「一つの花」の題名の理由は?
▼なぜ「一つの花」という題名がついているのでしょうか。話し合って考えましょう。
という課題が教科書の手引にある。
題名について、指導書に次の記載がある。
※正解がある問いではない。これまでの学習を振り返りながら、理由とともに自分なりの考えを発言させたい。
友達の考えを聞くうちに考えは深まっていくので、なるべく多くの児童に発言させるとよい。
場合によってはグループで話し合わせてもよい。
「正解がある問いではない」なんて言いきってよいものだろうか。
「正解がある問いではない」とは書いてあるが「誤答がある問いではない」とは書いていない。
わたしは、誤答や不十分な解答はあると思う。
それにしても「一つの花」の題名の意味について、子どもたちはどんな解釈を出すのだろう。
どのような解釈を望めばよいのだろう。
そして、教師自身は、どのような解釈をもつべきなのだろう。
○すごく印象に残るから
○目立つから
○すごく大事な言葉だから
などと、子どもは書きがちである。
しかし、これでは中身がないので×とする。
どう印象に残るのか、なぜ目立たせたいのか、どんな点で大事なのかまで語らせたいと意味がない。
そこで、「印象に残る」「すごく大事」が末尾にくるように、理由を想定してみた。
今回、がんばって10個。
①お父さんが、戦争に行く前にゆみ子にあげたものだから(すごく印象に残る・すごく大事)
②お父さんは、これぐらいしか満足にあげられないからとゆみ子にあげたものだから(すごく印象に残る・すごく大事)
③戦争中、食べ物以外でゆみ子を喜ばすことのできたものだから(すごく印象に残る・すごく大事)
④食べ物をほしがったゆみ子を喜ばすために、食べ物でない「一つの花」をあげることしかできなかった父親の悲しみが伝わってくるから(すごく印象に残る・すごく大事)
⑤食べ物をほしがったゆみ子が、食べ物でない「一つの花」をもらって喜んでいる姿が不憫で、戦争の悲惨さや父親の無念さが伝わってくるから(すごく印象に残る・すごく大事)
⑥「一つの花」が、やがてたくさんの花になったように、ゆみ子にも大きく育ってほしいという父親の願いがこもっているから(すごく印象に残るい・すごく大事)
⑦戦争中の「一つの花」が、戦後、たくさんの花になったから(すごく印象に残る・すごく大事)
⑧戦争中の物不足の中で、「一つの花」だけは手に入れることができたから(すごく印象に残る・すごく大事)
⑨戦争の悲惨さ(物不足)を「一つの花」が象徴しているから(すごく印象に残る・すごく大事)
⑩戦争中の「一つの花」と、戦後の「たくさんの花」という対比構造は、戦争中の不幸な時代と、戦後の平和な時代の対比構造と一致しいる。「一つの花」は、戦争の悲惨さと父親の愛情をを象徴する大切なキーワードだから。(すごく印象に残る・すごく大事)
①から⑦は「キーワード」の概念を根拠にした解答である。
とはいえ「『一つの花』がこの作品のキーワードだから題名になっている」では意味がない。
なぜキーワードになっているかを説明もしないで「キ―ワードだからです」では理由にならない。そこを言わせる授業展開こそが望まれる。
⑨⑩は「象徴」を根拠にした解答である。
⑩には対比概念も加わっている。
⑩は私自身のめいっぱいの解答である。
「象徴」の指導が無理だと思うなら、⑨⑩は期待できない。
「戦争の悲惨さを代表している」というように「象徴」みたいな概念を伝えようとしている意見が出たら「それが『象徴』だ」と説明すればよい。
それにしても「なぜ『一つの花』という題名がついているのでしょうか」という課題もつまらないなあと思う。
ほかの物語で、わざわざ題名の理由を問うものは少ないし、聞かれても答えに困るものが多い。
作品のキーワードに着目させているのだとも言えるが、子どもからどんな意見が出るか分からないけれど「とりあえず発問」をしているような安易さを感じてしまう。いずれにしても、子どもにとっては答えにくい課題であることを教師は自覚すべきである。
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