「高速道路の問題」で論理を鍛える
高速道路無料化問題は、どうも「そもそも」の部分が見失われている気がしてならない。
そもそも高速道路の存在が「料金を払って時間を買う」ものであるならば、受益者負担=利用者が適切な対価を払うのが筋だ。利用しない人の税金を使うことはない。
そもそも高速道路無料化のマニフェストは「渋滞が想定される路線は影響を確認しつつ」とあるのだから、
1000円高速で渋滞するような箇所は無料にならないと考えた方がいい。
ところが、先日、小澤幹事長は2000円上限の料金体系を「無料化のマニフェストに反する」と批判した。
この小沢幹事長の発言は、そもそものマニフェストの文言から逸脱している。
マニフェストでも、全線無料化などとは言っていない。
■民主党 高速道路政策大綱~高速道路の無料化~
2.施策概要
実際の無料化にあたっては、首都高速・阪神高速など
渋滞が想定される路線・区間など
については交通需要管理(TDM)の観点から
社会実験(5割引、7割引等)を実施して影響を確認しつつ、実施する。
「土日1000円」に比べれば、2000円は高い。
しかし、「いつでも2000円」である。
「土日1000円」に比べて「いつでも2000円」は騒ぐほど値上げか?
これは実質値下げであると言えるのではないか?
たとえ値下げと言い切れなくても、それぐらいの対価は支払ってもいいと私などは思う。
むろん、近距離の割引制度が廃止されるのは痛い。
自分の通勤圏は750円。通勤割引が適用されないなら利用はやめようと思っている。
それでも社会実験なのだから、「いつでも2000円」をやってみればいい。
「土日1000円」の渋滞のおかげで、休日の遠出を渋っている自分のような人もいるのだ。
現行と異なる社会実験をぜひ行って成果を検証してほしい。
ちなみに高速道路1000円は、2009年3月28日の実施日から2年間と発表されている。
予定としては2011年3月までということになる。
「いつでも2000円」は、その後実施するのが筋だと思うが・・・。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100402/plc1004020743003-n1.htmでは、猪瀬直樹氏が無料化に懐疑的な意見を述べている。
◆「全路線を無料化すれば渋滞は多くなり、物流は滞り、二酸化炭素は増え、経済にも悪影響がでる。
無料化でより早く目的地に到着し、時間やさまざまなコストを節約できる、というのは間違い。
人や物の移動の活発化や地域活性化につながる、とは単純には考えられない」
◆「地域格差、というよりも使った人がお金を払う、という受益者負担の原則に反している。
高速道路を利用する車は10台に1台、利用者1人のためにほかの9人が税負担を求められる。
東日本、中日本、西日本の主要3社の維持管理には毎年4千億円がかかる。
無料化したら、パトロールなどについても税金を投入するしかなく、国民負担は増える。
当面は無料化されない東名高速や首都高速、阪神高速の通行収入が無料化コストにまわるとしたら、
都市部の負担で地方を無料化することになる。反対の声が多い、世論の動きが鈍い、といわれるのは、
こうした部分への不満もあるからだろう」
極めてまっとうな意見である。
無料のツケを、いつか支払わされるなら、無料など止めた方がいい。
バスやフェリー会社が死活問題になっていることへの対処も必要だ。
さて、国土交通省のHPに見られる2010年3月12日の前原大臣の会見は、
「値下げ・値上げ」について、別の観点から語っている。
http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin100312.html
(問)料金制度ですが、先日、自民党政権の今やっている土日1,000円より値上げになるということを仰っていらっしゃいましたが、先ほどのマニフェストと絡んで、民主党政権になると高速道路は段々料金を引き下げて原則無料化になるのではないかという国民の意識があると思うのですが、それが値上げになるということでの利用者や国民の受け止めについてどうお考えになっていますか。(答)どこを基準点において考えてるかということが大きなポイントだと思います。
では自公政権はなんでETC土日1,000円とか、或いは夜間の割引等を採用したのかと、かなりの巨費を使って。
それは民主党がマニフェストに高速道路の無料化というものを掲げたからかなりの大幅な値下げをやったわけです。
つまりはこのレベルできてたものを思いっきり下げたということであります。
しかし私が申し上げているのは、ここからこうなったものをここに戻すわけではないと。
しかしこれも1つの社会実験として考えた場合に財源も含めて考えた時に、もう少し上がるというところ。
だから値上げというのはここから比べて値上げであるが、我々が元々言っていたのは、その高速道路料金を下げて、そして経済活用に資する、物流コストを下げるのだということを言っていたわけです。
この時に言っていて自民党が民主党の対抗措置としてどんと下げたと、それに対しての値上げということであって、我々はその今まで長らく自公政権をやっていた高速道路の値段というのは高いと、これをあるインフラを使って物流コストを下げて、それを経済活用に資するかたちにしていくということで、ここからは当然ながら値下げであるという全体の趣旨は何ら変わっていないということです。
・・・自分の推測が含まれるかもしれないが前原氏の言いたいことは、次のようになる。
◆民主党の無料化公約は、「土日1000円高速・各種ETC割引」の前のものである。
したがって「いつでも2000円」は、「土日1000円」以前の料金体系からすれば値下げであり、無料化に向けての社会実験としては適切である。
小沢幹事長も、今回の「いつでも2000円」について
◆自民党の選挙前の駆け込み政策である「土日1000円」以前の料金体系と比べれば値下げである。
◆「土日1000円」の施策で困っている人たちへのフォローも必要である。
◆全線無料化と公約したわけではない。
と言及すれば、民主党内でのチクハグさは回避できたのに・・。
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