「推敲」で語感を鍛える
◆閑かさや岩にしみ入る蝉の声(松尾芭蕉「奥の細道」)
この句の初案は「山寺や石にしみつく蝉の声」
これが推敲され「閑かさや」の形に落ち着いた。
その途中経過として「さびしさや岩にしみ込む蝉の声」とあったという説もある)。
(1)山寺や石にしみつく蝉の声
(2)さびしさや岩にしみ込む蝉の声
(3)閑かさや岩にしみ入る蝉の声
ずいぶんイメージが変わるものだ。
「しみつく」「しみ込む」「しみいる」は微妙な差異ながら、だんだん柔らかくなっていく感じ。
「さびしさや」「閑かさや」は、ストレートな感情語を用いずに「寂しい」を感じさせている点で「閑かさや」はすごいと思う。
たった一文字の違いにこだわる。
たった一文字で作品の世界が変わることに気づく。
これが「推敲」だ。
先日、中学生の作品を目にする機会があった。
◆こどもの日 まだ上がってる こいのぼり
を、ひっくり返して
◆こいのぼり まだ上がってる こどもの日
を提示して「どっちがいい?」と聞いてみるといい。
ぐっと思考が集中する。
◆夏休み 受験に向けて がんばろう
の文末を変えて
◆夏休み 受験に向けて がんばるぞ
を提示して「どっちがいい?」と聞いてみるといい。
http://homepage2.nifty.com/take-t/haiku2.htm
でも書いた。
少し言葉を変えたり順序を変えたりするだけで俳句の雰囲気はぐっと変わってくる。
だから、1つの俳句を入れ替えたり1文字変えたりして、5句ぐらい作り替えてみると洗練されてくる。
「1個作って終わり」では、指導のチャンスを見逃しているようなものだ。
俳句だからこそ、推敲=言語感覚の洗練の絶好の機会としてとらえたい。
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