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October 25, 2015

聞き慣れない「エンゲージメント」の考察

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 文科省が出した「教育課程企画特別部会 論点整理」の参考資料P193に

「学習意欲と学習プロセスとの関係 エンゲージメントと非エンゲージメント」

と題した資料がある。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/09/24/1361110_2_5.pdf

Skinner, Kindermann, Connel, & Wellborn,2009を一部改変
鹿毛 雅治 (慶應義塾大学教職課程センター教授) 著
『学習意欲の理論-動機づけの教育心理学-』(金子書房 、2013年)第1章(p.9)より引用

とある。
 表の中で、掲げられた言葉が印象的だった。

◆エンゲージメント・意欲的な姿
 一生懸命に取り組む・努力する・持続する・熱心・専念・熱中・没頭・情熱的・積極的・チャレンジ・熟達を目指す
 最後までやり抜く・細部にまで丁寧で几帳面である

◆ 非エンゲージメント・意欲的でない姿
受動的で先延ばし・あきらめる、身を引く・興味がない・回避的・無関心・無目的・あきらめる
気が進まない・反抗的・頭が働いていない

・・・どのような脈絡で、この資料が参考として取り上げられたのかの経緯が分からないが、学習意欲が大事、動機付けが大事ということなのだと読めた。
 ただし、「エンゲージメント」という言葉は聞いたことがなかったので、調べてみた。ビジネス的な用語という感じである。

(1)モチベーション
 例えば、次のサイトでは、社員の「組織への貢献意欲」としてとらえ、「モチベーション」と同じように用いられていることが分かる。

http://www.adecco.co.jp/vistas/adeccos_eye/32/

◆タワーズワトソンのデータ・サーベイ部門ディレクター岡田恵子氏は、こう分析する。
「当社ではモチベーションに近いものとして『エンゲージメント(組織への貢献意欲)』という概念を提唱し、調査していますが、日本人のエンゲージメントのスコアは長年、G8の中で最下位です。もっとも日本人の場合、こういった調査の回答として『どちらともいえない』を選択する傾向が多分に見られるので、実際に極端にエンゲージメントが低い人が多いわけではありません。ただ、低成長の長期化、企業の業績不振、それによる社員の報酬の減少、管理職ポストの削減など、さまざまなマイナスの要因が絡んだ結果、『組織のためにがんばることが自分のやりがいだ』と、言いきれなくなっている現状があります」

・・・日本人の会社への貢献意欲が平均より低いという調査結果は意外だった。
 会社への忠誠を尽くすイメージがあったから、これは真逆だった。
 ただし、高校生の意識調査での「自信のなさ・向上心の低さ」を考えると、日本全体の活力低下の表れかもしれない。

(2)協働意識

 例えば、次のサイトでは、互いによい組織を創っていこうという意欲といった意味合いにとれる。
https://jinjibu.jp/article/detl/tieup/742/

◆会社と従業員の関係性を表す「エンゲージメント」という考え方が注目されています。
「エンゲージメント」とは、会社と従業員がイコールパートナーとなって、会社は従業員が働きやすい施策・職場環境を提供し、従業員はそれに応えて会社に貢献していくという関係性のこと。これにより、人と組織の高いパフォーマンスがもたらされることになります。


(4)参加度
 
例えば、次のサイトでは、「モチベーション」や「参加度」のようなニュアンス。

http://www.humanvalue.co.jp/report/magazine_list/engagement.html

◆海外におけるエンゲージメントの定義

 しかし、まだエンゲージメントとはどのような概念なのかの共通の捉え方は定まっていない。エンゲージメントが海外でどのように定義されているのかいくつかの例を見てみよう。
  米国のギャラップ社は、従業員エンゲージメントと顧客エンゲージメントという2つのコンセプトを組み合わせた「ヒューマンシグマ」という手法を提供している。同社は従業員エンゲージメントを「組織に対して強い愛着を持ち、仕事に熱意を持っている状態」としている。
 英国のCIPD(The Chartered Institute of Personnel and Development)は、エンゲージメントを「組織との契約で必要とされてはいないが、働く人が提供しなくてはいけない何か」であり、「単なるモチベーションではない仕事への満足度を上回るもの」としている。また、同団体はエンゲージメントを「組織」と「組織の価値」へのコミットメントと、同僚を助けたい意欲(オーガニゼーショナル・シチズンシップ)の組み合わせとして見ることができるという。
 また、リチャード・アクセロッド氏の著書『Terms of Engagement』では、積極的なエンゲージメントの段階として「個人的に参加する」、「強く主張する」、「個人的にリスクをとる」があるとされている。
 このような定義から、海外でのエンゲージメントの定義に含まれる要素は「個人の組織に対する認知(価値など)」と「仕事や組織および同僚に対する個人の感情(愛着・熱意・意欲・コミットメントなど)」、「仕事や組織および同僚にする個人の行動(主張、参加など)」だといえる。
 そしてエンゲージメントを高めることで実現したいことは、ギャラップ社では「労働力の仕事への関与を高めることによって財務実績の改善を目指す」としている。また、米国のBlessing White社は「完全なエンゲージメントは、仕事への最大の貢献感と満足度のアライメント」を生み出すとしている。アクセロッド氏は「領域を超えたコラボレーションを生み出し、チームワークを強化し、顧客や取引先とのパートナーシップを生み出し、将来の変化に対応できる能力を備えた組織を作る」としている。

 日本で求められているエンゲージメント

 海外の定義を踏まえ、今、日本で求められているエンゲージメントについて考えてみたい。ヒューマンバリューでは、2003年からエンゲージメントについての調査・研究を行っており、エンゲージメントを「『組織(会社)』と『個人(社員・構成員)』が一体となって、双方の成長に貢献しあう関係」と定義した。


(5)内発的動機付け 

 例えば、次のサイトでは、社員のやる気向上(内発的な動機付け)に絡んでいる。
http://www.yaruken.com/method/

◆学校の勉強になると、あまり物覚えがよくなかったり、創造性を発揮しない子が、ビデオゲームになると、そこで登場するキャラクターの名前を全部記憶し、ゲームの裏技を見つけるのに創造性をいかんなく発揮する子がいます。
 学校のことになるとおとなしく沈んだような顔をしているのに、ビデオゲームのことになると目を輝かせてやる気満々、インスパイアされた状態になっている。
 同じ子供がやる気を持ったり持たなかったりするのは何故でしょうか?
 やる気の境界線は、どこにあるのでしょうか?
 おそらくその答えは、おわかりかと思います。
 そうです。やる気は、自分が好きなこと、大切に思っていること、重要なことに対して起るものなのです。
 そして、好き、大切、重要なこととは「価値観」なのです。
 私たちは、自分の価値観に合致していることに対しては、やる気が自然と起り、誰に指図されることもなく積極的に取り組みます。しかし、価値をおいていないことについては、自分で行動を起こすことは滅多にありません。誰かに指図されたり、行動しなければならない、行動する必要がある場合のみ嫌々ながら行動します。
 このように私たちのやる気は、個人それぞれが持つ価値観が大きく影響します。
 社員の仕事のやる気が低いのは、仕事と自分の価値観のつながりが見えない。仕事と自分の価値観の間に関連性を見出せていない状態と言い換えてもいいでしょう。
 もし、その社員が今の仕事が、自分の価値観を満たしてくれることがわかれば、その社員にとって仕事の意味は大きく変わるはずです。そして、仕事のやる気はずっと高まることでしょう。(中略)
 このように、これまでネガティブに捉えていた業務と自分の価値観との間に明確なリンクが認識できたとしたら、その中間管理職のやる気は、グッと上がります。
 重要なのは、これが報酬や昇進といったアメ(外からのモチベーション)ではなく、自分にとっての仕事の意義に気づいたこと(インスピレーション)によってやる気が上がることです。
 
・・・また、次のサイトも、「内発的動機付け」の意味合いが強い。
http://g-hrd.com/stepbystep/advance/advance-chap11.html

◆社員のエンゲージメント(社員の働く意欲と会社に対するコミットメントの高さ)
◆前述のピンク氏は、20世紀の産業資本主義社会における大量生産、マニュアル化の下では、仕事は楽しくない反復作業だった、と述べています。そのため、働く人の多くは、できるだけ楽をしたいと考えていました。そのような人たちが怠けずに働くようにするには、賃金、賞罰といった外発的動機づけが必要だったのです。彼は、創造的で自主性を発揮できる仕事に就く人が増える中、外発的動機づけは現代の大半の仕事内容と相容れない、と指摘します[*3]。
 内発的動機づけは、外発的動機づけと比べて、創造性、責任感、行動の健全さ、持続性といった点で勝ると言います[*8]。ハーバードビジネススクールのアマビール教授によると、人は仕事への興味、満足感、挑戦に動機づけられた際に、最も創造性を発揮するそうです。金銭などの外的報酬に動機づけられた人は、早く確実に成果を上げようとして、前例に沿って手堅い手段を取りがちです。そのため、試行錯誤自体を楽しみ、より創造的な解決法を粘り強く編み出すことにつながらないのです[*9]。

 1万人以上の米国の科学者や技術者を対象にした研究では、知的な挑戦、自律性、改良を求める内発的欲求が高い人は、金銭的報酬を求める外発的欲求が高い人に比べ、より多くの時間を仕事に費やしました。知的な挑戦への欲求は、生産性(この研究では特許出願数)向上に最も関連することも明らかになりました。外発的欲求よりも、内発的欲求、特に知的な挑戦への欲求に動機づけられた科学者の方が、イノベーションに貢献していたのです[*10]

・・・また、このサイトでは、さらに「フロー」に言及している。

◆近年注目されているのが、米国の心理学者チクセントミハイ博士が唱える「フロー理論」です(「フロー理論」のエッセンスについては、博士のTEDスピーチを参照)。Y.K.さんには、仕事や遊びに集中しすぎて我を忘れ、あっという間に時間が経って「楽しかった!」と感じた経験がありませんか?例えば、コンピューターゲームに没頭している時に生み出される、頭はクリアで心は高揚し、活力を感じるような瞬間です。博士は、ロッククライマー、チェスプレーヤー、バスケットボール選手などへのインタビューを重ね、高いパフォーマンスを上げる人たちが、高度に集中している時に体験する最高の瞬間があることを突き止めます。そして、その高揚した心理状態を、「フロー(Flow)」と名付けました[*13]。

 博士がインタビューしたビジネスリーダーたちは、「自分を成長させてくれる新しいチャレンジが大好きで、仕事が楽しくて仕方ない」、「興味あることを心の底から楽しんだ結果、成功した」と話します。定型作業に携わる作業者の中でも、自身の作業がいかに手応えがあり、満足感を得られる行為かを熱く語る人がいました[*13]。このような人たちは、職場においてフローを見つけ、仕事を心から楽しんでいるのです。

 チクセントミハイ博士は、フローが機能している最適な職場として、創業期のソニーを挙げています。ソニーの設立趣意書には"技術者が、社会の必要性に応えながら喜びを持って思いきり働ける職場づくりを目指す"という意味の一節があります[*14]。博士は、ソニーの半世紀にわたる成功は、このビジョンを重んじ、職場でフローを実現した結果だと賞賛します[*13]。ソニーの元上席常務で、CDやAIBOを開発した土井氏も「創業期のソニーが大躍進した理由は、社員全員がフローを体験する"燃える集団"だったからだ」と語っています[*15]。

・・・また、このサイトの「チャプター1」でも、内発的動機づけの重要さを説いている。
http://g-hrd.com/stepbystep/advance/advance-chap01.html

◆「努力すれば能力は伸びる」の指導法

 会社人生がはじまったばかりのAさんには、内発的動機づけを持って仕事にあたってほしいので、指導にあたるO.Y.さんには「能力観」「学習観」を知っておいて頂きたいと思います。
 
 米国の心理学者キャロル・S・ドゥエックは、長年の調査研究結果を元に、「問題にぶつかるとすぐ諦めてしまう人」と「粘り強く挑戦し続ける人」の違いは、その人が持つ能力観、学習観に起因する、と唱えています。彼女は、人の能力や資質に対する考え方には、人の能力や資質は生まれつきのもので基本的には変わらない、という「能力固定観」と、人の能力や資質は学習や自己変革で変わり続ける、という「能力変化観」の2つに分かれると指摘しています[*7]。

 能力固定観を持つ人は、自分が正しいか、他者から高く評価されるか、に関心が向きます。失敗できないという焦りから、簡単にできることにしか手を出さず、上達するのに時間がかかる難題への挑戦を避ける傾向があるようです。さらに、一度失敗するとやる気を失いやすいといいます。一方、能力変化観を持つ人は、他者からの評価ではなく、以前に比べて、自分がより大きな成果を出せているか、スキルや知識が高まっているか、など、自身の成長に関心が向く傾向があるようです。自分が成長するために、難しい課題に挑戦し、根気よく学習を続けられるのです。

 能力変化観を養ってもらうには、他者に勝てたか、上手にできたか、という目先の成果を強調するのではなく、能力をどれだけ伸ばせたか、という個人の学習目標を重んじるとよいでしょう。評価の力点を、他者との相対比較ではなく、本人の成長度に置き、本人の仕事への取り組みプロセスに着眼したフィードバックを繰り返します。


◆「能力」でなく「努力」に焦点を当てよう

 もしかしたら、Aさんは無意識に身に付けた能力固定観のせいで、失敗への恐れから学習意欲を失っているのかもしれません。
 前述のドゥエックは、何百人もの子どもを対象にした複数の調査結果を通じて、親や教師が能力をほめると生徒の学習成果や学習意欲が下がり、努力をほめると学習成果や学習意欲が上がる、と訴えています。彼女は、数百人の生徒にかなり難しい問題を解かせ、ほとんどがまずまずの成績を取った後で、異なるほめ言葉をかけ、その後の行動を観察しました。「頭がいいのね」と能力をほめられたグループの生徒たちは、失敗して能力が低いと思われたくないため、その次からは新しい問題にチャレンジしなくなりました。「頑張ったのね」と努力をほめられたグループは、9割が新しい問題にチャレンジし続けます。さらに難易度の高い問題が出されると、頭の良さをほめられたグループは、解けないことを失敗と感じて「自分は頭が悪いのだ」と思い込み、問題を解くこと自体に興味を失います。一方、努力をほめられたグループは、解けなくても「もっと頑張らなくちゃ」と考え、難しい問題を解くことに楽しさを感じるようになったのです。

 Aさんの指導でも、現状の能力を指摘するのではなく「この作業は、あなたにとって能力向上のチャンスであり、最初は失敗するかもしれないが、努力し続ければきっとうまくできるようになるよ」といった、内発的動機づけにつながるような、努力に焦点を当てたフィードバックを継続的に行ってみましょう。

 ドゥエックは、「優れた教師は、知力や才能は伸ばせると信じており、学ぶプロセスを大切にする」と述べています。ある調査によると、能力固定観の考え方をベースに1年間指導を行った教師のクラスでは、成績の良い生徒もそうでない生徒も当初の学力差が期末まで変わらなかったのに対し、能力変化観のもとに指導した教師のクラスでは、当初の成績にかかわらず期末にはどの生徒も良い成績を修めたそうです。

 Aさんの今の能力レベルを見て、「この人はやる気もなさそうだし、きっと伸びないな」と決めつけず、「やればきっとできる」と考え、担当している仕事の意義を訴えてAさんの内発的動機を高め、目標を提示して、Aさんの努力を後押ししてみてください。O.Y.さん自身も能力変化観を養い、能力変化観をベースに指導することが大切なのです。

※Duckworth Grit - アンジェラ・リー・ダックワース 「成功のカギは、やり抜く力」 TED
 
https://www.youtube.com/watch?v=_VHWLjT3pjA


・・・・・中身が濃い。
「学力の経済学」でも話題になった「やりぬく力」「非認知スキル」「心理学者キャロル・S・ドゥエック」など、いろいろ重なってきて、頭に中が整理しきれない。

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