TPPの議論
TPP参加するかどうかで、大騒ぎになっている。
大事な問題だから、議論することは、とてもいい。強引に決定されても困る。
TPP賛成側には賛成側の論拠がある。
たとえば、次のような意見。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20111104/223609/
TPPが農業に壊滅的な被害をもたらすというTPP亡国論の最大の論拠は、農業生産額が半減し、コメの生産が9割減るとした農林水産省の試算だ。日本の農政を司る農水省は、関税障壁によってコメなどの重要品目を保護する一方、減反政策で米価を維持しようとする政策をとってきた。
これに対し高木氏は、これまでの農業保護のあり方は間違っていたと自らの過去も含めて批判する。反対派の議論とは全く逆に、日本の農業再生のために、なぜTPP交渉に参加する必要があると説くのか。
TPP(環太平洋経済連携協定)に反対する人たちは、何から何まで総動員してTPPを非難しているが、私にはあまり説得力があるとは思えない。
彼らは「TPPに入ると国の形が変わってしまう」というが、今は何が起きているのか。今はなし崩しに国の形が変わっているのだ。
農村は疲弊し、いまや外国人労働者、いわゆる研修生の力を借りずには農業を維持できなくなっている現実をみれば、国の形はなし崩しに変わりつつある。農業はこのまま行けば右肩下がりだ。農林水産省の試算ではTPPに参加すると農業生産額が4兆1000億円消えるというが、この20年で農業総生産は4兆円減り、農業所得は半減した。
地縁、血縁があるので、なかなか大きな声では言えないことだろうが、私が農村集落に行って話す限り、このまま行っても日本の農業は先の見通しが何もない。何もないどころか、人がいなくなっているという危機感は強い。
これだけ高い関税で守ってきたのに、なぜそういうことになってしまったのか。それは農業の守り方が間違っていたからだ。
間違っていた守り方を直すには、まず日本の農業の現状、強みと弱みををきちんと分析、検証することだ。そうすればTPP24分野の交渉の戦術はできる。どこに手を打たないといけないか、どれだけの期間をかけなければならないか。それを考えた上で交渉に臨めばいい。そして戦術の前に、この国の形をどうしていくか、という大きな戦略を作らなければならない。
そうした戦略に基づいて、それでもなおコメを守る必要があるというのであれば、関税撤廃の例外品目にする、ないしは関税の削減幅を暫定的に限定する、といった要求をするなど、いろいろ方法はあると思う。そうした交渉もせずにTPPに入ったらまるでいきなり関税がゼロになるかのように、何の根拠にも基づかないで恐怖感を煽るのは冷静な議論を妨げるだけではなく、国の形を誤らせる。
・・・これ以上は、会員のみのサービスの文面になるので引用はしない。
しかし、ここまでの意見で高木氏の主張はよく分かる。
TPPに入ったら農業はガタガタになる、という人がいるが、今はすでにガタガタではないか、ということだ。
そういう言い方は、現在の農業関係者に失礼だが、将来の展望が見えてこない。
農業就労の年齢層を見れば、10年後20年後の見通しがないことは明らかだ。
高木氏は言う。
◆これだけ高い関税で守ってきたのに、なぜそういうことになってしまったのか。それは農業の守り方が間違っていたからだ。
これは、逆の言い方もできる。
◆高い関税で守ってきたから、こういうことになってしまったのだ。それは農業の守り方が間違っていたからだ。
食糧生産=食糧自給という分野には、確かに「競争力」はなじまない。
なぜなら「もうからないから止める」と投げ出されたら食糧が確保できないからだ。
だから「もうからない部分は、支援するから、頼むから食料生産を続けてほしい」と保護政策に努めてきた。
とはいえ、その支援も「潤沢な資金援助」ではないから、若者が専業農家として臨んで就労するほどでない。
つまりTPPに入ろうが入るまいが、今のままでは農業は崩壊寸前なのである。
ならば、TPPを機会にして、いずれは訪れる農業崩壊を前倒しするなり、システムを変えるなりのアクションを起こすべきなのだ。
◆TPPに入ると崩壊するから反対。すべてが今のまま。
では、反対派の意見は議論の対象にならない。
TPPに反対なら、「TPPに入らずに、どうしたら農業は再生するか」の代案を出すべきだ。
むろん、TPP賛成派も、具体的な「農業再生プラン」を示すべきだ。
双方の再生プランを、しっかり見極めたいと思う。
ちなみに、「食糧自給率」を論拠にするが、カロリーベースの食糧自給率の計算は、空虚であることが分かっている。今なお「食糧自給率」を訴える意見は、要注意である(空虚であるという意見を論破しての意見なら価値はある)。
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