太陽光発電だけでは、日本の電力危機を救えない
再生エネルギーの買取り中断のニュースが話題になっている。
たとえば産経新聞9月29日のコラム記事より抜粋。
◆再生エネによる発電設備は、一昨年7月の制度開始から今年3月末までに、約900万キロワット分の稼働が始まった。このうち9割超を太陽光発電が占める。とくに九州は土地が比較的安く、日照時間が長いこともあり、九電に太陽光発電の買い取り申請が集中した。
だが、太陽光は天候や昼夜の発電量の差が大きく、安定性に欠ける。これを大量に受け入れると、周波数が乱れて電気の質が下がったり、停電が起きたりする恐れもあるという。
http://www.sankei.com/column/news/140929/clm1409290002-n1.html
東京新聞9月30日夕刊のネット記事からも抜粋
◆太陽光や風力による発電は昼夜や天候によって発電量が大きく変わる。発電量が一時的に需要を上回る可能性がある一方、雨天や風のない日には急激に減る。このため電力が余った場合は、ほかの電力会社に流したり、蓄電池に充電して夜間に送電したりするなど、電力を安定させるための調整が必要になる。しかし、送電網の整備や蓄電池の開発などの対応が遅れている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014093002000269.html
このような報道を受けて、「供給量を上回るなら、もう原発も要らないじゃないか」という意見がある。
すでに「原発10基分の電気が確保できてる」という意見もテレビで耳にした。
しかも、全国一斉に快晴となる日がありえない以上、原発10基分の電力が確保できるのは1年に一瞬もないはずだ。
太陽光発電は、必要な時に必要な電力量を確保しようにも、まさにお天気次第である。
もちろん、誰でも分かるように、太陽光は夜の発電量がゼロである。
10月17日の東京新聞の記事にも「すべて受け入れると最大で~夏のピーク時の電力を上回る」とあるが、このベストな出力が本当に出せるのだろうか。
◆九州電は、経産省が認定した太陽光発電の設備をすべて受け入れると出力が最大で一千八百万キロワットになる計算になり、夏のピーク時の電力を上回るほか需要の低い春や秋に必要な電力(約八百万キロワット)の二倍になる。
九州電によると、昼間に余った電力でポンプを動かしダムに水をためて夜間に水力発電する「揚水発電」を利用するなどしても、余った電力を逃がせず送電が不安定になり、大規模な停電が起きる可能性があるという。このため九州電は各社より六日早い九月二十四日に中断を発表した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014101702000136.html
・・・昼間の余った電力が、どの程度、揚力発電に利用できるのかは定かでない。
蓄電池の開発が進まない限り、これ以上「太陽光発電」の受け入れは難しい。
0..1秒の停電があっても莫大な損失が起こる。日本の工業生産は、不安定な電力供給事情の元では成り立たない。
ちなみに、「再生エネ受け入れ量試算へ 原発再稼働を盛り込む恐れ」という10月17日の見出しは作為的である。
◆「原発が稼働するので再生エネは受け入れられない」といった電力会社側に都合のいい試算が示される可能性がある。
◆国と電力会社は原発について、昼夜を問わず常に一定の出力で稼働する「ベースロード電源」と位置付けており、稼働を見込めば再生エネを受け入れる余地は狭まる。電力会社側は「再生エネを受け入れると、送電網に多くの電気が流れすぎ、トラブルが起きる恐れがある」と主張できる。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014101702000141.html
「発電量が一時的に需要を上回る可能性がある一方、雨天や風のない日には急激に減る」事実は間違いないのだから、太陽光発電のみ進めようとした政策誘導に問題がある。
しかし、だからといって、「太陽光発電は不安定だから、原発がどうしても必要」とは言わない。安定供給は火力発電でも可能なはずだ。
まずは、太陽光エネルギーだけでは不十分だという事実を合意して、次のエネルギー政策を進める(見届ける)べきなのだ。
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