見出しなどから内容を推測
2.読中の対話
① 内容の確認
② 部分理解に基づく発問
③ 考え・感性・価値観の比較
④ 次の展開の自由な推測
3.読後の対話
① 内容と体験とを関連付ける活動
② 全体理解の確認(問題・解決策の認識)
③ 全体理解に基づく発問
④ 考え,感性,価値観の比較
読前・読中・読後の「対話」という区分も面白い。
また、以下の発問の区分もさすが、である。
■ 発問の区分
① 文中の一か所から答えが見つかる問い
② 文中の複数箇所から答えが見つかる問い
③ 推論を要する問い(文中に答えがない)
④ 児童生徒の意見を求める問い ①②はマニアックには「解読」と言われ、③はごくごく一般的に「解釈」と呼ばれる。
従来なかったのが④だが、先の「対話」「考え,感性,価値観の比較」を促す上では、ここが重要である。
そして、授業が「自分は○○と考えたけど、他の子はどう考えたのかな? ぜひ聞いてみたいな」
というワクワク感にあふれていることが望まれる。
自分の意見の言いっぱなし・自説のごり押しでは国際的なコミュニケーション能力に欠けるからだ。
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Comments
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