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March 13, 2010

いじめ発見のスタンス

市内小学校で恐喝事件が起き、新聞をにぎわせた。
市議会で教育長が経緯説明したと地元紙の近郊版に載っていた。

「早期発見、早期対応できなかったことが一番の反省点。
各校で規範意識の醸成、子どもの出すサインを見逃さないよう今まで以上に取り組む」とした。

・・・ここまでは型どおりの発言。
  注目したのは、このあとだ。

 また、子どものサインを認知することの難しさを踏まえ
「小さな子は転べば泣くが、大きくなると転んでも笑うようになる」
と例を挙げ「笑っているから平気だと思うようでは教員失格。
子どもが周囲に知られないよう、故意に隠すつらさをとらえられる教員であってほしい」と語った。

・・・手厳しい意見ではあるが、同感である。
  同じような意味合いで自分もまとめたことがある。
  
 「言葉の裏読み」がいじめを防ぐ・・・2006年10月のブログだ。
 一部修正して提示してみる。
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 人間の言葉と心は複雑で「書いてあることと裏腹」ということもある。
 「Aと書いてあるけど本心はBなのだ」ということだ。
 中1国語の『大人になれなかった弟たちに・・』の中に栄養失調で子どもを失う母のセリフがある。

 ヒロユキは幸せだった。母と兄とお医者さん、看護婦さんにみとられて死んだのだから。
 空襲の爆撃で死ねば、みんなばらばらで死ぬから、もっとかわいそうだった

 この母親の発言は「裏腹」である。
 「強がり」であり「やせがまん」である。

 幸せだと思いこまないとやりきれない母親の悲しい心境が隠れている。
 しかし、授業を受けた子どもは「ヒロユキは幸せだと思う。~と書いてあるから」
と「幸せ」であることが当然だと反応する子が半数いる。
 本心でないことを口にする、ということがなかなか想像できないのだ。
 そこで、次のような例を使って話す。

◆思い切り足をぶつけて、みんなが心配そうに「大丈夫?」と近づいてくる。
  こんな時、本当はすごく痛いんだけど「痛くないよ・大丈夫だよ」と言うことがあります。
 この時に「あっ、そう、痛くないんだ」と、あっさり認めてしまっては冷たい人間になってします。
 「そうは言ってるけど本当はどうなのかな」と声をかけてあげられるといいんだよ。

 相手を心配かけまいとして、思ってもいないことを言うことがある。
 その時に、言葉通り受け取って放置してしまうような子どもには、したくない。
 「発した言葉の裏を読む」ことを国語の読解指導の中の1つとして位置づけて指導していきたい。
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・・・平気を装う子どもの発言から真実を見抜くなどというのは口で言うほどたやすいことではない。
 そのように努力していても、なお目に見えないところで「いじめ」は起こる。
 しかし、表情や口調・日頃の行動との比較を含め、ささいな変化・小さなサインを見逃さない努力だけは続けていきたい。

◆本人からの聞き取りに細心の注意を払うのが「ヘッドワーク」なら
◆友人や保護者からの情報が得られる状況をつくるのが「ネットワーク」
◆情報を「待つ」のでなく自分から情報を収集に動くのが「フットワーク」
にあたるだろうか。
 いじめ対策は、何しろ子どもの「生死」を左右し「その後の人生」を左右するのだ。
 とにかく自分の全知全能で立ち向かう気概が必要である。

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March 07, 2010

いじめ対策 ~小さなサイン~

 愛知県教育委員会発の
「小さなサインが見えますか」には、次のようにある。

今いじめに苦しんでいる あなたへ

「どうして、私がいじめられるのだろう」
「私のどこが悪いのだろう」
「みんなは、私のことがきらいなんだ」
って、悩んでいない?
そんなことは、何も関係ないんだよ!
いじめている子たちは相手が誰でもいいの
あなたが悪いわけじゃないの

でも、仲間はずれにされたり、
いやなことを言われたりするのはつらいよね

そんなときは、一人で悩まないで相談してね!
決して一人にはしないよ!

 「小さなサイン」の筆頭は、被害者のサインである。
 辛い思いをしている被害者児童の心の変化・表情の変化・行動の変化をくみ取ってあげたい。
 
 ただし、「小さなサイン」は、加害者にも表れる。
 今回も、加害者に暴行を加えてストレス発散をしていたという。
 家庭環境・人間関係・学習成績など、どこかにSOSがあったはずだ。
 恐喝が進行するから金遣いも荒くなったのだ。
 表情の変化・行動の変化は、決して「小さなサイン」ではないだろう。

 そして、今回の匿名投書に見られる、傍観者の「小さなサイン」
 傍観者の中には、葛藤に苦しむ者もいる。

・被害者を救ってあげたい・先生に教えたい
・でも怖くて言えない
・仕返しが怖い
・仕返しを恐れて言いだせない自分が情けない

というように、自分で自分を責める辛い気持になった子もいるはずだ。
 そのように苦しんでいる子にも、やはり「小さなサイン」がある。
 「見ていられない・黙っていられない」と第3者の相談でいじめが発覚したことはよくあるケースだ。
 今回も、新聞に大々的に報じられ、「自分がもっと早く言えばよかった」と後悔する子がいるに違いない。
 そのような傍観者を「どうして言わなかったのだ」と、一方的に攻め立てるのは酷だ。
 「見かけてしまった苦しみ」を救ってあげるというスタンスも必要だ。

  ひとたび、いじめや暴行・恐喝事件が起これば、どの子たちにもの苦しみ・辛さが生じる。
  教師は、そのような事態を想定し、すべての子ども達の「小さなサイン」を汲んであげることが責務だ。
  子どもからの訴えを待つのでない。
  自分から言い出せない苦しみから解放してあげるためには、こちらからのアプローチが必要である。
  
  昔からの言葉を借りれば「目をかけよ 声をかけよ 手をかけよ」だ。

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March 06, 2010

いじめについて考える

これまでのブログでの「いじめ」の発言を目次風に再編してみた。
http://www.tos-land.net/

いじめ対策について考える

第1章 学年体制の取り組み
(1)学年での通達文書
(2)いじめのアンケート
(3)学年での通達文書その2
(4)いじめ対策の1つは男女混合
(5)いじめのアンケートその2 「このごろのぼく・わたし」
(6)愛知県教育委員会「小さなサインが見えますか」WEB版
第2章 国語の授業で「いじめ」対策をする

(1)Noと言える授業がいじめを防ぐ
(2)想像力がいじめを防ぐ
(3)書いていない心情を読み取る
(4)相手を傷つけると一生後悔することを学ぶ
(5)ちょっとした「からかい」を指導する
(6)「どうやって謝るか」を考える
(7)どうやって謝るかの作文

第3章 いじめられる子への指導
(1)いじめられたからって死んではいけない
(2)齋藤孝著「そんな友だちなら、いなくたっていいじゃないか」

第4章 「いじめ」を解決する教師の意識
(1)教師の見えないところで「いじめ」は起こる(2)人に言えない「いじめ」があると思え
(3)普段から声をかけるのが一番
(4)いじめ指導は直球勝負でいいか

第5章 いじめ自殺のニュースに触れて
(1)いじめ遺書に心を痛めた
(2)いじめ認定は難しい
(3)「いじめ自殺」報道は連鎖を呼ぶ
(4)あってはならない教師発の「いじめ」
(5)「いじめ」かどうか難しい事例もある
(6)非道な行為をする生徒と傍観者の問題
(7)世論は学校の責任だけを問うていない
(8)出席停止は容易ではない
(9)いじめ対策のバイブル
(10)いじめの本「ハッピーバースデー」
(11)いじめの本「重松清 ナイフ」

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March 04, 2010

真央ちゃんあってのキム・ヨナの金メダル

フィギアスケートの特番を観た。
真央ちゃんにとっては、当たり前とも言えるトリプルアクセルのジャンプ。
数年前、真央ちゃんのジャンプを見たキム・ヨナは「とても自分にはできない」と思ったそうだ。

自分にはトリプルアクセルはできないと判断したキム・ヨナはどうしたか?

彼女は無理に新しいワザ=トリプルアクセルに取り組んでケガをするリスクを回避した。
今ある自分の技に磨きをかけることに専念した。
彼女にとっての「技」は、「芸術性」。
キム・ヨナは自分のできないトリプルアクセルに対抗するために、自分の持ち味である芸術性を磨くことに専念したのである。

キム・ヨナの金メダルは、真央ちゃんに劣る自分の技術にめげることなく、自分らしさを追究した成果だった。

「自分にないものをねだるな。あるものを伸ばせ」(自作の語録)

たとえば、受験前にはバタバタと新しい問題集に手をつけるのではなく、やってきたものをじっくり復習しろと言われる。
同じ事だろう。

むろん、逆のアドバイスが有効な場合もある。
「失敗をおそれるな」
「失敗をしない唯一の方法は、何もしないことだ」
「チャレンジしなければ、自分は変えられない」

・・・ただし「間に合う・間に合わない」という期間の問題もある。
じたばたして結果が得られそうにないなら、今ある自分を大事に磨けということだ。

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