算数の系統的な指導を学ぶ
珍しく算数の話題。
教育出版が出している「教育情報シリーズ」というファイルが学校にある。
No121は「教師力アップへの道 文章題に強い子どもを育てる」8ページの資料だ。
これは、とても興味深かった。何か所か引用しながら、コメントを述べる。
◆計算などはできるが文章題(知能や技能、考え方を活用して解決するテキストで示された問題)は苦手である。これは、小・中学校における一般的な傾向である。この状況を少しでも改善し、文章題に強い子どもにするための方策を探る。
・・なるほど。確かに算数の点差が開くのは文章題だ。A問題よりB問題の方が正解率が低いのは、B問題は、計算力+アルファの力が求められるからだ。そこで、私などは、国語の読み取りの力が、文章題を解くのに大きな影響をもつと考えてきたのだが、それは、以下の指摘で否定された。
◆文章題の解決が思うように進められない子どもの原因を「国語の読解力がない」と、いとも簡単に断定する教師が少なくない。これは、ことの本質を曖昧にする判断である。算数・数学科の文章や文章題の表現ほど、美や感情の省略された単純で簡潔なものはない。
国語的な読解ではなく、文章題としての読み取り方を、下記のような事柄について発達段階に即して丁寧に指導していくことが重要である。
・・・ なるほど、算数の文章問題の読み取りの力を、国語の力(論理的思考力)ととらえてきたが、数学的な思考は異質なものだということか。
続いて、文章題としての読み取り方(「問題の理解」の指導過程)について、次のような学習活動を提示している。
①場面や情景の理解
どのような場面かを捉えるように意識させる
②求答事項の確認
「何を聞いていますか?」「聞かれていることは何ですか?」
③既知事項の確認
「この問題から分かることは何ですか?」
④条件の理解(確認)
文章の中に示された条件を見付けさせる。
「全部~するとしたら」「このままどうかするとしたら~」など。
⑤必要な既習事項の想起
文章題は、そこに記述されている求答事項や既知事項、条件を明らかにしただけで解決できるとは限らない。
(中略)問題文に記述されていない既習事項の活用しなければならない場合が多くなってくる。
留意点
・②→③の順に行う。多くの教師が②よりも③を先行して「この問題から分かることは何ですか?」としているが、これは大きな間違いである。 このことは、一般的に考えて目的が分からないのに準備をすることができないことから容易に理解できる。 求答事項を明らかにするために、この問題から分かることを取り出すのである。
・文章題の文中に、②③④などを記号化して指摘すると効果的である。
・・・なるほど、なるほど。①②③④のステップ(指導の言葉)は、基本中の基本である、自分が知るだけでなく、もっともっと広げていきたい。ほかにも「既習事項の活用の類型」などが、次のように整理されていて、とてもすっきりした。
①既習事項をそのまま活用する。
②いくつかの既習事項を組み合わせて活用する
③既習事項の発想をそのまま活用する
④既習事項に帰着させる
⑤既習事項から類推する
・・・「特に次の2項目は、常日ごろ気を付けたい指導事項である。意図的に改行して箇条書きで提示する。
◆文章題を分かっていることに言い換えてみる。
①文章題が複雑な構文で表現されているときは、簡単な構文に言い換えてみる。
②条件がいくつもある場合には、1つの場合、2つの場合と単純化してみる。
③小数や分数で表されているために分かりにくければ整数で表してみる。
④関係が見つけにくければ小さな数に置き換えてきまりを見つけやすくする。
◆分かっていると仮定してみる。
解決の見通しが立てにくい場合や、演算決定ができない場合に、未知の部分を分かったものとして□やxなど記号や文字で表すと、解決の手がかりの得られることがある。
・・・さらに、「演算決定ができない場合」には、次のような具体的な手立てを子どもにもたせるようにと解説がある。これも、意図的に改行・改変して箇条書きで提示する。
◆演算決定するためには、次のような具体的な手立てを子どもにもたせる。
①キーワードに注目する。
②言葉の式や公式に当てはめる。
③数直線など図で問題の構造を捉える。
④数値を簡単にしてみる
⑤似た問題を思い出すなど。
・・・問題作りをさせて、意味や構造を具体的に理解させることも大切であるとの指摘もある。 時間に余裕があったら「問題作り」をするというスタンスではなく、最初から、意図的に「問題作り」の取り組み時間を確保しなくてはいけないのだということだ。。
また、以下の具体的な指摘もありがたかった。算数・数学の系統性に関する深い教材分析が必要だとつくづく感じた。
※整数の四則計算のきまりは、小数や分数にも使えることを類推する。
※平行四辺形の求積は、長方形の求め方に帰着させると求められる。台形は長方形・平行四辺形・三角形の求め方に帰着させると求められる。
※合同な三角形の描き方を類推すれば、拡大図や縮図の作図を考えることができる。
※複合図形の面積も、既習の長方形と正方形に分ければ解ける。この発想を類推すれば、複合体積も直方体と立方体の組み合わせで考える。
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