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December 31, 2010

人間中心思想と自然中心思想

 中日新聞夕刊の梅原猛氏の連載「思うままに」で、『草木国土悉皆成仏』の思想について触れている。

12月13日「植物中心の思想」
12月20日「日本の思想が人類救う」

の2回分しか手元にないが、もう少し前から言及されていたようだ。今度図書館で調べてみようと思う。

 『山川草木悉皆成仏』については、次のサイトに詳しい。
http://okwave.jp/qa/q2041831.html

 梅原氏の連載から一部抜粋すると
◆「草木国土悉皆成仏」という思想がインド仏教、中国仏教にない日本仏教独自の思想であり、その思想の淵源が縄文文化に求められる
◆伝統的な日本文化の原理が、「草木国土悉皆成仏」という言葉に表されるような植物を生きとし生けるものの中心におく思想であるとすれば、それはヨーロッパの伝統的思想とは甚だ異なる。ヨーロッパの伝統的思想は人間中心の思想であるといわねばならない。
◆このような思想(人間中心の思想)はキリスト教の聖典である新訳聖書にも受け継がれている。そこでは、人間は創造者である神の被造物であるが、神の似姿である理性をもつがゆえに他の被造物よりもすぐれていて、他の被造物に対する支配権をもつと考えられている。

・・・「古今和歌集」をはじめとする和歌の世界では、植物を読み込んだ四季の歌が多く、恋の歌も植物になぞらえた者が多い。
俳句の季語もしかり、「源氏物語」の女性の名前(桐壺・葵の上・夕顔など)も、戦前までの女性の名にも松・桃・菊・百合など植物の名が多い。
トランプ・麻雀と違い、花札は十二カ月それぞれの季節の植物が札に描かれ、その植物に集う鳥や獣が添えられていると梅原氏は書いている。

 先日読んだ金谷武洋著『日本語には敬語があって主語がない』も同様の発想が書かれている。

▼俳句はまさにその方向で、「大いなる自然の懐に包まれて生きている儚い存在である自分」を詠むのが基本なのです。夏目金之助の「俳句と禅は似ている」という寺田寅彦への答えは、まさにそれを述べています。自然を支配し、自然を変えようとする西洋的、科学的、分析的な<私>はそこにいません。いるのは、それとは逆に、自然に溶け込んで同化してしまう<私>なのですから。P156▲

 また、続いて「俳号と四股名に見る『自然崇拝』」の章があり、俳人の植物志向などが紹介されている。
興味を引いたのは力士の四股名である。

▼戦前の双葉山から平成のは貴乃花・若乃花まで、植物的なものが目立ちます。それはなぜでしょうか。
一言で言うと、それらが日本人にとっては「強そうな名前」だからです。つまり、そこにあって不動の自然物(山・嶺・島・富士)や、人間のコントロールの利かない勢いを帯びるもの(海・川・波)や、そして自然に大きく育つ植物(花・杉・藤)などだからです。▲

 金谷氏は、この後、外国人力士には「龍・鵬」といった架空の動物を使うケースが目立つことも興味深い点として指摘している。西洋由来の野球のチーム名は巨人や龍や虎・鷹のように勇ましいものが多いことも。
外山滋比古氏の『ことばに学ぶ』からの引用もある。

▼ 「アメリカ人の自然に動物が重要な意味をもっているとすれば、われわれの自然はどちらかといえば植物的であるように思われる。手許の歳時記で季語に当たってみると、動物という分類に入っていうものが七七、」植物に入っているものが二○八。植物の方が三倍近く多い」▲

 日本の自然観は植物的、という点が、冒頭、梅原氏の「草木国土悉皆成仏」=自然を支配するのではなく受容する思想とつながってくる。
 であるからこそ、梅原氏は西洋の人間中心主義に異を唱える。

▼この人間中心主義はいつ興ったか。それはもちろんプラトンによって始まったとはいえない。人間が農耕牧畜文明を創造したとき、このような人間中心主義が文明の哲学になったのであろう。農業は人間が植物を絶対的に支配することであり、牧畜は人間が動物を絶対的に支配することであるからである。
今や、遠く農耕牧畜文明に遡る人間中心主義を批判すべきであろう。このように人類文明を根源的に考えるとき、狩猟採集文明の原理を保持している日本の思想が人類の危機を救う思想になるのではなかろうか。▲

 梅原氏は2008年にも同趣旨の講演を行っている。
http://www.geocities.jp/shinnyatarou/date16.html

 2004年にも書いている。
http://shgshmz.gn.to/shgmax/public_html/review/asahi20040720_umehara.html

 西洋思想と東洋思想の違い、これは哲学の問題であり、宗教の問題である。
 実に奥の深い問題だ。ほんの入り口に過ぎない。

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