「成功する子 失敗する子」ポール・タフ(英治出版)
一言で言うと難しかったというか、読みづらい1冊だった。
図表もグラフもなく、文字だけな点も辛かった。
「学力の経済学」などの先行した読書があり、各セミナーでの非認知スキルについて聞いていたからピンとくる点が多かった。あの先生は、ここを引用したのかと腑に落ちる箇所がたくさんあった。
しかし、逆に、事前にいろいろ聞いていたから戸惑いもあった。
「やり抜く力」「自制心」などの非認知スキルを中心に書いてあるのかと思ったら、それは、ほとんど第2章のみで、それ以外の記載が盛りだくさんだった。
貧困問題・人種問題などは米国ならではの問題も詳細で、日本との違いが如実に表れていた。
「非認知スキル」が脚光を浴び、『成功する子 失敗する子』は、いろんな人が紹介している。
一番有名なのは第2章だろう。
以下のたくさんの箇所に付箋をつけた。
・何が気質を育てるのか
・楽観主義を身につける
・性格の強み
・自制心と意志力
・動機づけ
・勤勉性
・やり抜く力(グリット)
・性格の通知表
コピーを取るだけで読んだ気になってしまうし、あとでまた読めばいいと思うと、つい放置してしまうので、文字打ちすることにした。
ただし、打ち込んだ内容をそのまま提示すると著作権で問題になるので、一部にとどめる。
【P105~106を抜粋】
セリグマンとピーターソンの書くところによれば、ほとんどの社会において一定の道徳観を持っていることは長所とされ、多くの場合その道徳は宗教上の規則や制限と重なる、しかし性格の強みの話をしようとすると、道徳の価値は限られたものとなる。なぜなら、道徳的なおこないとは単に高い権威や規則に従っているだけの場合があるからだ。「美徳は規則よりもはるかに興味深い」とふたりは書く。セリグマンとピーターソンによれば、二十四の強みの真価はある特定の倫理体系との関わりから生じるのではなく、それが現実に利益を生むこと・・その強みを持っていることによって実際に何かが得られること・・・にある。こうした強みを育てることは「よい人生」、つまり幸福であると同時に有意義で充実した人生へと通じる確かな道のひとつである。
多くの人々が「性格」という言葉を生まれつきのもの、変わらないもの、人の品質を決める書くとなる性質という意味で使う。しかしセリグマンとピーターソンの定義はそれとは異なるものだ。ふたりは「性格」を、変わることのおおいにありうる・・適応できる力を備えた・・強みや能力の組み合わせであると定義した。性格とは習得でき、実際に使える、そして何より人に教えることのできるスキルなのである。
ところが実際には、教員がそれを教えようとするとたいてい道徳の壁にぶつかる。(後略)
・・・・・長々と引用したが、日本の学校が日々の道徳指導をどうするか。学級指導・生活指導をどうするか、どのように「生きる力」をつけるかを考える大事な部分だと思う。
ちなみに、この本では「24の性格の強み」は紹介されていない。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep/63/2/63_181/_pdf
が、6つの「美徳の領域」と24の「性格の強み(CS)」として挙げているので、これを引用する。
(1)知恵と知識
①独創性 ②好奇心・興味 ③判断 ④向学心 ⑤見通し
(2)勇気
①勇敢 ②勤勉 ③誠実性 ④熱意
(3)人間性
①愛する力・愛される力 ②親切 ③社会的知能(適応)
(4)正義
①チームワーク ②平等・公平 ③リーダーシップ
(5)節度
①寛大 ②謙虚 ③思慮深さ・慎重 ④自己コントロール
(6)超越性
①審美心 ②感謝 ③希望・楽観性 ④ユーモア・遊戯心 ⑤精神性(目的意識)
・・・ピーターソンは、24の性格の強みを実際の教育システムに取り入れるために絞りこみ、7項目のリストにした。
①やり抜く力 ②自制心 ③意欲 ④社会的知性
⑤感謝の気持ち⑥オプティミズム ⑦好奇心
・・・とはいえ、24項目は日本の「道徳」で教える以下の22の項目と比べても大差がないので、多くの教師は驚かない。
A 主として自分自身に関すること
①「善悪の判断,自主、自律,自由と責任」
②「正直,誠実」
③「節度,節制」
④「向上心・個性の伸長」
⑤ 「希望と勇気,努力と強い意志」
⑥「真理の探究,創造」
B 主として人との関わりに関すること[編集]
①「親切,思いやり」
②「感謝」
③「礼儀」
④「友情,信頼」
⑤「相互理解,寛容」
C 主として集団や社会との関わりに関すること
①「規則の尊重」
②「公正,公平,社会正義」
③「勤労,公共の精神」
④「家族愛,家庭生活の充実」
⑤「よりよい学校生活,集団生活の充実」
⑥「伝統と文化の尊重,国や郷土を愛する態度」
⑦「国際理解,国際親善」
D 主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること
①「生命の尊さ」
②「自然愛護」
③「感動,畏敬の念」
④「よりよく生きる喜び」
・・・24の性格の強みは道徳の指導内容と同じじゃん、と思うからこそ、「ところが実際には、教員がそれを教えようとするとたいてい道徳の壁にぶつかる」というアメリカの報告が気になる。
アメリカでは1990年代に「性格教育」が行われたが、「ほとんど効果がないとわかった」(P106)とある。
「何百ものアメリカの公立学校がなんらかのかたちで性格教育のプログラムを実施しているが、多くは漠然とした表面的なもので、厳密な観察の結果、ほとんど効果がないとわかった」とある。
日本の道徳教育・学級経営も同じなのだろうか。
自分が不勉強なだけで、日本の道徳教育は、当然、アメリカの性格教育・人格教育を参考に展開しているんだろう。この一部分を取り出すだけでも、すごいところに踏み込んでしまった気がしてならない。(続く)
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