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May 11, 2014

学力状況調査(小学校国語)の悪問

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 学力状況調査(小学校国語)を実際に解いてみて、今回一番難しかったのは、Bの2番。
 ゾウの鼻についての疑問と気づきの問題だ。
 原田さんの疑問を参考に、野口さんの疑問を書く。
 野口さんのまとめを参考に、原田さんのまとめを書く。

 いわゆる「類推」の問題である。

 野口さんの問いは「ゾウの長い鼻はにおいを感じ取ることができるのか」
 では、原田さんの問いが何なのかを考える。

 原田さんの気づきのふせん内容①②③から、問いを考えるというのは、大変面白い問題だ。

①鼻は、今よりも短かったが、体がだんだんと大型化し、口が地面からはなれていったようだ。

②鼻と上くちびるいっしょに長くのびていったことで、頭を下げなくても草や水を口に運ぶことができるようになったようだ。

③長い鼻を使うことで、できること(食べ物をつかむ、水をすいあげて飲む、水浴び、あいさつ)

・・・しかし、ここから問いを特定するのは難しい。

 ①から予想される問いは「ゾウの鼻は、なぜ(いつから)大きくなっていったのか」。

 ②から予想される問いは「ゾウの鼻が長いことの利点は何か」
 ③から予想される問いは「ゾウの鼻が長いことの利点は何か」

 ②③からは同じ問いが予想できるが、①が異質である。
 どうにも①②③から共通の問いが作れない。
 あえて作れば、結局、設問に出てくる「ゾウの鼻はどうして長いのでしょうか」になってしまう。設問にある問いをそのまま抜き出して使ってよいとは到底思えない。

 さて、先日配付された解説資料を見て驚いた。
 正答例を見ると、問いが2つある。

◆ゾウの鼻はなぜ長いのか、また、長い鼻を使うことでどのようなことができるのか。
◆ゾウの鼻が長い理由と鼻の役目は何か

 しかし、この正答は出ない。
 なぜなら、問いの目安(ヒント)となる野口さんの問いが、「ゾウの長い鼻はにおいを感じ取ることができるのか」の1つの問いだからだ。
 この問題の構造を読み取り、野口さんの問いと正対した問いを書かなければと思った子は、まさか2つの問いを入れてよいとは思わない。
 ①②③のふせんの共通点を懸命に探して問いを考えいるのだ。
 まさか①②③の共通点を考えずに、複数の問いを挙げてよいとは、びっくりである。
 
 また、正答例によれば、次の問いでもよいとある。

◆ゾウの鼻はどうして長いのだろうか

この正答も出ない。
 先に書いたように、既に設問に「ゾウの鼻はどうして長いのでしょうか」と書いてあるのだ。
 まさか、文中にある問いをそのまま引用してよいなどとは誰も思わない。

 この問題は、誠実に問いに対応した高レベルの子ほど「無回答」の形で正答を逃す可能性が高い。
 悪問だと言わざるをえない。

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学力状況調査の問題のL方型マトリックス

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今年度の学力状況調査問題(小学校国語)で、一番印象に残っているのは、A問題の7だった。

「情報を関連付ける」というねらいで、図のような表を提示していた。
これは、2つの事象を関連付けた、L型マトリックスと呼ばれる図である。

http://blog.isovocabulary.com/03_qc/post_184/
では、マトリックス図について、次のように解説している。

==========
問題を明確化する方法として、行に属する事象と列に属する事象により構成される二次元的な表に着目して、以下のような手法として用いられます。
* 表の配列から問題の所在や問題の形態を探る
* 表の配列から問題解決のための着想を得る
===========

 登場人物の行動と心情
 人物Aと人物Bの比較
など、教科書の手引きでよく提示されるのは、上下に仕切ってまとめる表だから、一次元の思考整理。
 討論は、むしろ一次元で行わないと、論点がずれてしまう。

 上下にまとさせるだけでも大変だと思ったら、L型マトリックスによる二次元の思考整理まで文科省は望んでいるということか。

 マトリックスには示せないが、縦横で仕切った4ますをイメージしてください。

(1)今回の学力状況調査の「人数」と「難易度」の掛け合わせ

 A:多人数で遊べ、しかも容易な遊び
 B:多人数で遊べるが、難しい遊び
 C:少人数しか遊べないが、容易な遊び
 D:少人数でしかも難しい遊び


(2)「海の命」の太一の心境
  「父の復讐」と「与吉じいさの教え」の掛け合わせ。
  Aが難しいから、BをとるかCをとるかで葛藤していることになるか、

A:父の復讐を果たし、与吉じいさの教えも守りたい
 B:父の復讐を果たせなくても、与吉じいさの教えを守りたい
 C:父の復讐は果たすが、与吉じいさの教えを破ってしまう
 D:父の復讐も果たせず、与吉じいさの教えも守らない 

(3)「ごんぎつね」の「ごん」の行動
 「つぐない」と「ばれたら殺される」の掛け合わせで、

 A:殺されることなく、つぐないを果たしたいが、
 B:「殺されてもいいから、つぐないを果たす」か
 C:「殺されるのを恐れて、つぐないをやめるか」で迷っていると言えるだろうか。

 もちろん、D:「殺されて、つぐないもできない」では悲しすぎる。
 
 「ごんぎつね」の場合は、「ごんは兵十に気づいてほしかったのか」という一次元思考でよいのかもしれないが・・。
 

 実際の教科書教材で、L型マトリックスがどう使えるかを考えてみたい

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May 06, 2014

JTB遠足の事件は他人ごとではない

 高校の遠足のためにバスの手配を忘れた旅行会社の社員が狂言自殺を企てた事件があった。
 社員は、偽計業務妨害容疑で逮捕された。

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 2014年5月5日(月)22時18分配信 共同通信
 JTB中部の男性社員が岐阜県立東濃高校の遠足に使うバスの手配を忘れた問題で、岐阜県警は5日、同校の生徒を装い、自殺を示唆して遠足の中止を求める手紙を届けて学校の業務を妨害したとして、偽計業務妨害容疑で、多治見支店の社員だった城谷慧容疑者(30)=名古屋市千種区=を逮捕した。
城谷容疑者は同日付で懲戒解雇された。
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/kyodo-2014050501001822/1.htm
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 ことの起こりは、以下のニュースで報じられている。

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2014年5月1日(木)14時45分配信 リアルライブ

 大手旅行会社JTB中部(愛知県名古屋市)多治見支店の男性社員(30)が、岐阜県立東濃高校(同県御嵩町)の遠足バスの手配漏れを隠すため、生徒を装って自殺をほのめかす手紙を同校に届けるという前代未聞のトラブルが発生した。
 遠足は25日に予定されていたが、24日に手配漏れに気付いた社員が、自身のミス発覚を防ぐため、生徒の自殺騒動で遠足を中止させることを画策した。
 同日午後4時頃、社員は学校を訪れ、「学校の玄関のポストのそばに落ちていました」と、職員室に自身で作った手紙を届けた。その手紙には、「遠足に行きたくない。遠足に行くのは、死ぬよりしんどい。明日、遠足するなら私は消えます。先輩の遠足も後輩の遠足も中止してほしい」と書かれていた。
 慌てた学校側は、全校生徒317人の安否確認を実施。県警可児署にも相談した。しかし、様子がおかしい生徒は見当たらなかったため、学校は予定通り遠足を実施することを決めた。
 遠足当日の25日午前8時。当然のことながら、来るはずの11台のバスは来ず、遠足に向かうことはできなかった。
 同社で調査したところ、社員の手配漏れが発覚し、「ばれないように遠足を中止させようと考え、生徒を装って手紙を書いて届けた」と話し、泣きながら謝罪したという。

http://news.nifty.com/cs/domestic/societydetail/rl-20140501-20261/1.htm
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 なんとまあ、愚かな行為だと思う。
 しかし、とんでもないミスをしでかして、隠そうと画策する気持ちは分からないではない。
 自分もいつどこでとんでもないミスをするかと思うと、同情しないわけにはいかない。

 朝のテレビ番組「ドデスカ」で、ジャーナリストの大谷昭宏氏が
「自分も寝過ごして起きたら事件が終わっていたことがあった。飛び降りたくなった」と話し、
アナウンサーは「私は、起きたら自分の番組が始まっていた」という失態を告白していた(と記憶している)。

 誰にだって失敗はある。
 だからこそ、そのような失敗談を話す雰囲気が会社にも必要なのだといった論調だった。
 同感だ。
 
 誰にもとんでもない失敗や失態はある。
 それを乗り越えて大人になっていく。
 過去は消えないのだから、ごまかせるものではない。
 ごまかしの嘘は新たな嘘を呼ぶ。
 失敗を受け止めて打開するしかない。

 ネットを見ると、次のような同情論もあった。

◆◆◆
ミスをウソで隠そうとしても泥沼に陥るだけ――。今回の事件は、そのことをあらためて思い知らせてくれました。
ただ、大人にとって仕事でミスをしてしまうこと自体は、他人事ではありません。
誰しもウソで隠したい誘惑にかられたり、小さなウソをついてしまったりした覚えはあるはず。
このアホな社員を反面教師に、ミスをしたときの大人のリカバリーについて考えてみましょう。
前日の段階で「あっ! バスの手配してない!」と気づいたとき、この社員はどうすればよかったのか。
ひとりで抱え込んでしまったのが、最大にして根本的な失敗です。
上司をはじめ周囲に「絶体絶命のピンチ」ということを知らせて、力を貸してもらう体制を作る必要がありました。
みんなの前で土下座のひとつもすれば、めちゃくちゃ怒られはするでしょうけど、誰かのつながりのあるバス会社に無理を聞いてもらえた可能性もゼロではなかったはず。
学校でも校長先生に土下座して、すべて話した上で対応策をいっしょに考えることもできたでしょう。
ただ、その社員は言い出す勇気を振り絞れず、ダメな方向に知恵を絞ってしまいました
。大人としてあらためて学びたいのが、「弱味を見せられる大人は強い」という教訓。
その社員がどういうタイプだったかはわかりませんが、常に完璧を目指していたりカッコイイ自分を見せようとしたりしていると、イザという場面で弱味を見せられません。
重大なミスをしてしまった場面で、弱味を見せることで事態が泥沼に陥るのを防ぐために、日頃から「弱味を見せる練習」をしておきましょう。
朝、出勤したら同僚に「あーあ、昨日も中折れしちゃったよ!」とダメな自分をさらけ出し、上司には「取引先に打ち合わせに行ったんですけど、担当者のミニスカートが気になって、何を話したかまったく覚えていません。アハハ」と、ありのままを報告します。
日々、そういった訓練を重ねれば、弱味を見せることが平気になること請け合い。
ただ、トホホな弱味を見せてばかりいると、重大なミスをする以前に、責任のある仕事から外されるかもしれませんけど。
今回の事件で唯一救いがあるとしたら、気の毒な目にあった生徒たちが、「ああいう大人になってはいけない」「ミスをごまかそうとしたらろくなことにはならない」と身を持って知ってくれたこと。
学校側は仕切り直しの遠足を近いうちに実施したいと言っています
生徒たちはもう十分に、たくさんのことを学びました。
まさかとは思いますが、ひとりの先生がわざと遅刻して出発が5分遅れて、全校生徒の前で土下座することで大事なことをさらに念入りに学んでもらう……といった類の配慮は不要かと存じます。
いや、ダチョウ倶楽部的な意味で逆にオススメしているわけでは、けっしてありません。
気分一新、災い転じて福となすで、楽しく有意義な遠足になりますように。

http://news.nifty.com/cs/item/detail/postseven-20140503-254842/1.htm
◆◆◆

 今回の事件は、大きなミスが起きたときに、個人として・集団としてどう対処するかを考えさせられた。

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