11月20日 文部科学大臣下村博文氏の名前で中央教育審議会「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」が出された。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1353440.htm
なるほど、次期指導要領に向けて、いろいろ書いてある。
◆特に学力については,学校教育法第三十条第二項に示された「基礎的な知識及び技能」,「これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力」及び「主体的に学習に取り組む態度」の,いわゆる学力の三要素から構成される「確かな学力」をバランス良く育てることを目指し,教育目標や内容が見直されるとともに,学級やグループで話し合い発表し合うなどの言語活動や,各教科等における探究的な学習活動等を重視することとされたところです。
◆新しい時代に必要となる資質・能力の育成に関連して,これまでも,例えば,OECDが提唱するキー・コンピテンシーの育成に関する取組や,論理的思考力や表現力,探究心等を備えた人間育成を目指す国際バカロレアのカリキュラム,ユネスコが提唱する持続可能な開発のための教育(ESD)などの取組が実施されています。
◆そのために必要な力を子供たちに育むためには,「何を教えるか」という知識の質や量の改善はもちろんのこと,「どのように学ぶか」という,学びの質や深まりを重視することが必要であり,課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)や,そのための指導の方法等を充実させていく必要があります。
◆育成すべき資質・能力を確実に育むための学習・指導方法はどうあるべきか。その際,特に,現行学習指導要領で示されている言語活動や探究的な学習活動,社会とのつながりをより意識した体験的な活動等の成果や,ICTを活用した指導の現状等を踏まえつつ,今後の「アクティブ・ラーニング」の具体的な在り方についてどのように考えるか。また,そうした学びを充実させていくため,学習指導要領等において学習・指導方法をどのように教育内容と関連付けて示していくべきか。
◆育成すべき資質・能力を子供たちに確実に育む観点から,学習評価の在り方についてどのような改善が必要か。その際,特に,「アクティブ・ラーニング」等のプロセスを通じて表れる子供たちの学習成果をどのような方法で把握し,評価していくことができるか。
・・・意図的に抜粋したが、新聞報道では「アクティブラーニング」が話題の中心になっていた。
【アクティブ・ラーニング】
教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2012/10/04/1325048_3.pdf
中央教育審議会(2012年8月28日)の報告書は次のようにあったそうだ。
◆「生涯にわたって学び続ける力、主体的に考える力を持った人材は、学生からみて受動的な教育の場では育成することができない。
従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である。すなわち個々の学生の認知的、倫理的、社会的能力を引き出し、それを鍛えるディスカッションやディベー トといった双方向の講義、演習、実験、実習や実技等を中心とした授業への転換によって、学生の主体的な学修を促す質の高い学士課程教育を進 めることが求められる。学生は主体的な学修の体験を重ねてこそ、生涯学び続ける力を修得できるのである」
【出典】『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)』
平成24年8月28日中央教育審議会
・・・ただ、「アクティブ・ラーニング」は、もともと大学教育の提言であった。
たとえば、産業能率大学のPR。
◆本学では、かねてより「一人ひとりの学生を社会人として着実に育てる」ことを目的に、授業をつくってきました。現実社会を想定したグループワークやプレゼンテーションによる学習、企業とのコラボレーションなどは、その一例です。このように長年にわたり、本学が独自に培ってきたスタイルが、新しい時代にふさわしい学習方法として教育界の注目を集めています。
http://www.sanno.ac.jp/exam/learn/active/info.html
たとえば、河合塾の調査PR。
◆「学習者中心の教育」の鍵を握るのが「アクティブラーニング」という授業形態です。アクティブラーニングとは「能動的な学習」のことで、授業者が一方的に知識伝達を行う講義スタイルではなく、課題研究やPBL(project/problem based learning)、ディスカッション、プレゼンテーションなど、学生の能動的な学習を取り入れた授業形態のことを指します。アクティブラーニングを授業に取り入れることで、専門知識の定着とその活用力を涵養させ、またその学習プロセスを通してスキル・態度などの汎用的技能(ジェネリック・スキル)も育成するような効果が認められています。
http://www.kawaijuku.jp/research/activelearning/index.html#activelearning01
高校向けの冊子もあった。
◆近年、大学では「アクティブ・ラーニング」と総称される学習スタイルが盛んに導入されている。(中略)
また、「アクティブ・ラーニング」は主に高等教育の場で用いられる用語だが、それに総称される学習スタイルは、高校でも各教科および総合的な学習の時間の中で行われている
http://www.keinet.ne.jp/gl/10/11/kaikaku_1011.pdf
ただし、この冊子には、次の指摘もある。
◆しかし現状は、学生にただ、座学以外の活動をさせているに留まっている例が少なからず見られます。そのような知にこだわらないアクティブ・ラーニングは、浅薄なものにしかなりません。
・・・大学でも小・中・高校でも、「活動あって指導なし」の危険をはらむことは同じだ。
問題解決学習と同じだ。
「大学教育のあるべき姿」と言われるような学習形態を小学校に持ち込むのは「基礎段階の相手に活用させる」ことになる。
またまた、「活動あって、指導なし」の「はいまわる経験主義」の復活になるのではないだろうか。
それでも、この風潮を「学び合い」が追い風にでもしたら、困ったものである。
注
『生活科の学習の成立と評価』(日本教育新聞社)より抜粋引用
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教師中心主義を批判する立場で戦後に展開されたのが、アメリカの経験主義教育論を理論的背景とした児童中心主義の教育であった。
ここでは、それまでの教師中心の授業に対して、あまりに実生活からかけはなれ、子どもたちの興味・関心を軽視していた点を指摘されたのである。
そして、学習は、「生活により経験から学ぶ」ものであり、「為すことにより学ぶ」ことであるとされ、子どもの経験や興味・関心を根底とした自発的な活動が重視されたのであった。
しかし、この時期、教師による一方的な知識注入を指摘することは正解であったものの、それがあまりに子どもの興味関心や身近な生活経験を重んずるあまりその反動として教師の指導的役割が軽視されることとなった。それが後には、世間一般より、現状適応主義、「はいまわる経験主義」等の批判を受けることになり、結果として基礎学力の低下などの社会問題を引き起こし、新教育運動は衰退の道を歩んだのであった。
【戦後新教育運動より生活科へ生かすもの】
アメリカの経験主義教育論を理論的背景にした、戦後の新教育運動は結果として「はいまわる経験主義」などの批判を受け、系統学習が主張されるようになった。
しかし、新教科生活科が誕生した現在において当時の実践を見直した時、そこには、生活科が学ぶべき多くのものが存在していることに改めて気付くのである。
特に重要なことは、「為すことによって学ぶ」教育の重要性である。
「はいまわる経験主義」などと、経験学習に向けられた当時の批判は、実はデューイの経験のとらえが子どもの生活の領域に限定され、子どもの活動が絶対化された点に対して向けられたものであったというとらえである
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