日本の資本主義繁栄の秘密
中日新聞夕刊に梅原猛氏の連載「思うままに」がある。
6月2日は経済発展と仏教思想を重ねたものだった。
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なぜ日本で資本主義が高度に発達したのか。
それは、日本が大乗仏教の国であったゆえではなかろうか。
中国や韓国は仏教国とはいえず、儒教国といってよかろう。
とすれば、なぜ儒教の影響の強い中国や韓国で資本主義の発達が遅れ、仏教国日本で資本主義がいち早く発達したかという疑問が生じる。
しかし、だからこそ答えは甚だ明らかである。
大乗仏教は自利利他を根本精神とする。
経営者は利益を上げることによって、自らを利するとともに他人をも利するのである。マルクスは、資本主義社会においては経営者が富を独占しているというが、そのような経営者は甚だ特殊な人間であろう。ほとんどの経営者は自らが利益を得るとともに、その利益を労働者ばかりか社会にも還元しようとする。日本ではこのような自利利他を最高の道徳理念とする大乗仏教の教えによって、資本主義が発達したというべきであろう。
(中略)
経営者というのは、大乗仏教の自利利他の行を行う人であらねばならないであろう。
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・・・トヨタは自動織機で得た特許の利益を、国産自動車開発に注ぎ込んだ。
国産自動車開発は、トヨタという一企業の利益のためではなく、日本国家繁栄のためであった。
トヨタと同様に日本の経済発展に寄与した松下電器。
「松下電器」には、「遵奉すべき精神」と呼ばれる七か条がある。
http://panasonic.co.jp/company/philosophy/conduct/03.html
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一、産業報国の精神
産業報国は当社綱領に示す処にして我等産業人たるものは本精神を第一義とせざるべからず
一、公明正大の精神
公明正大は人間処世の大本にして如何に学識才能を有するも此の精神なきものは以て範とするに足らず
一、和親一致の精神
和親一致は既に当社信条に掲ぐる処個々に如何なる優秀の人材を聚むるも此の精神に欠くるあらば所謂、烏合の衆にして何等の力なし
一、力闘向上の精神
我等使命の達成には徹底的力闘こそ唯一の要諦にして真の平和も向上も此の精神なくては贏(か)ち得られざるべし
一、礼節謙譲の精神
人にして礼節を紊(みだ)り謙譲の心なくんば社会の秩序は整わざるべし正しき礼儀と謙譲の徳の存する処社会を情操的に美化せしめ以て潤いある人生を現出し得るものなり
一、順応同化の精神
進歩発達は自然の摂理に順応同化するにあらざれば得難し社会の大勢に即せず人為に偏(へん)する如きにては決して成功は望み得ざるべし
一、感謝報恩の精神
感謝報恩の念は吾人(ごじん)に無限の悦びと活力を与うるものにして此の念深き処如何なる艱難(かんなん)をも克服するを得真の幸福を招来する根源となるものなり
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・・・全文理解できるわけではないが、すばらしい七か条だと思う。
企業理念の中には、次の項目もある。
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企業は社会の公器
その意味では、私たちの会社は私企業であっても、事業には社会的責任があります。
私たちは、「企業は社会の公器」との理念のもと、その責任を自覚し全うしなければなりません。
さらに、さまざまなステークホルダーとの対話を通じて、透明性の高い事業活動を心がけ、そして説明責任を果たします。そのために、私たちは、常に公正かつ正直な行動をスピーディーに行うよう努めます。
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・・・近江商人の思想にも同じものがある。
○「売り手よし、買い手よし、世間よし」
○「利真於勤」
利益はその任務に懸命に努力した結果に対する「おこぼれ」に過ぎないという考え方であり、営利至上主義の諫め。
○陰徳善事
人知れず善い行いをすることを言い表したもの。自己顕示や見返りを期待せず人のために尽くすこと。
西洋の「功利主義」も、最大多数の幸福を追求する立場である。
宗教的な戒律かどうかは別として、「人様のために尽くす」という発想は世界にある。
あえて「日本人の美徳」でくくる必要はない。
他者の喜び・他者の幸せを願う人間本来の精神をしっかり追求していきたい。
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