適正な就労の指導
◆職業適正検査の実施◆
中学校勤務時に、進路指導の一環として、職業適性検査を実施してきた。
自分の性格の傾向を知り、自分の性格にあった職種を知るための検査だが、コンピュータで打ち出されるデータは、どちらかというと画一的で、もらった生徒も、そのデータを真剣に参考にする雰囲気もなかった。
多くの生徒は「普通科」の高校に進学するから、どんな職種に就職するかは、進学先の高校にお任せする気持ちが強かった。
注意を払ったのは工業科・商業科等の専門学科に進学する生徒。
成績が悪くて普通科に入れないから工業高校に入るというようなイージーな選択は、退学を招くので、本人の意思確認が大切だった。
とはいえ、進学学科を決めるにあたり、どれだけの生徒が「職業適正検査」の結果を参考にしていたかは疑わしかった。適性検査の結果と異なっていても、本人が「行きたい」と言えば、それを覆すことはできなかったからだ。
◆パーソナリテイ障害の特性と職業適性◆
あらゆパーソナリテイ障害は重荷にもなれば、特性をうまく伸ばすことで、社会的に活躍することもできると岡田尊司氏は言う。「『パーソナリテイ障害』(中公新書)
①反社会性パーソナリテイ障害の人は、危険に対する不安を感じにくいから、武道・レーシング・危険を伴うとび職や建設現場・パイロット・自衛官などに就くことで衝動を昇華できる。
②自己愛性パーソナリテイ障害の人が示す傲慢さ・尊大さ・妥協を許さない心は、アーテイストや芸術家にとって不可欠である。
③妄想性パーソナリテイ障害の人が示す猜疑心や他人の行動の裏まで読もうとする傾向は、弁護士や役人・政治家やその参謀的な存在として頭角を現す。
④失調型パーソナリテイ障害の人は、技術革新に携わる仕事や研究者・アーテイスト・企画・宗教家・精神科医・霊能者として活躍することが多い。
⑤統合失調質パーソナリテイ障害の人は、対人関係のない職種・自然の中で孤独に取り組み仕事・黙々と続ける仕事・精神的な世界の追究に最適である。
⑥依存性パーソナリテイ障害の人は、他者を気遣い献身しなければ不安になる傾向を生かし、奉仕的な仕事に就くとよい。
発達障害・人格障害の人は、職業適性の幅が狭い。
障害がなければ適正にあわない職業に就いても我慢や努力で克服できるだろう。
しかし、人によっては、適正に合わない職業に就くことで悲劇を招くことがある。
その意味では
A:生徒自身にきちんと自分の性格を知らせ、職業適性を知らせる
B:職業適性に合わせて就職する重要性を教える。
C:職業適性に合わせた進路選択を支援する。
ことを、教師が教師の責務としてしっかり自覚しないといけない。
◆社会問題となった派遣切りと適正就労◆
派遣切り→ホームレスが社会問題になった時、
「働き先なんて探せばいくらでもある。選り好みしている場合ではない。彼らはわがままなだけだ」
という厳しい指摘もあったが
「機械工をやってきた人に、農業をやれ・介護をやれというのは無理は話だ」という同情論があり、
「農業・介護をバカにするな」
という特集雑誌もあった。
そのことを上記の①から⑥に合わせてみると、よく分かる。
適正に合わない職業に就くのは容易なことではない。
発達障害・人格障害ならなおさらだ。
適正就労に対する見通しを示すのも、教育の大切な役割なのである。
たとえば、キャリアマトリックス(CMX)と呼ばれる職業情報・キャリアに関する独立行政法人のサイトがある。
http://cmx.vrsys.net/TOP/
進路についての解説や、手軽な適正検査問題などがある。
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職業や進路の選択は、人生の選択です。これからの人生において繰り返される生き方の選択の第一歩です。たとえ後でその選択を変更することになっても、今の時点でベストと思える選択をすることが大切です。
多くの人達からのアドバイスを受けながら、自分の意思で職業や進路を選択し決定していくことが、自立した人生の始まりといえます。
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といった解説は、極めて当然の内容だ。
繰り返しになるが、ごく普通の人ならば、本人の努力次第で、適正と異なった職業に就いても適応できる。
しかし、適正就労の選択幅が狭い人・適正就労が欠かせない人もいる。
小学校では「適正就労」など、ほとんど意識されないが、将来の「自立」を考えたら最重要課題である。
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