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September 27, 2015

日本人の幸福度の推移

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 以前も紹介したノーベル物理学賞受賞の天野浩さんの講演では、いくつかデータやグラフが示された。
 公的なデータを使って持論を展開するところに説得力があった。
 自宅で調べても、なかなか同じグラフが見つからなかったが、次のデータは検索できた(写真参照)。

 国民生活白書の「年齢による幸福度の推移」のグラフ
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h20/01_honpen/h...

 年齢幸福度のグラフは、20歳を超えたら日本の若者には幸福感がないことを憂うデータ。
 右上がりのアメリカ国民とは対照的に、右下がりの日本国民の幸福感(あくまで主観的な幸福度のデータである)。
 参加した高校生に、自分たちの未来をどう考えるかを問う刺激的な資料だった。

 1998年、「この国には何でもある。だが、希望だけがない」というキャッチコピーの小説『希望の国のエクソダス』が書かれた。

 数年前、上越JCの方に「上越は何でもあるが、何もない」と言われた時、多くの地方都市は同じじゃないかと思った。「生活する上での不自由もないし、不足もないが、独自性がない。ここでなければだめといった必然性がない」という意味に解釈した。

 日本人が今の平和な生活で不幸を感じることは少ないだろう。しかし、逆に幸福を感じることも少ないというデータ。「この国には何でもある。だが、希望だけがない」というコピーを感じさせるデータ資料だ。

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September 21, 2015

シールズの学生たちよ、有田学級を超えよ

 授業の名人と言われた有田和正氏が、「湾岸戦争」を授業で扱ったのが1991年。
  『社会科教育』91年8月臨時増刊号(明治図書)は圧巻の授業記録集である。
 「憲法第九条」の授業では、憲法第九条の解釈がどう変わってきたか、1946年の吉田茂総理からマッカーサー元帥・参議院本会議・田中角栄・中曽根康弘総理などを経て、1990年の海部俊樹総理までの発言を一覧にした資料を提示して子どもに考えさせている。
  憲法九条の解釈は、自衛隊の解釈でもある。
  授業では
 「自衛隊は違憲か?」
 「なぜこんなあいまいな憲法を作ったのか」
も問われている。

 シールズの学生たちも、ぜひ、この問いに答えてみてほしい。

 そして、
○「戦後46年」と湾岸戦争
○「戦後46年」平和であったわけ
○「国際連合」は役に立っているか
○国連の働きと戦争
○「国際連合は必要か」の授業

と授業が続く。
 授業者である有田氏の指導方針は、次のように示されており、思想の押し付けにならないよう配慮している。

◆できる限りのデータや資料を提示して、子ども自身に判断させるようにする。
 子どもが自分で調べて判断する力があればよいが、なければ教師の価値判断をおしつけることになりかねない。
 わたしの社会科は、「結論は、子どもが調べて出す」ということに徹してきたので、時事問題もあつかえる状況になってきた。
(前掲書P9)


 有田学級の子供たちは帰宅後も徹底的に調べ、自分なりの結論を出している(今のようにネットからのコピペができない時代です)。

◆自分たちが平和になろうとしても、むこうの国の人たちが、そういう考えをもってなくて、私たちにせめてきたら、この憲法ではたたかえないので、やられてしまいます。
(中略)日本だけでなく、他の国も協力しなくては、この憲法は達成できないのではないでしょうか?

◆自衛隊の軍備は防衛のためにつくられていて、海外での作戦行動は考えられていません。あくまでも、侵略から国を守るというように形成されているから、憲法違反ではないと思います。

◆自衛隊をおくことじたい、違反ではないでしょうか。防衛、自衛のための軍隊なら良い、という意見も出ましたが、わたくしたちの憲法によると、九条は、軍隊をおかない・・ということも書いてあったので、自衛隊を派遣どころか、おくことすらも、いけないことだと思います。

◆「(日本は)多国籍軍側についているということは戦争に加わっているということ」

◆「第九条がなければ、日本は絶対に参戦していると思う」

◆「国連に加盟している日本は、国連側というか、多国籍軍側に味方するのが当然」

◆「戦争を完全になくすこというのは、多分、不可能だと思う。安全保障委員会がいくらがんばったって。」

◆「相手の国も領土を広げてお金を増やしたいとか、石油を掘りたいとか、そういうことを考えて戦争をしかけたでしょう。だから人間の欲望というのが消えない限り、戦争はなくならないと思う」

◆「誰が何と言おうと国連が『駄目!』と言ったら駄目だというほどの力を持っていないから戦争が起こるのです」

など、現実味のある意見(判断)を述べている。
 授業を参観した角谷京一氏は、次のように言う。

◆口先だけで「戦争反対」を唱える人々よりも地面に足がついている子供たちは、本当は「戦争なんかいやだ、絶対にやるもんか」と言いたいのに、現実を見るとためらってしまうのではないか、と私に考えさせるほどにすごい子供たちなのである。その子供たちを育てたのが有田先生なのである。

 藤岡信勝氏は、同書の中で、「湾岸戦争」が起きた当時の状況を、次のように述べている。

◆平和を高唱して誰からも文句をつけられない時期は幸せだった。日本人の多くが憲法第九条の理想主義をよりどころに心情的平和主義にどっぷりとつかり切っていることができた。1990年8月2日以降は、この心情的平和主義の正当性は無残に打ち砕かれてしまった。

・・・湾岸戦争では、国際秩序の維持のために負担の分担が日本にも求められた。
 兵を出さずにお金ですませたと批判も起きた。
 これが、25年前の出来事である。
 あらためて、当時のことを思い出してみると、PKO法案に対する反対デモが、あの頃もあった。
 小牧の自衛隊基地の付近には、警察が詰め所があったし、ピーク時は付近の道路で検問もあった。
 実際に戦争が起き、我が国がどこまで兵を出すかお金を出すかと大騒ぎしたのだから、PKO法案の通過の賛否については、今より切実だった。
 今回の安保法案が「戦後の安全保障の大きな転換」という意見もあるが、「湾岸戦争」が「大きな転換」であったと思う。藤岡氏の言う「心情的平和主義」の崩壊である。
 集団的自衛権について、急に議論になったという意見もあるが、「湾岸戦争」以後、25年間、この国が背負っていた問題であると思う。

 湾岸戦争を知らないシールズの学生には、この25年間の経緯をぜひ調べてみてほしい。
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政治問題を子どもに教えるのは難しい。

 政治問題を子どもに教えるのは難しい。 
 しかし、毎日のようにニュースになっている話題について、何も触れないのも教育的ではない。
 向山洋一氏の師匠に当たる石川正三郎校長の言葉に中に、政治問題をどう扱うかのヒントがある。

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◆「日中国交回復をすべきだと教師が子どもに語るのはつつしむべきだ。
それは扇動であって授業ではない。その意見が正しいか正しくないかは別のことだ。
教師がもっている一つの政治的見解を子どもに押しつけるべきではない。
 しかし、六年生の社会科の授業として、あるいは歴史の授業として、多くの資料を集め新聞の切り抜きもさせて、子どもたちに考えさせるというのは、ぜひやるべきことだ。
これは立派な授業なのである。

◆「はじめは、会の中だけで通用する会報的なものであろう。それでよい。
その次には、多くの情報を集めてきたり、自分たちの主張も載せていくようになるだろう。
そして、子どもたちの活動がうまく発展すれば、自分たちの問題について批判したり、時には教師をも批判するようになるだろう。
ぜひ、教師を批判できるような子どもを育ててほしいし、その批判にきちんと応えられる教師であってほしい」

 向山洋一全集52「向山実践を貫く教育理念」P47
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 資料を集め、考えさせ、討論(批判)させていく流れが示されている。
 向山氏が大森大四小学校に赴任した1968年頃の話である。
 それでいて、最先端の、アクテイブラーニングにも通じる至極のヒントにもなっている。
 
  安保法案採決の際の国会の騒動を見ると、与党も野党も見苦しかったと言わざるを得ない。
  しかし、テレビや新聞報道は、「法案反対」に偏っており、子どもが公平な判断を下せる状況にもない。
 学校では、「扇動」に配慮しつつ、何を教えるべきかを考える。

(1)メデイアリテラシー
(2)多様な意見を得るため読書力(情報収集能力)
(3)自分の私的な利益だけを追求しない道徳心(公共心)
(4)大局的に思考するメタ認知能力
(5)歴史教育の知識
(6)公民教育の知識
(7)論理的思考力

 「戦争は反対」は、誰だって同じである。
 しかし、いくら「戦争反対」を唱えても、仕掛けられる戦争はある。
 自分は無関係でも友好国が戦争に巻き込まれることもある。
 日本人が他国で戦争・紛争に巻き込まれることもある。
 「だから、どうすればよいのか」は、一言ではいけないほど複雑だ。

 だからこそ、具体的にどうすればよいかを考える子どもを育て、
どのような政策が望ましいかを考える国民を育てていきたい。

 繰り返すが、教師が子どもに押し付けることは厳に謹まなけれなならない。
 しかし、やはり民主党には、単なる反対でなく、対案を出してほしかったというのが、私の意見だ。
 子どもの授業だって「多くの資料を集めて、考えさえる」が常道だ。
 A案とB案を提示して「どんな条件なら認められるか」を議論すべきだったと思う。
 国会も、与党案と野党案を検討し折り合いを付けるべきだし、そのためにじっくり審議の時間を費やすべきではなかっただろうか(扇動してはいけないので、投げかけで終わります)。

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September 13, 2015

ノーベル物理学賞お二人の講演~名古屋大学レクチャー2015

 9月6日(日)名古屋大学で、レクチャー2015 (2014年ノーベル物理学賞受賞記念)を聴いてきた。

  記念講演   「青色発光素子はいかに創られたか」
 名古屋大学特別教授・名城大学終身教授 赤﨑勇

 名古屋大学レクチャー  「世界を照らすLED」
  名古屋大学教授 天野 浩

 赤崎さんと天野さんのお二人の話を同時に聞けるチャンスはめったにないだろうと楽しみに参加した。

◆印象的な赤崎さんの言葉 「われ一人荒野を行く」
◆印象的な天野さんの言葉 「成功すれば世界が変わる」

 赤崎さんの講演は、専門的で難しかったが、おかげで天野さんの講演内容が入りやすかった。
 世界の多くの研究者が撤退した研究を続け、ついに窒化ガリウムによるLEDを実現させたお二人。
 昨日、中日新聞に講演要旨が掲載された。
 講演要旨の中で、印象的だった天野さんの言葉が、

◆「『自分でなければできないかも』という思い込みや勘違いが必要」

 講演要旨の中で印象的だった赤崎さんの言葉が、

◆「難題だからやらなきゃ」

 不屈の精神
 誰もやらないなら俺がやる。
 誰もやらないから、やる意味があ。

そのような思いを強くした講演であった。

 「努力の大切さ」を、ぜひ授業化してみたい。
 でも、言葉を示すだけでは弱い。
 言葉の背景にある生き様や苦労を伝えなければ、形式的な授業に終わってしまう。
「すごいです」
「僕も努力したいです」
なんて感想で終わるような粗雑な授業なら要らない。

 逆だな。
 「われ一人荒野を行く」
 「成功すれば世界が変わる」
 「自分でなければできないかも」
 「難題だからやらなきゃ」
といった言葉を示さずに、このような言葉が個々の授業の感想で出るように仕組むべきなのだろう。

 ところで、ノーベル物理学賞受賞者の天野浩さんは浜松市出身。
 天野さんは子どもの頃から、浜松出身の「高柳健太郎氏」のことを教えられてきたそうだ。

 高柳健太郎と言えば、世界初のブラウン管式テレビの開発者である。
 その高柳の教え子には浜松ホトニクスの創業者・堀内平八郎、松下電器製作所の久野古夫などがいる。
 浜松ホトニクスと言えば、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんがニュートリノを観測した「カミオカンデ」の会社でもある。

 天野さんは、赤崎先生の青色LEDの研究を知り、「LEDを使えばブラウン管を小さくできる」と考えた。
 それは、あの高柳健太郎の業績を引き継ぎ、超えていきたいという思いだったのかもしれない。
  「うまくいったら世の中を変えられる」というのは、浜松人のDNAなのかもしれない。

 偉人伝は、意識下に「強い憧れ」を植えつける。
 真似したい・追いつきたい・追い越したいという動機につながる。

 世界の偉人・日本の偉人・地元の偉人

 偉人伝の威力について、追求し、「すごいです」「僕もなりたいです」にならないような授業を仕組んでみたい。

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September 06, 2015

国家を守る人たちに感謝したい

「S-最後の警官- 奪還 RECOVERY OF OUR FUTURE」

 一言で言えば、プルトニウムを積んだ輸送船を乗っ取ったテロリストと対峙する警察・海上保安庁の映画。
 プルトニウムの奪還は、この国の未来の奪還。
「この国は俺たちが守る」という気迫にあふれる映画だった。

 架空の組織NPSを含め、4つの「S」が登場する。

➀SAT 特殊急襲部隊 (Special Assault Team)
②SIT 特殊捜査班(Special Investigation Team ) (Sousa Ikka Tokusyuhan)
③NPS 警察庁特殊急襲捜査班 (National Police Safetyrescue)
④SST 海上保安庁所属特殊警備隊(Special Security Team)

 現在議論している安保法案(集団的自衛権)とは別の個別自衛権の問題になるが、

「国民の生命と平和な暮らしを守るために命を懸けている人たちがいる」

という認識を新たにする素晴らしい映画だった。
 海上保安庁、防衛省、航空自衛隊の協力を得ており、迫力のあるシーンの連続であった。

 映画を観た後、現存する組織の主な任務や過去の実績を調べてみた。

➀SAT
主な任務は、ハイジャック事件、重要施設占拠事案等の重大テロ事件、銃器等の武器を使用した事件等への対処。また、刑事部の特殊犯捜査係だけでは対処できない凶悪事件にも出動する。

②SIT
特殊犯捜査係は各都道府県警察の刑事部捜査第一課に編成されており、人質立て篭もり事件や誘拐事件、企業恐喝事件、業務上過失事件などに出動し、犯人を逮捕することを主要な任務としている。

④SST 
海上保安庁所属特殊警備隊(Special Security Team)
海上テロ事案等への対処を任務とする。
プルトニウム輸送船護衛のために設置された「輸送船警乗隊」が前身となっている
1995年に「地下鉄サリン事件」などのテロ事件が発生したことを受け、海上保安庁は海上におけるテロ事件に対処するため、本格的な特殊部隊の創設を計画した。その結果、同種の部隊を統合して運用することが効率的であったことから、1996年に海上警備隊と輸送船警乗隊が統合され特殊警備隊(SST)となり、第五管区海上保安本部大阪特殊警備基地に配備された。
SSTはテロリストなどに占拠された船舶や、麻薬密輸船に対して、ヘリコプターからファストロープなどを用いて降下し、制圧を行う。また閉式潜水器具等を使用して、水中から船舶への突入、制圧を実施する。

 ドラマは、警察庁の中に、国民の危機意識のなさを憂うグループがあるというのが布石になっている。
 テロリストの脅威や、今すでに命を懸けて国民の安全を守ろうとしている人達の存在を考えさせてくれる映画だ。
 SAT・SIT・SSTの「制圧」が「人殺し」になったとしても、それは自己防衛である。
 テロリスト襲撃のような個別的自衛権については、多くの野党も「問題なし」としている。

 少なくとも、自分自身の幸福やの家族との平穏な暮らしを後回しにして、日夜、国家の安全に努めている人達に感謝の念を抱く国家であってほしい。 

 そんな思いを強くした映画であった。

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