« 「つながる喜び」で、歴史が好きになる | Main | 『シンプルに考える』その2  サッカー型の組織体 »

February 11, 2016

「シンプルに考える」(森川亮)

Simple
 LINE株式会社の元社長である森川亮氏の著作に「シンプルに考える」(ダイヤモンド社)

この中でLINE株式会社の「すごい人」の共通点が記されている。

===========
 みんな、自分が好きなことだけやって生きているのです。自分が「いい」と思うもの、自分が「面白い」と思うものをずっと追求している。それを「あきらめる」とか「我慢する」ということをしない。本音で生きていると言ってもいいかもしれません。(中略)
これは「いい仕事」をする上で絶対に必要なことだと思います。
 まず、本当に好きでなければ「いい仕事」はできません。
 いいゲームをつくる人はゲームが好きですし、いいアプリをつくる人はアプリを愛しています。さまざまなゲームをやり尽くし、気になるアプリを片っ端からダウンロードして試す。好きでなければ、あそこまではできません。だからこそ、モノの「よしあし」がわかるようになる。いいモノのどこがよくて、悪いモノのどこが悪いかがわかるようになる。感性がどんどん磨かれていくのです。
 そして、彼らは人一倍「腕」を磨こうとします。自分自身の要求水準が高いから、生半可な技術では自分を満足させることができない。だから、誰に言われるまでもなく努力するのです。P61
===============

・・・このところ、しつこく提示してきた「好きなことをやれ」と題する以下の書籍と同じような主張だった。

○「ノーベル賞受賞者特別寄稿 好きなことをやれ!!―21世紀の天才たちへ」(集英社)
○「好きなことだけやればいい」中村修二(バジリコ)
○「大好きなことを『仕事』にしよう」 中村修二(ワニブックス)
○「好きなことだけやってみなはれ!」竹村健一(PHP)
○「好きなことをやれ イヤなことはするな」竹村健一(太陽企画出版)

 また、14章も鋭い指摘だった。
=============
 「失敗してもいいから、挑戦しよう」

 よく耳にする言葉です。しかし、僕はこれまで自分の仕事に対して「失敗してもいい」と考えたことはありません。たしかに、人生における最大の失敗は、失敗を恐れて何も挑戦しないことです。しかし、だからと言って、「失敗してもいい」というにはあまりにも無責任だと思うのです。
(中略)LINE株式会社の「すごい人」たちも同じ感覚で仕事に向き合っています。彼らには「失敗してもいい」などという甘えは一切ない。むしろ、自分に対しても他者に対しても、失敗には厳しい。自由な社風ですが、生半可な気持ちで仕事ができるような「ユルさ」はみじんもありません。P76・77
==============

・・・我々は授業に失敗しても次のチャンスがあると思いがちだが、授業を受ける子どもにとっては二度目のない授業である。
 「取り返しが効かない」いう恐れをもって、甘えを封じて指導に向かねばと思う。

 さて、、授業作りのアドバイスで「研ぐ」という言葉がある。無駄を削る意味だ。
 LINE株式会社は、優秀なエンジニアも重視するが、デザイナーも重視する。

◆(ITに詳しくない)「普通の人々」でも簡単に心地よく使えるものをつくり上げなければ、受け入れてもらえなくなったのです。P185

とある通りで、エンジニアが「面白い」と思う商品開発では、マニア向けに陥りがちだからだ。
===============
 本当に優秀なデザイナーは、自分の好みは一切排除して、「ユーザーにとって使いやすいかどうか」を徹底的に追求するのです。
 言い方を換えると、彼らは機能をそぎ落とすのが得意。まず最初に機能を最低限にまで絞り込む。「これがなければ、プロダクトが成り立たない」というところまで徹底的に絞り込む。それは、ユーザーに提供すべき「価値」の本質を明確にする作業でもあります。そのうえで、ユーザー・テストを繰り返しながら、より使い勝手をよくするために機能を追加していくイメージです。P185
=================
・・・授業作りにも置き換えられると思いながら、付箋を貼った。
 「何を教えるか」を最低限に絞り込み、「子どもに分かるかどうか」を吟味して授業がつくれということになるだろうか。 
 大学教授や専門家が教える出前授業は、エンジニア主体の商品開発のようなものだ。
 自分が知っている情報を中心に組み立てられ、情報をそぎ落とすことができず、授業を受ける側への配慮が二の次になってしまう。

 教材研究は、エンジニアのように、
 授業づくりはデザイナーのように。

を心掛けみようと思う。

 さて、以下は、森川氏の文章の続き。
==================
 僕は、日本の製造業に元気がない理由のひとつは、技術偏重に陥っていることにあるのではないかと感じています。技術中心に考えるから、機能をそぎ落とすことができない。その結果、ユーザーが求めていないものを生み出してしまうのです。
 しかし、そもそも日本人はそぎ落とすことが得意だったはずです。
 短歌、俳句、水墨画・・・。不純物を徹底的にそぎ落として本質をシンプルに表現することが、日本人の美意識であったのです。技術主義からデザイン主義に切り替えることによって、古来の美意識を取り戻せば、再び日本経済は元気になるのではないかと僕は考えています。P187
==================
・・・シンプルな表現は、日本人の古来の美意識であり、スチィーブ・ジョブズの追求した世界だった。 
 これも、しっかり叩き込んでおこう。

|

« 「つながる喜び」で、歴史が好きになる | Main | 『シンプルに考える』その2  サッカー型の組織体 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

教育」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 「シンプルに考える」(森川亮):

« 「つながる喜び」で、歴史が好きになる | Main | 『シンプルに考える』その2  サッカー型の組織体 »