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December 12, 2015

「確証バイアス」の罠から逃れるための逆転現象の授業

 『成功する子・失敗する子』(ポール・タフ著)について、もう少し。
 チェスの上達に必要なスキルを究明する中で出てくるキーワードが「確証バイアス」(p113~114)

◆何かの理論を実証しようとするときに、人はその理論に反する証拠を探そうとはせずに、どうしても自分が正しいことを証明するデータを探してしまう。
「確証バイアス」として知られる傾向である。これを乗り越える能力がチェスの上達においてはきわめて重要な要素だった。

◆当然のことながら、ベテランのグループは初級者のグループよりも正確に状況を分析していた。
驚くべきは、どのようにちがったか、という部分である。ひとことでいえば、上級者のほうが悲観的だった。
初級者は気に入った手を見つけると確証バイアスの罠に陥りやすい。
勝利につながる可能性だけを見て、落とし穴は見過ごしてしまう。
これに比べ(中略)上級者は自分の仮説を反証することができ、その結果、致命的な罠を避けることができる。

・・・第三章「考える力」の一節だ。
 確証バイアスの罠に陥るのは、深く考えないことが原因だ。
 だからこそ、深く考えないと失敗する経験を意図的に仕組む必要がある、

 ※よく考えろ
 ※常識にとらわれるな
 ※他に手はないか

を考えたとき、思いつくのが「逆転現象」の授業だった。
 多数決でも常識でも決まらない「逆転現象」の授業は、確証バイアスの罠に陥らない秘策であるとも言える。
 他人とつるまない一匹狼のたくましさを育むのも、自分の都合のよいデータだけに振り回されない強さと慎重さだ。
 
 ところで、『成功する子~』には、慎重さ(悲観的な見方)が大事だと書きつつも、一方で大胆さ(楽観的な見方)も大事だと述べている。

ダブリンの研究についてスピーゲルに尋ねると、どんな動きの結果についても少し悲観的であるくらいのほうがいいという考えには同意するといっていた。
ただし、チェスの能力全般については、楽観するほうがいいという。
演説のようなものだ、とスピーゲルは説明した。マイクのまえに立つときには少しばかり自信過剰なくらいでないと困ったことになる、というわけだ。
「どんなに上達しても、死にたくなるほど馬鹿げたまちがいをすることは絶対になくならない」。だから自分には勝てるだけの力があると自信を持つこともチェスの上達の一部なのだ、と。

・・・「慎重に、かつ大胆に」「悲観的に、かつ楽観的に」
といったところか。
 「黒澤明監督の語録「天使のように大胆に、悪魔のように繊細に」という言葉とニュアンスが近い。
 「大胆と繊細」「楽観と悲観」は相反する言葉ではあるが、両方を兼ね備えることが成功の秘訣のようだ。

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