« August 2012 | Main | November 2012 »

October 27, 2012

悪意を感じる文章を分析する

 中日新聞(東京新聞)朝刊10月26日(金曜)のコラム記事中日春秋は、石原都知事批判の文章だった。
先日の「週刊朝日」の、ハシシタの特集も悪意が読み取れたが、この石原批判もなかなか下品である。
読解力トレーニングとして、分析してみよう。

http://www.chunichi.co.jp/article/column/syunju/CK2012102...

======================
森喜朗元首相が産経新聞のインタビューに興味深い内情を暴露していた。
昨年四月の都知事選に出馬する意思のなかった石原慎太郎知事を、前自民党幹事長で長男の伸晃氏と二人で説得したという

▼「ここで降りたら党幹事長でもある伸晃君のためにならない。彼の首相の芽はなくなるよ」。森さんのこの言葉が効いたのだろうか。夜中まで説得して翻意させたという。石原さんは「必ず息子を頼むよ」と言ったそうだ

▼総裁選で森さんが伸晃氏を支持したのには、そんな事情があったらしい。息子が総裁になれなかったことで事情は一変したということだろうか。親バカという「我欲」から四期目の知事選に出馬した石原さんがきのう、任期半ばでの辞職を表明した

▼大津波を「天罰」と表現した(翌日に撤回、陳謝)暴言にもかかわらず、大震災後の強いリーダーを求める都民の強い支持を受け、「東京から国を変える」と胸を張った人は「東京のために国政でやらなければならない」と変心した

▼八十歳という年齢や健康面、橋下徹大阪市長の率いる日本維新の会との連携も視野に入れて、新党結成の最後のチャンスと判断したのだろう

▼突然、言い出した尖閣諸島の都有化によって、結果的に日本経済は巨額の損失をこうむった。憲法の廃棄を訴え、ナショナリズムをあおる石原新党に果たして支持は集まるだろうか。

========================

 まずは産経新聞のインタビュー記事の引用から始まるが、そもそも、これが怪しい。
 先日、iPS細胞のねつ造騒ぎがあって、
「裏は取ったのか。事実確認はできているのか」
が問題になった。
 じゃあ今回はどうなのだろう。
 インタビュー記事で本人がしゃべったから事実とは限らない。
 本人のインタビューほど自分に都合のいいように話すことも多いからだ。
 森さんが、自分が政界に大きな影響を与えたんだと思わせたくて語っている可能性もなくはないのである。

①石原さんは「必ず息子を頼むよ」と言ったそうだ。
②総裁選で森さんが伸晃氏を支持したのには、そんな事情があったらしい。
③息子が総裁になれなかったことで事情は一変したということだろうか。

 ①②③の文末「言ったそうだ」「あったらしい」「いうことだろうか」は、確定できない推定の連続である。
 これは、伝聞ゆえの責任回避に読める。

 しかし、伝聞推定に基づいて、次のように言い切る。

④親バカという「我欲」から四期目の知事選に出馬した石原さん

 出た!

 ①②③が伝聞推定なのに、そこから導いた④の文は「親バカ」「我欲」と断言してしまっている。
そして、「親バカという「我欲」から四期目の知事選に出馬した石原さん」と、悪意に満ちた枕言葉で「石原さん」にマイナスイメージを与えている。

 ⑤大津波を「天罰」と表現した(翌日に撤回、陳謝)暴言

 「天罰」の発言は、文脈の中では震災の被害者に向けた言葉でなかったことは明らかであるが「暴言」と断じている。
 きわめて作為的である。

 ⑥「東京から国を変える」と胸を張った人は「東京のために国政でやらなければならない」と変心した

 『変心』[名](スル)考えが変わること。心変わり。「金に目がくらんで―する」

 文例をみれば分かるように、「変心」にはマイナスイメージがある。
 「決意した・決心した」ではなく「変心した」というところが巧妙である。

 ⑦突然、言い出した尖閣諸島の都有化によって、結果的に日本経済は巨額の損失をこうむった。

 そのような側面もある。しかし、このまま放置して済む問題ではなかった。
  尖閣の問題は、石原知事の責任もあるが、野田政権の責任もある。長い間の国全体の責任もある。
  その全てを石原氏になすりつけるのは、責任転嫁である。
  それに「結果的に日本経済は巨額の損失をこうむった」の「結果」など、正確にはまだ出ていない。

 長い目で見たときに、尖閣国有化は日本にとって巨額の利益になるかもしれない。
  歴史の審判は10年後・20年後に下されるかもしれないのだ。

 ⑧憲法の廃棄を訴え、ナショナリズムをあおる石原新党に果たして支持は集まるだろうか。

 「憲法の廃棄」には、それなりの正当性がある。
 「ナショナリズム」にも、それなりの正当性がある。
 どの国家も「国家を守る」を口にするのは当然のことだ。
 藤原正彦氏は『国家の品格』で、次のよう述べている。
 
 「政治家とか官僚とか、日本を代表して世界と接する人々は当然、ある程度のナショナリズムを持っていてくれないと困る。 」(P115)。

 政治家である石原氏が国益を考える「ナショナリスト」であることは、むしろ当然なのだ。

 しかし、「憲法廃棄」「ナショナリズム」のマイナスイメージを利用して石原氏にマイナスイメージを刷りこんでいる。
 見事だ。
 これほどネガティブキャンペーンをしながら、石原新党に支持が集まった時、コラム担当者はどう弁解するのだろう。

 ちなみに、石原知事について、自分はフラットな立場で見ているつもりです。念のため。

※石原氏の「天罰」発言については、以下の背景がある。
http://d.hatena.ne.jp/black-mant/20110315

記者A「最後に石原知事にお伺いします。知事は、今日のですね、蓮舫大臣との会談の後で、日本人の我欲についてお話されて、
『津波をうまく利用して、我欲をうまく洗い流す必要がある。積年にたまった日本人の心の垢を。これはやっぱり天罰だと思う。』
とおっしゃいましたけれども、これは意味はどうあれですね、被災された方にとってはですね、非常に不謹慎な発言だと思いますが…」

石原「いやいや、あの時申し上げた。
『被災された方にはですね非常に無残な言葉に聞こえるかもしれませんが』と言ったじゃないですか。言葉を添えてますよ。」

| | Comments (6) | TrackBack (0)

October 14, 2012

山中伸弥教授は日本の誇り!

 数年前に山中伸弥教授のお話を聞いたことがある。
 当時からノーベル賞候補になっていたが、ユーモアたっぷりの優しそうなお人柄であった。

◆山中教授は研究の拠点をアメリカに移してしまうのではないか?

 お話を聞きながら、そんなことを勝手に考えていた。
 何と言っても研究費が違う。
(受賞後の報道の中でも、日本での5年分の研究費がアメリカの1年であると聞いた)。
 おそらく待遇も相当違うだろう。
 研究を進めることを優先にしたら、日本よりアメリカを拠点にした方がいいのではないかと思った。

 しかし、今回の受賞後のインタビューで、全く違うことが分かった。

◆本当に私が受賞できたのは、日本という国に支えていただいて、本当に日本、日の丸のご支援がなければ、受賞できなかったと心の底から思った。
 まさにこれは、日本という国が受賞した賞だと思っている。
このiPS細胞の基礎となった研究を奈良先端科学技術大学院大学というところで初めて、研究室を持った30代半ばのころ、非常に無名の研究者に過ぎなかったころだが、国から大きな支援を与えていただいて伸び伸び研究することができた。
 これが発展したことにより、京大でさらに研究ができ、文科省の支援も受ける中でできたのがiPSだった。
この間、非常に大きな国からの支援をいただいてきた。
 こういったご支援がなければ、今日の電話はかかってこなかった。感想を一言で言うと、感謝でしかない。
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/121008/wlf12...

◆メイド・イン・ジャパンの薬を世界の難病の患者さんに提供することを目標に、今後も研究を続けていきたい。
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/121009/wlf12...htm 

 山中氏は、日本を大事にしている。
 今後も、オールジャパン、メイドインジャパンで研究を進めていかれるようだ。

 そのことが、とてもうれしい。
 そのことを含めて日本にとっての朗報であった。
  山中氏の業績も人柄も日本の誇りである。
  謙虚な生き方を含めて授業化していきたいと思う。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

最新の知見を学ばねば教師失格!

 危機管理アドバイザーの国崎信江氏が、10月9日の中日新聞夕刊のコラム「紙つぶて」で、「火災の避難訓練でハンカチに口や鼻をあてる行為」に疑問を呈している。

 平成八年の防災指導ハンドブックには
「ハンカチやタオル等は湿・乾問わず、ほとんど一酸化炭素の除去は期待できない」
と記されているそうだ。
 おそらく、どの学校でも「濡れたハンカチ」という指導は、今はされていないと思う。ただ煙道体験を行うとき、本校でもハンカチで口を押さえる指導を行っている。

 国崎氏は、こう主張する。

◆問題は、ハンカチやタオルの効果について新しい知見が蓄積されぬまま、保育園や学校で指導されていることです。
防災先進国として園や学校に高性能な防煙マスクの装備が標準化されてもおかしくないのに、過去に得たわずかな知見にすがり指導内容や防災設備が進化していないことを憂慮します。◆

・・・「過去に得た知見にすがり」という部分に、教師と言う仕事の責任の重さを痛感した。
よく医者を引き合いに出して、最先端の知見をきちんと学ぶことの重要さが指摘される。
最先端の知識を学ばない医者に診てもらおうなどとは誰も思わない。

 「過去に得たわずかな知見にすがり指導内容が進化していないことを憂慮します」という批判を受け、学校不信の引き金にならないよう、常に学び続けねばと思う。

| | Comments (13) | TrackBack (0)

« August 2012 | Main | November 2012 »