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January 06, 2010

江戸時代から続く日本の教育力

 中1国語(光村)の『江戸からのメッセージ』の冒頭に次のような記述があった。
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  江戸時代は、二世紀半という長い間、平和が続いた時代である。
  同時代の西欧諸国が、戦乱に明け暮れながら近代を招いたのに比べれば、二百六十年におよぶ江戸の平和な歳月は、驚異的なことだといえるだろう。

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・・・この「驚異的」だという記述は、本文からだけでは分からない。
 深入りしない程度に生徒に提示した情報は、例えば次のものである。
◆江戸時代の日本は1637年の島原の乱以降、幕末まで「泰平の世」が続いた。
◆1600年というと、そもそもアメリカは大陸が発見された時期で合衆国などは存在しない。
◆ベルサイユ宮殿で有名なフランスではルイ14世が処刑され、フランス革命で活躍したナポレオンも処刑された。

 植民地にするための西欧列強の「侵略」の様子を紹介すると、「確かに江戸時代の平和って驚異的なんだよな」と実感できる。
 江戸時代の繁栄という点では、人口も該当する。
 江戸の人口は120万人で、当時の世界一だそうだ。
 
 また教育力もなかなかのものだった。
①江戸末期の識字率は約50%。 当時もっとも近代的なロンドンでも20%程度だった。
②明治初期に来日した外国人が日本人の読み書きの能力の高さに驚いている。
③当時の寺子屋の数は、今の小学校の倍近い5万箇所。

・・・つまり、江戸の日本の底力は教育の力であったことが分かる。
 江戸時代に鎖国政策をとった日本は世界の進歩から遅れをとったという説もある。
 たしかに、イギリスの産業革命は1700年半ばだから、日本より100年早い。
 しかし、国内の文化は深まり、国民の教育力は高まり、農業生産量も増加し豊かになった。

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  狭い国土に3000万もの人口が、こと食料や生産用品に関して完全な自給自足を達成していた。
 その国土は、当時の世界水準からするとまさに究極にまで開発され、そこには実に高度な社会システムや文化が発達していくのである。
  このことを速水融氏は、ほぼ同時期に行われた西洋の産業革命と対照させて「勤勉革命」と呼んでいる。
 (『江戸時代 間違って教えていませんか』P178 岡崎均 明治図書)
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 西欧の「力の文明」に対して、江戸は「美の文明」があったと当時国際日本文化研究センターの川勝平太教授は言う。・・・・現静岡知事!
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 武器が、鉄砲から刀へと退化させたことからも、うかがわれる。
 茶碗一つにも洗練された美の追究があり、簡素な暮らしの中にも一輪挿しの花をかざる様子に当時来日した外国人は驚嘆した。
 参考 WEB「江戸社会から学ぶ」 http://n-geneki.com/edo_01.htm#4
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 NHK番組「知るを楽しむ歴史に好奇心」の2006年10月「江戸の教育に学ぶ」のテキストで小泉吉永氏は次のように述べている。
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 日本にやってきた大勢の外国人が、日本人の子育てや教育について書き残しています。
 時は安土桃山時代、ルイス・フロイス(1532~97)というポルトガル人宣教師が日本にやってきました。織田信長と18回以上も会っていて、信長に大きな影響を与えた人ですが、彼が日本人の子育てを見てびっくりしたのは「子どもにムチを使わずに言葉で戒める」ということでした。日本人にとっては当たり前のような話ですが、ヨーロッパ人は非常に奇異に感じたのです。
 それもそのはずで、同時代のフランスの思想家・モンテーニュ(1533~92)が『随想録』で書いたヨーロッパの学校教育は驚くべき状況でした。学校はさながら子どもたちを入れる牢屋か監獄のようでした。悪戯も何もしていないのにムチで子どもをたたく、授業中に聞こえてくるのは子どもたちの悲鳴と先生の怒鳴り声だけだったといいます。(中略) そんな教育が日常的に行われていたヨーロッパから日本にやってきたのですから、ルイス・フロイスが驚くのも無理はありません。そして彼は、ムチのない教育でも日本の子どもたちは「立ち居振る舞いが完全で、のびのびしていて愛嬌がある」と書いています。それから約300年後の明治6年(1873)に来日した日本学者・チェンバレン(1850~1935)も、日本の子どもは「善良で礼儀正しくのびのびしている」と指摘しています。幕末の松前藩で約2年間捕虜となったロシアの海軍士官・ゴローニン(1776~1831)は、日本を「子育て上手の先進国」として賞賛し、「日本人は子どもに読み書きや法律・歴史・地理などを上手に教えるが、もっとも大切な点は、幼い頃から子どもに忍耐・質素・礼儀を極めて匠に教えることである」と述べていますし、このほか、「これほど子どもを可愛がり、いつもいっしょにいる国民を見たことがない」(イザベラ・バード)、「日本は子どもの天国」(モース)、「日本の親は子どものために捧げ続ける」(フイッセル)等々、日本の子育てに対する絶賛の声は枚挙にいとまがありません。
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・・・このような教育力の支えの1つが、『和俗童子訓』である。
 江戸元禄時代の儒学者であり『養生訓』の著者貝原益軒(1630~1714年)が「子どもの教育に関する体系的な書として『和俗童子訓』を著わした。
 益軒の著作は武士庶民を問わず江戸時代の人々によく読まれた。
『和俗童子訓』は日本初の"子ども教育論"であり寺子屋のバイブルだった。
 益軒によれば「しつけとは幼い子どもに生活上の習慣や社会で守るべき規範を身に付けさせること」としている。
 「およそ小児は智なし、心もことばも万のふるまいも、皆かしづきしたがう者を見習い聞きならいて、かれに似する」=子どもの心も言葉も全ての行いも、見習い聞き習い模倣することで、その人に似通ってくる。
といった教えのほかにも、次のようなことが記されている。
 
①およそ子を育てるのに、生まれたときから度を越した愛情を注いではならない。度を越した愛情を注げば、子を台無しにする。

② 「人の悪徳は衿(きょう)なり」=人が徳にはずれて悪いのは、誇ること、いばることである。
 子どもに善行があったり、才能があっても褒めてはならない。褒めると、高慢になって学問もしなくなり、また、人から学ぶこともしなくなる。

③幼いときから、心、言葉は「忠信(まこと)」、すなわち誠心誠意を主とし、嘘・偽りがあってはならない。
 もし子どもが嘘をつき、人を欺くような場合には、厳しく戒めなければならない。
 まして、親の方から幼い子どもを欺いて嘘をつくことを教えてはならない。親が嘘をつけば、子どもがそれを習うからである。

④ 父母が子どもを厳しくしつけなくて、度を越してかわいがることをすれば、子どもは父母を軽蔑し、行儀が悪くなり、道に背くようになってしまう。

⑤子に対しては幼い時より、孝悌の道をもっぱら教えるべきである

 このような基盤で日本人は育てられた。
 だから、士農工商の一般人の教養が高い。
 そのような伝統が今も続いている。
 日本の「モノづくり」の技術、洗練された文化の発展は、一握りの偉人によるものではなく、一般庶民のレベルの高さによるものだ。。
 日本はトップエリートは少ないが、平均的な日本人の道徳心や教養が高い(高かった?)のである。


 ◆日本社会の最大の強みは、「一般人」です。日本には世界一の「一般人」がいますよ。米国のエリート教育はすごいと思いますが、エリートは一部の人間だけです。日本には優れた一般の人々が大勢いて、いつだ
って一生懸命。日本は健全な社会だと実感します。
 
    『文藝春秋』平成18年8月臨時増刊号 『私が愛する日本』   115頁
 
 同書で金美麗さんが次のように書いている。

◆台湾では、戦後、日本時代を懐かしんで、「リップンチェンシン(日本精神)という言葉が使われるようになりました。それは、旧日本軍などが使った国粋主義的な意味合いではなくて、清潔、公正、誠実、信頼、責任感といった人間が生きていく上で守る倫理、美徳といったものを総称した言葉なんですね。

・・・このように、リップンチェンシンという言葉がほめ言葉として用いられるのも、多くの旧日本軍人が、戦時下においても教養高い振る舞いをしたからにほかならない。
 日本の一般人の教養の高さ・・・この事実と、そのルーツについて、教育に携わる者としてきちんと把握しておかねばならない。

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Comments

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