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July 05, 2016

「心配性(悲観主義)」にもメリットがある

 昨年、ヤクルトスワローズで、「トリプルスリー」を達成した山田選手。
 このところ、絶好調で50本のホームランも視野に入ってきたという。

  先日のテレビで、その山田選手が、
「開幕が不安」
「いつも不安」
「心配で仕方ない」
と答えている場面があった。
 
  「油断したらダメになる」と自分を戒めて、常に努力するタイプなのだろう。

 これが、いわゆる「防御型」である。

①「責任を果たし、ミスを避ける。すでに持っているものを失わない」が「防御型」。
②「危険」「罪」「処罰」「痛み」などのネガテイブなものを人生から排除しようとする。
③「警戒心」が高まったり、「最悪の事態」を想定したりするとモチベーションが上がる。
④失敗するかもしれないと感じるとやる気を失うが、戒めとなるような他人の失敗談を聴くとモチベーションが上がる。
⑤注意深く慎重な「保守的偏向」、危険を避け、具体的で現実的な行動をする。

・・・「悲観的」と言うとマイナスに思われがちだ。
しかし、悲観が「成功のカギ」になりえるという意味では、山田選手のスタンスは、決してマイナスではない。

 一方、「これだけやったから大丈夫」と自分で自分を励ますようなタイプは「獲得型」だそうだ。
 一面的な指摘になるが、イチローの卒業文集の言葉は「獲得型」の思考をよく表している。

◆ぼくは3才の時から練習を始めています。
3才~7才までは、半年位やっていましたが、3年生の時から今までは、365日中、360日は、はげしい練習をやっています。
だから一週間中、友達と遊べる時間は、5時間~6時間の間です。
そんなに練習をやっているんだから、必ずプロ野球の選手になれると思います。

①「何かを成し遂げる」「理想的な能力を身につける」が「獲得型」。
②「愛」「賞讃」「報酬」「喜び」などのポジテイブなもので人生を満たそうとする。
③成功の見込みが高いと、やる気や自信がわいてくるし、成功者の話を聞くとモチベーションが上がる。
④達成すると、喜び、興奮など高揚した気分を感じる。
⑤積極的で「リスク」恐れない「リスク偏向」、創造的で新しい発想をする。

・・・「ポジテイブ」と言うと、いいことずくめに思われがちだが、油断は禁物である。

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◆ポジテイブ思考の人は、物事がうまくいくと信じているために、起こり得るさまざまな問題を十分に検討しようとしません。
そのために準備を怠ったり、危険な行動を取ろうとします。(中略)
 一方、ネガティブ思考の人は、つねに最悪の状況を想定します。物事がうまくいかなくなる状況も含め、さまざまな可能性に備えようとします。

◆自分には人並み以上の能力があり、幸運の女神は自分に微笑むと誰もが信じているという現象は「レイク・ウオビゴン効果」と呼ばれます。
 非現実的な楽観主義は、自分でコントロールできる出来事(かなりの肥満になる)、稀な出来事(破産する)、とくに重大ではない出来事(思っていたよりも試験のできがよくない)などの状況でよく見られます。
 これらの状況には失敗しないための対処策があります({体重を測る」「家計簿をつける」「試験勉強をする」)が、ポジティブ思考をしていると、自分には問題が生じないと考えるため、対処策を取ろうとしなくなるのです。
 「トラブルのもとになる非現実的な楽観主義」と「目標達成に欠かせない現実的な楽観主義」との違いは、楽観的になる理由の違いから生じます。
 自分は適切な計画を立てたり効果的な戦略を見つけることによって成功するか失敗するかを自分でコントロールできる、そう考えて楽観的になるのが現実的な楽観主義です。
 この考えは自信と意欲を高めます。非現実的な楽観主義は、計画や努力とは無関係の要素ーたとえば才能(わたしは頭がいいから成功する)や運(自分はラッキーだからうまくいく)-を根拠にします。そのため必要な準備を怠り、状況が悪くなるとすぐにあきらめてしまうのです。

 『やってのける』ハルバーソン著 大和書房 p215・216
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・・・ポジテイブ思考は大事だが、「能天気な楽観主義」は問題がある。
 自分の問題を改善する努力もせずに、「何とかなるさ」と開き直ることは、何の改善にもならない。
 そういう意味では、努力を怠らないイチローが「楽観主義者」だとは誰も思わない。

 黒澤明監督の言葉に

 「悪魔のように細心に! 天使のように大胆に!」

というのがある。書名になっている。
 これに倣うと

 「悪魔のように防御せよ! 天使のように獲得せよ(攻撃せよ)」

とでもなるだろうか。
 双方のよさを持ち合わせた生き方がよいのかもしれない。

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