『質問する力』(大前研一)
大前研一氏の「質問する力」(文春文庫)を読了した。
自宅で埋もれたままの本であったが、ようやく読み終えた。
2005年3月が第1刷。手元にあるには2006年の第3刷。
1990年代。2000年代の経済の危機的状況や日本人の危機意識の希薄な状況が語られているが
2011年を終えても事態が全く好転しないところに、空恐ろしさを感じてしまう。
現在進行形で生きている自分の時代を客観視するのは難しい。
だから、少し前の話題と比べながら、現在を考えると、現実が認識しやすい。
例えば、「国の年金はあてにしない人生設計をする」の項。
◆◆◆
今もし国民全員が「年金って、本当に大丈夫なんですか?」と政府に質問したとします。
たちまち年金制度は崩壊してしまうでしょう。
なぜなら、少しも大丈夫などではないからです。
年金はいま支払い予定に対して収入が不足しています。それを年金債務といいますが、これが八百兆円もあるのです。
国と地方が国債と地方債で約七百兆円の負債を抱えていることはよく知られていますが、国が勝手に出したこの債券と、払うと約束した年金、それを全部足していくと少なく見積もっても千五、六百兆円、下手をすると千九百兆円ぐらいになるのです。
(中略)
つまり日本政府はとうに破産しているのです。国債だけでも破産している上に、年金債務でも破産している、二重の破産状態なのです。
ですから、これから先は、国が払うと約束したのに払ってくれないという局面が必ず出てきます。
政府はまず年金や保険の掛け金を上げるでしょう。次に年金の支払いを開始する年齢を次第に上げていくはずです。
計算してみると、年金の支給開始年齢を七十五、六歳まで引き上げていかないと間に合わないことになっていきます。
日本人の寿命を八十歳とすると、死ぬまでのほんの四、五年しかもらえないことになってしまうのです。
◆◆◆
・・・これが2004年当時の認識である。
「消えた年金問題」で大騒ぎしたのは民主党政権になる以前。
厚労省大臣が舛添氏から長妻氏に変わったが、十分な対処はできずに終わってしまった。
2011年になって、支給開始年齢の引き上げと、それに対応させる60歳定年引き上げの話題がのぼったが、
こうしてみると、大前氏のシナリオ通りであることが分かる。
にも、かかかわらず年金問題に対して自衛策をとらないのでは、一見真面目なアリさんだと思っていた自分が、実は路頭に迷うキリギリスのような生き方だったということになる。
「あれほど警告したのに、どうして手を打たなかったの?」ということにならざるをえない。
p158にも、同様の指摘がある。
◆◆◆
今の意味のない無駄遣いの結果、十年、二十年して税負担が重くなり、年金負担が重くなったときに、若い世代の人たちは「ノー」と言うでしょう。
結果として支給開始年齢が高くなり、支給額が低くなり、最終的には全額切り捨てということになります。
今、天からお金が降ってくると思って無駄な公共事業をやっている現役世代の人たちは、因果応報で最後は被害者になるに違いありません。
◆◆◆
「質問する力」は、
※問題意識・当事者意識をもてるかどうか
※自分の意見を相手にぶつけられるかどうか
でもある。
そして、最後は
※「自分の身は自分で守れ」ということになる。
中途半端に「分かったつもり」になって浅いまま終えてしまうのがよくない。
常に「疑いの目を持つ」という意味でもある。
本書では、小渕氏が、謙虚に大前氏に教えを請う場面が紹介されている。
学問の基本も「疑う」ことなのだと、改めて考えさせられた1冊であった。
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Comments
はじめまして。
質問力につて勉強中です。
「問題意識・当事者意識をもてるかどうか
自分の意見を相手にぶつけられるかどうか」
相手に質問をしながらも、主体は自分自信の思考力ということでしょうか。質問に応える以上に、質問をすることには脳エネルギーが必要なのですね。
Posted by: ETCマンツーマン英会話 | January 12, 2012 07:19 PM
以前、質問する場合は「その点についてどう考えているか自分の意見をきちんと述べて質問せよ」と教わりました。
相手の時間を割くわけですから、最低限それぐらいの下調べはしろということでもあると思います。質問のレベルで全て見透かされてしまうとも言えます。
「お、いい質問だな」と答える方がうれしくなるような「良問」というのも存在しますよね。
Posted by: 竹田博之 | January 14, 2012 08:33 AM
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Posted by: UGG けばフリップフロップスリッパ | January 23, 2014 03:45 PM