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August 06, 2013

いじめの原因も対策も「同調圧力」

国立教育研究所の調査結果の記事があった。


いじめ、小学生の9割弱が被害・加害ともに経験 国立教育研 2013/8/5 20:55

 国立教育政策研究所は5日、首都圏の小中学生を対象に行った調査で、小学生では仲間外れ、無視、陰口といった「いじめ」を受けたことがある児童と加えたことがある児童がともに9割近くに上ったと発表した。「
調査担当者は「こうした暴力を伴わないいじめを、子供たちが日常的に経験していることが裏付けられた」としている。
 同研究所は2010~12年、首都圏のある市の小学校13校と中学校6校で、10年度に小学4年と中学1年だった児童生徒計約4600人を対象に追跡調査を実施。
毎年6月と11月にアンケートを行い、経年変化を分析した。
 10年度当時に小学4年生だった約700人のうち、小6の11月時点までに「仲間外れ、無視、陰口」の被害を一度でも受けた経験があると回答した児童は87%に上った。
6回の調査でいずれも「ぜんぜんなかった」とした児童は13%にとどまった。
 「仲間外れ、無視、陰口」の加害経験が一回でもあると答えた児童は86%。加害経験がないとした児童は14%だった。
 07~09年に実施した前回調査では小学生の被害経験は79%、加害経験は77%だった。
 10年度当時に中学1年生だった生徒の調査では、「仲間外れ、無視、陰口」の被害を一度でも受けたことのあるとした生徒は71%。加害経験があるとした生徒は72%だった。
 中学生については「ひどくぶつかる・たたく・蹴る」といった暴力についても調査し、被害を受けたとした生徒は41%、加害経験があるとした生徒は30%だった。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0503F_V00C13A8CR8000/

  この調査結果に対するコメントは難しい。
 「多少の仲間外れ、無視、陰口は誰もがやっている」と断じてしまうと、だから「いじめられている子も我慢せよ」ということになりかねない。
 仲間外れ、無視、陰口については、本人の受け止め方は千差万別だ。
 苦痛を感じている子に「お前は大げさだ」「みんな我慢している」という権利は誰にもない。
 それに、この調査で問うた「いじめ」の度合いも、この記事だけでは、よく分からない。
 苦痛を伴うような「仲間外れ、無視、陰口」に限定しているのか、ふざけ合い程度のものも含まれているのか。
 
 たとえば、

◆自分は深刻ないじめの加害者である。でも自分だって軽いノリのいじめはいつも受けている。だから、自分は悪くない。お互い様だ ◆

という言い訳をもたらすのだとしたら、加害も被害も双方9割と言う数値の意味があいまいになってしまう。
 
 それにしても、加害者9割と言う数値は、「仲間外れ、無視、陰口」をしたことを平然と口にできる雰囲気があることを示す。
 もし、その行為にやましさを感じていれば、いくらアンケートだって「イエス」とは答えないはずだ。
 「仲間外れ、無視、陰口」なんて当たり前という感覚が、すでに危険なのだと私は思う。

 さて、藤川大祐氏の『いじめで子どもが壊れる前に』(角川新書)では、同質原理(homophily)という言葉を用い、「集団の中で価値観や態度が類似であることが求められる」と解説している。
 「みんながやっているから自分もやる」の空気である。

 これもよく似た概念で、「いじめ」の背景として、「同調圧力・同調行動」はよく用いられる。

◆同調圧力(どうちょうあつりょく 英: Peer pressure)とは、職場などある特定のピアグループ(英: Peer group )において意思決定を行う際に、少数意見を有する者に対して暗黙のうちに多数意見に合わせることを強制することを指す。

 同調圧力・同調現象は、あまりよい意味では使われないようだ。
 しかし、斉藤孝氏の『若者の取扱説明書』(PHP新書)では、この同調圧力=「周囲がやっているから自分もやらなきゃ」を若者を動かすためにプラスに利用している。

◆集団の中にいる彼らにとって最大の恐怖は、自分一人だけ浮いたり、さぼっていると見られることだ。
もともと叱られることに慣れていないし、恥もかきたくない。
「取り残されてもいいのか」若者は自分だけ取り残されることを極度に嫌う。P24

◆友人ががんばっていれば自分もがんばるし、仲間の多くがクリアしたことは自分もやらなければまずいと考える。
つまり、「先生にどう評価されるか」は原動力にならないが、「周囲がどう動いているか」によって自分の動き方も変わるわけだ、
だから、先に述べた”同調圧力”が効くのである P117

・・・マイナスをプラスに変えて人を動かす方法を考える斉藤氏はさすがだと思う。マイナスを嘆くのは簡単だが、嘆いたところで事態はよくならないからだ。

 「いじめ」についても同じだ。
 いじめをやって当たり前の雰囲気があれば、「同調圧力」によって、いじめが蔓延する。
 しかし、やらなくて当たり前・やらないのが当たり前の雰囲気が強くなれば、「同調圧力」によって、いじめは回避できる。
 いかに多数派をこちらに仕向けていくかが、教師の指導なのである。

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