「教育の2020年問題」に、どう対応するか。
教育の喫緊のキーワードには、「合理的配慮」「道徳教科化」「アクティブラーニング」などがある。
少し遠いけれど、保護者にとっても小学生にとっても結構大変なキーワードが「2020問題」である。
文科省はそんなふうには言っていない。いわゆる「大学入試改革問題」だ。
新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)(中教審第177号)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushi...
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushi...
文科省の報告が第一次資料になるが、なかなか読め切れない。
【新テストの制度設計、実施体制】
◆「高等学校基礎学力テスト(仮称)」については平成31年 度から、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」については平成32年度から段階的 に実施すること。
◆「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」における思考力・判断力・表現力を問う問題については、「教科型」において他教科の内容を掛け合わせつつ評価する問題と、「合教科・科目型」「総合型」として教科・科目の枠を越えて評価する問題の両方について、 平成32年度から実施すること。
などとあるが、具体的な中身がよく分からなくて、マスコミの情報(2次的資料)に頼らざるを得ない。
NHKの「時事公論」は分かりやすい。2014年11月の放送だから、最終的な答申の内容とはずれているかもしれないが、概要は分かる。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/203873.html
◆20日の中教審総会でまとまった今回の答申案、ポイントは3つです。
▽今の大学入試センター試験を廃止して、知識の活用力を問う新しいテスト「大学入学希望者学力評価テスト」を導入し、年複数回実施する。
▽高校在学中に学習の到達度をはかるため「高等学校基礎学力テスト」という新たなテストを設け、進学や就職の際の学力の証明として使えるようにする。
▽大学は、個別試験では、筆記だけでなく、小論文や面接、志望理由書など様々な物差しで学生を丁寧に多面的に評価するとともに、どんな学生が欲しいのか、そうした学生を選ぶためにどんな試験を行うのかを明らかにする。
新しいテストの導入は、「大学入学希望者学力評価テスト」が、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年度から。
「高等学校基礎学力テスト」は1年早く、2019年度からとしていますから、今の小学校高学年の児童が受験にさしかかる時期になります。
◆一般入試で大学に進む場合は、さらに「大学入学希望者学力評価テスト」を受験します。
新テストでは、今の大学入試センター試験と違って知識や技能を単独で評価するのではなく、知識や技能を活用する思考力・判断力・表現力を評価します。
そのため、教科や科目ごとにわかれている問題に加えて、複数の教科や科目にまたがる「合教科・科目型」や教科の枠組みにとらわれない「総合型」の問題もあわせて出題します。特に「読む・聞く」に偏っていると批判の強い英語に関しては、「読む・聞く・書く・話す」という4つの技能をバランス良く評価できるTOEFLなど民間の資格・検定試験の結果を換算して利用できるようにします。ただ、民間の試験の利用については、高額の受験料がかかることや、地方では受験機会が限られることなど、公平性の面からの課題が指摘されています。
結果はセンター試験のように1点刻みではなく、段階別の成績が示されます。その成績をもって各大学に願書を提出することになります。
・・・親向けの学習塾の解説は、さらに要領よくまとめられている。
ただ、当然ながら、塾の需要もあおっている。
「2020年、日本の教育が大きく変わる!」というタイトルも挑発的だ。
先の情報と重ならないように抜粋すると
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現在予定されている「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の主な概要は、以下の通りです。
✓ 国語、数学、英語での実施から
✓ 基礎学力の底上げに焦点を当てる
✓ 知識・技能を問う問題が中心
✓ CBT方式での受験
✓ 正誤式や多肢選択式など多様な出題形式をとる
✓ 高校2-3年生が対象で、年2回任意で受験ができる
現在予定されている「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の主な概要は、以下の通りです。
✓ 思考力・判断力・表現力の判断機能を強化
✓ 理数は主体的な探究活動を行う科目へ
✓ 英語は4技能(読む・聞く・書く・話す)を問う科目へ
✓ CBT方式での受験
✓ 選択式や記述式など多様な出題形式を問う
✓ 解答者の判断を要する問題も出題
◆2020年の入試改革によってスタートする「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」では、教科型の問題に加えて「合教科」「科目型」「総合型」と呼ばれる問題が出題されるようになります。そして、段階を経て、将来的には「合教科」「科目型」「総合型」のみの試験が実施されるようになっていくのです。
この「合教科」「科目型」「総合型」というのは、一体どのようなものでしょうか。
それは、各教科の区別がなくなり、理系の問題に文系の要素が入ってくるなど、総合的な学力が問われる問題です。例えば、理科の問題だけれども文章読解と英文読解ができないと回答できなかったり、社会の問題だけれども数式を解かないと答えにたどり着けなかったり、といった問題です。他にも、問題解決型の出題がされて、あらゆる教科の知識を総動員させて思考しないと解を導けないような問題も出てくると言われています。まさに、総合的な学力が求められてくるのです。
◆CBT方式(Computer Based Testing)というのはコンピュータ端末を利用して受験する方法で、受験者はコンピュータで解答を入力します。当然のことながら、パソコンでの入力に慣れておかなければなりませんし、モニター上で文章を読み、画面を操作し、自在に思考したりメモをしたりするトレーニングも必要となってきます。
http://surala.jp/method/2020problem01.html
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関心のある保護者から「教育の2020年問題には、どう対応なさるのですか?」などと尋ねられて、慌てるようでは情けない。
先のサイトが言うように
◆2020年に大学入試が大改革されるということは、2015年現在の中学1年生が大学受験をする時から、ということになります。当然、それ以降の学年は改革された新しい内容での入試が適応されることになります。
◆ この「基礎力」を身につけるためには、まず小手先のテクニックや暗記では太刀打ちできないということを理解することが重要です。ひとつひとつの概念をしっかりと理解して、あらゆる問題を解く際にそれを応用、活用できることになることが必要なのです。
ひとつひとつの概念を理解するためには、単に教科書を読んだり授業を受けたりするだけではなく、「どうしてそうなるのか」「なぜそれが成り立つのか」といった本質的な考え方を学ぶことです。
◆ 実は、既に全国学力テストにおいては、この「21世紀型能力」を問う問題が出題されるようになってきています。
例えば、下記の問題は中学国語のB問題ですが、プレゼンテーションの構成メモとスライドから、「伝える際に工夫していること」「追加情報を見せる効果的なタイミング」を問う問題となっています。 また、次年度以降の教科書編集趣意書にも、随所に「自分の考え、判断を表現する力を養う」といった記載が確認できます。このように、単に理解しているだけではなく、それを様々な場で応用して考えられるかどうかが重要視されてきているのです。こうした変化は、既に始まっているのです。
◆ 言語・数・情報スキルからなる「基礎力」を基に、論理的・批判的思考力や問題発見解決力、創造力、メタ認知といった能力を発揮して思考することを「思考力」としています。
問題を解くために必要な思考力だけではなく、問題を解いた後に新たな疑問やアイデアを考える力や、問題の解き方を振り返って次の機会に生かす力も求められてきます。特に、知っていることを答えるだけではなく、他人と考えを合わせて編集し、新しく答えを創り出す力が今後重視されていくとされています。
という程度の指摘はしっかり念頭に置いて、学校の教育活動を考えていかないといけない。
1教師が塾の考察を超えることは難しいが、塾程度のコメントを準備しておかないと保護者に相手にされない。
ちなみに、方眼ノートで有名な高橋政史氏のブログにも「2020年問題」の記載がある。
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これまでの問題=丸暗記でOK
2020年以降の問題=論理的思考がないとNG
で、単純化して考えると、
丸暗記=知っている情報を穴埋めできればOK
要は、「?(問題)」と「!(答え)」さえ知っていれば満点がとれるのに対し、
論理的思考=見たこともない「?(問い)」に対し「!(答え)」を導き出す。ただし、それだけでは点数がもらえず、肝心なのは、
「?(問い)」と「!(答え)」をつなげる「→(筋道)」が論理的に正しいかどうかが問われることになります。
これまでの問題=?と!を知っていればOK
2020年以降の問題=?→!の論理的思考が問われる
ということになるわけです。
2020年問題とは、、、知識社会化(情報を組み合わせて価値ある知をつくるとお金になる社会…Googleやfacebookのように何もモノはつくっていないのに、人が発信した情報を組み合わせるだけで、秒速で莫大の富を生み出している人たちが活躍する社会)する今、まさに、大人である私たちが遭遇している「新しい現実」にほかなりません。
つまり、2020年問題とは、これからの時代を担う子どもたちが、Googleやfacebookのような会社で活躍できる、あるいは、そうした会社を起こすことができるような人材になれることが求められている社会に対し、国の教育をシフトさせていく待ったなしの大方針なのです。
http://www.thinknote.jp/blog/1869
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知識を問うだけの試験だけではなく、問題解決能力を問う試験の必然性が高まっている。ただし、現行のB問題が、本当に問題解決能力に対応しているのかは、少し疑問なのである。
「教育の2020年問題」=大学入試改革の起点は、「学力の3要素」である。
たとえば、Z会のサイトの解説。
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すでにこのサイトでもご紹介しているとおり、
「学力の3要素」とは、
1.十分な知識・技能
2.それらを基盤に答えが一つに定まらない問題に自ら解を見出していく思考力・判断力・表現力
3.主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度
を指します。
このうち、「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」では、主に2.を問うためのテストとして
○内容に関する十分な知識と本質的な理解を基に問題を主体的に発見・定義し
○様々な情報を統合し構造化しながら問題解決に向けて主体的に思考・判断し
○そのプロセスや結果について主体的に表現したり実行したりする
力を問う出題を目指しています。
今回、記述式問題の導入という点のみをクローズアップした報道が目立ちましたが、改革の本来の目的は、試験内容そのものを「思考力・判断力・表現力」を適切に問う内容にすることです。
選択式問題でも、これまでとは傾向の違う問題が出題される可能性は高いです。すでにいくつかのサンプル問題が開示されていますが、今後の議論の進捗や開示される情報には、引き続き注意が必要です。皆さんもアンテナを高くしてほしいと思います。
http://www.zkai.co.jp/home/ikkan/2021/about/201604.html
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また、先に引用した「すらら」のサイトの解説。
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教育の2020年問題の根幹と言われている「高大接続システム改革」は、そのベースに「学力の3要素」を重視するとされています。
「学力の3要素」右の表にある通りで、これらをしっかりと習得できるような学校教育課程、更には大学入試問題へと変革するという方針が打ち出されています。
http://surala.jp/method/2020problem02.html
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・・・指導要領改訂の時期に話題になった「学力の3要素」は、学校教育法で規定されたことが大きな変革だった。
ただし、しばらく時間が経って、すっかり当たり前になっていたとも言えるし、すっかり意識から遠のいていたとも言える。
【学校教育法 第三十条 第2項】
○生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。
・・・原典と比べると、Z会も「すらら」も、やや加筆して示していることが分かる。
◆答えが一つに定まらない問題に自ら解を見出していく思考力・判断力・表現力
この「答が一つに定まらない」というところが、ポイントになるならば、いくら記述式とはいえ、答えがほとんど確定できるB問題ではおかしいのではないか、というのが自分の見解だ。
こんな風に整理してみて、世の中の動きを知らなずぎること・全く勉強不足なことが、よく分かった。
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