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November 25, 2010

見抜く力・分析する力


 『子供を動かす法則』(向山洋一著)には、子供の些細な動きに敏感になるよう勧める部分がある。

「プロの目」は修行によってつちかわれる。

と題された章だ。
 P79を視写してみる。
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 「あれども見えず」の状態は、教師の世界の中に充満している。
 いかなるプロにとっても、対象を細かく分析して見ることができるのは、プロの基本的条件なのである。
 熱が39度あるということだけでも医師は、素人より多くの分析を加えるであろう。
 野菜の葉の色だけを見て農民は、素人よりも多くのことを考えられるだあろう。
 土俵の上のあっという間の勝負でさえ、解説者は細かい分析を加えることができる。
 だが、教師には素人のようなぼやっとした見方をしている人が多い。誰でも言えるような一般論を言っている人が多い。
 教師にとっても、対象を細かく分析できるということは、それなりの修行の日々が必要なのである。私はあえて修行と言う。のんべんだらりとした教師生活の日々を送っていては、決して身につけることはできないのである。
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・・・さて、この後、放課後の孤独な作業のシーンが書かれる。その部分は記憶にある。
 全く記憶になかったのが、次の部分だ。
 若いころは具体的な描写シーンにばかり目が向いたのかもしれない。
 以下の部分は、まさに「まとめ」だ。

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 子供を動かすのは、独立した単独の技術ではない。技術を支えるための、相手に対する深い理解を必要とする。植物でさえ、動物でさえ、そうなのである。
 まして、感性の鋭い人間を動かすのである。相手に対する深い理解があってありすぎることはない。
 相手を理解しようとする意欲は人柄の問題や人格の問題と関係するが、相手を理解する方法となると人柄や人格と別のこととなる。
 相手を理解する方法もまた技術だからである。しかも、この技術は習得するのに年数がかかる高級な技術なのである。
 医師は医師の技術を使いこなすことで、患者を理解する。医師が医師として相手を理解するとは、医師の仕事の専門性において理解することなのである。医師の技術の習得には一定の時間がかかる。あたり前のことである。
 教師が子供を理解しようとするのも、教師の仕事の専門性において理解するのである。だから、理解できる技術を習得するまでには当然時間がかかる。ところが「子供を理解しようとする意欲さえあれば、それですぐ理解できると思っている方がほとんどなのである。
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・・・重い。その重さゆえ、以前はスルーしてしまった部分だ。
 ソムリエの表現力も、もちろん、ソムリエの技術の支え・修行の支えがあってのことだ。
 以前も書いた、ワインテイストの描写は素人の想像を超える圧倒的な分析力と修行のたまものだ。
 田崎真也氏『言葉にして伝える技術~ソムリエの表現力~』より

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 目の前のグラスに赤ワインが注がれています。 
 グラスを手に持ち、視覚で外観からチェックします。色調は紫がかった濃いガーネット。次に、ワインの液面に浮いているように見える表面張力によるデイスク様の状態の厚みをチェックし、さらに、グラスを少し動かすと、グラスの壁面に付いているワインの流動性に粘着性があるのがわかります。デイスクの厚みや粘着性は主にアルコール度数のレベルを判断するポイントです。

 清澄度や輝き具合を確認し、次に嗅覚です。香りは芳醇で複雑性を感じ、ブラックベリーのコンポートやスミレの花、丁子や甘草を含む甘苦いスパイスの香りにほのかに土の香り、木樽からのロースト香やバニラ香などが調和して感じられます。まず丁子や甘草などのスパイス香を確認したことにより、カベルネ・ソーヴィニヨン種が使われていると想像します。さらに、ほのかに感じる土の香りは、メルロ種が少し使われて可能性を示唆しています。また木樽からの香りの具合により、樽の木材はフレンチオークで、その強弱などから新樽の比率が何%ぐらいであるかなどを推測します。そして、ブラックベリーの香りにより、使われているブドウの成熟度の高さを判断し、コンポートのような香りからは、まだ酸化は進んでおらず、若々しい状態であるということの意味が含まれていることを理解します。

 そして、味覚です。味わいはまろやかな果実味からのバランスのとれた印象が広がり、タンニンの渋みはなめらかで余韻は非常に長く、10秒程度(1コダリともいう)、アフターフレーバーにも果実香やスパイスの香りが残ります。このように、ワインが口先端と舌先に触れた瞬間の印象は、主にアルコールによる甘味度合いをチェックし、豊かであるとか、まろやか、ふくよかなどの単語で表現します。
 次に、ワインが口のなかで広がる際に、とくに口の前方部分に意識をし、酸味と甘味(感覚的な)のバランスをチェックします。そして後半、口の後方部に意識を移し、苦味(とくに赤ワインの)がもたらすバランスを確認。さらに、歯茎などの粘膜の敏感な部分で収斂性(渋み)を確認します。そして、口をすぼめ、葉の隙間から空気を吸い込むようにしながら、口中にあるワインと空気をからめ、そのワインの香り成分を含んだ空気を肺に送り、今度はその空気を鼻から抜きます。この際、鼻腔を逆流しながらも香りを確認することができます。アフターフレーバーを瞬時に判断することができるのです。最後に口中のワインを吐き出し、そして、アフターフレーバーとして感じる印象が持続する時間をチェックします。これは、ワインの質を判断する基準としても重要なポイントとなります。

 この結果、この赤ワインの品種はカベルネ・ソーヴィニヨンが主体のもので、メルロを少量ブレンド。だとするとフランスのボルドー地方、カベルネ主体ですのでメドックやオー・メドック地区産のワイン。その余韻の長さなどからポテンシャルが高いので、オー・メドック、バランスのよさから、サンジュリアン村産の線が濃く、そうであれば、この熟成具合とブドウの成熟度の高さから、2006年ものの、おそらくは「シャト―・ブラネール・デュクリュ」でしょう、というふうに判断します。
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・・・新書版で3ページの叙述部分。プロというのは、ここまで分析し、ここまで表現できるのだ。

 シャーロックホームズは、初対面のワトソンがアフガニスタンから来た事を言い当てた。
 「『医者らしいが、軍人の雰囲気をもった男、といえば、軍医ということになる。顔は黒いが、手首は白いから、熱帯地方から帰ったのだろう。彼のやせこけた顔を見れば、苦労し、病気をしたのはすぐわかる。左手の動きがぎこちないところをみると、左腕にけがをしているな。英国の軍医がこんな目にあう熱帯地方といえばアフガニスタンしかない』ぼくがこれだけの推理をするのに一秒とかからなかった。それで、アフガニスタンにおられたのでしょうと言い、君がびっくりしたというわけだ」
 http://www5.ocn.ne.jp/~shworld/18_endless_adventure/endless_1_homles.html

 シャーロック・ホームズはよくアブダクションを使う。徹底した現場観察によって得た手掛かりを、過去の犯罪事例に関する膨大な知識、物的証拠に関する化学的知見、犯罪界の事情通から得た情報などと照らし合わせて分析し、事件現場で何が起きたかを推測する。しばしば消去法を用い、「不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる」(When you have eliminated the impossible, whatever remains, however improbable, must be the truth.) と述べている(「ブルースパーティントン設計図」)。彼の観察力の鋭さは「白銀号事件」で犬が吠えなかったことを指摘したように、現場で起きた出来事だけでなく、現場で発生すべきなのに起きなかった出来事にも注目した点に表される。この事例は、ミステリ小説界に留まらず広く学問の世界においても、注意力と観察力は如何にあるべきかを示す事例として頻繁に引用される
ホームズのモデルは、作者の医学部時代の恩師で外科医であるジョーゼフ・ベルとされている。ベルは病気の診断には観察力が重要だと学生に説き、訪れる患者の外見から病名だけでなく、職業や住所、家族構成までを鋭い観察眼で言い当てて学生らを驚かせた。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA

 ※ アブダクション = 仮説推論

 ホームズのモデルが医者であったことからも分かるように、医者は、診察室に入った患者を様々な観点で看取り、病状を判断する。
 向山先生が、医者を引き合いに出すのも、そのためだ。
 
 名捕手だったスワローズの古田は、バッターが打席に入るわずかな時間の間に、走者の動き・三塁コーチの動き・打席に立つバッターの足の位置やバットの握りを確かめてた。視線を次から次へと移動させ、さまざまな情報を収集して1つのサインを決めた。
 「バッターの動きを見ると、どんな球をねらっているかだいたい分かります。」と言い切る自信もすごいが、次のセリフもすごいと思った。

  「三塁コーチなんて見たって、ほとんど役に立ちませんよ。でも100回見て1回役に立つなら見てもいいかなと思う。」 名キャッチャーには、自分なりの技術があり工夫があり努力があったのだ。

 さて、ひるがえって、我々教師は、教室に入った瞬間どこを見るか、子供にあった瞬間どこを見るか、ノートの何を見るか、机の中の何を見るか。
 そして、「看取った事実」から何を引き出し、どう分析し、どれだけ表現できるか。
 気分・経験・勘の3Kで済ますのではなく、客観的・科学的な分析の観点を明らかにしてみたい。

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Posted by: sleep sack bondage | May 17, 2014 09:32 PM

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