「やってのける ~意志力を使わずに自分を動かす~」
「『なぜ』を考えるとやる気が出る」という主張を読んだ。
これは、「趣意説明の法則」と重なるものだ。
「早く教科書を広げて、暗記しなさい」と具体的な行動を示すより、「この勉強は大学入試に役立つよ」と、行為の意味や意義を示す方がやる気が出ると言う。
「あと1時間、PCに向かってキーを打て」と命ずるより、「このひと頑張りがキャリアアップに結び付くよ」と伝える方がいいのだとも。
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◆「なぜ勉強するのか」という理由を理解することで、意欲が高まるのです。
丸暗記しなさいと言うだけでは、子どもは熱心に机に向かわないでしょう。(p38)
◆理由が明確になることで、小さな行動が、大きな目標を達成するために一歩に変わる(p40)
「やってのける ~意志力を使わずに自分を動かす~」
ハイデイ・グラント・ハルバーソン (大和書房)
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・・・まさに、「趣意説明の原則」である。
ただし、難しい行動をさせるときは、「なぜ」より、「何」を示せとある。
初めて掃除機を使うような人なら、「家の中をきれいにしよう」よりは、「この道具を使ってホコリを吸い取ろう」
の方が行動させやすいと言う。
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「何」を基準にすると、具体的な行動に意識が集まります。(中略)
難しい何かに挑むときは、いったん「大きな絵」は忘れ、目前のタスクに集中するとよいのです。
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・・・ 「目前のタスクに集中させたいなら、具体的な行動指示を示す。」という指摘は、「ごみを5つ拾いましょう」に代表される指示(号令)の原則と重なるところだ。
➀行動のみを端的に示すのが「号令」
②趣意を示して具体的な行動を指示するのが、「命令」。
③趣意を示して、行動は任せるのが、「訓令」。
あらためて、この3つの指示について調べてみると、相手に合わせて(あるいは難度度に合わせて)使い分けることの大事さが書かれているWEBがあった。
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訓令で十分な社員に、「号令」で指揮したら?
仕事に意味を見いだせなくなって、辞めていきます。
号令の必要な社員に、「訓令」で指揮したら?
上司の仕事の指示が悪いと不満を口にします。
”号令”の必要な社員に”訓令”で指揮しても、
期待した成果は得られません。役に立たないのです。
”訓令”で充分な社員に”号令”で指揮したら
働くことに意味を見出せなくなります。
そして、辞めてしまいます。
指示命令する
・相手の能力によって、
・役職によって、
訓令・命令・号令を使い分けることがとても大切です。
これがマッチしていないと、会社にとっても社員にとっても、 悲しい結末に向かいます。
http://www.teoria.jp/?p=967
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日常の号令・命令・訓令の具体例 ----
「明日八時東京発ヒカリの切符を一枚買ってきてくれ」と号令すれば、売り切れたと言われた女の子は手ぶらで帰ってくる。
それで腹を立てるなら、命令すべきである。
「明日十二時までに大阪に着きたい。八時のヒカリを一枚たのむ」と命令すれば、売り切れのときは七時五十分のヒカリ、それもだめなら七時のコダマを買ってくるので、朝少し早く起きるだけで用は足りる。
「明日十二時、大阪で大切なお客に会いたい。よろしく頼む」と訓令すれば、社長の疲労を考える庶務課長は飛行機を手配し、こちらの顔色によって今夕のヒカリにし、大阪にホテルを予約し、あすの難問題に備えるエネルギーを蓄えさせてくれる。
部下が思うように動かなくて腹が立つのは、たいてい自分が号令を使っている場合である。
http://www.heihou.com/page_10-1.htm
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向山洋一氏の著作でも示されている「指示の原則」は、やっぱりすごい。
しかし、具体例がないと、なかなか伝わらない。
号令・命令・訓令について、具体的な場面で例示できるように考えてみたい。
さて、おまけ。
「やってのける」には、他にも面白い箇所がたくさんある。
近い将来を想像した場合は、具体的な描写を好み
遠い将来を想像した場合は、抽象的な描写を好む。
遠い将来を抽象的な「なぜ」の視点で考えると、メリットは注目するが、実際に実行できる可能性を考えない傾向にある。
具体的に「何」を考えると、その目標が本当に実現できるか、成功の見込みや障壁について考える。
締め切りが迫ると、後悔するのは、実現の可能性を現実的に検討していなかったからだと言う。
◆人は、遠い将来について考えるときは「なぜ」の視点に傾きがちになり、メリットに気を取られてしまいます。
実際にそれを行うときが来ると悪夢のような体験に変わってしまうことがあるにもかかわらず、現実的な側面にはあまり注意を向けられなくなるのです。
逆に近い将来の行動では、わたしたちは反対のミスを犯します。
興味深く、メリットが得られそうな話であっても、実行すうのは面倒だと考えてしまい、せっかくのチャンスを逃してしまいます。(p46・47)
翌週までの提出を求められた学生の大半は「容易だが退屈」な課題を選び、内容よりも容易さを優先した。
一方、九週間後の提出を指示された学生の大半は「難しいが魅力的」な課題を選択したと言う。
◆このように、遠い将来について考えるとき、わたしたちは現実的な考えよりも、メリットを優先させる理想主義者の視点に立ちます。
近い将来について考えるときは、ビジネスライクな現実主義者の視点に立ちます。(中略)
つまり、予定を決めるときは、近い将来か遠い将来かどちらについて考えているかを自覚し、それが自らの思考にどう影響しているかを考慮すると、よい判断がしやすくなります。(p48)
◆ 「何」に注目すると、行動を「先延ばし」しにくくなるという利点もあります。(中略)
何をすべきかを意識することで、人は具体的な行動に着手しやすくなり、目標に向かってまっすぐ進めるようになります。逆に、理由ばかりを考えていると、なかなか実行に移せません。(中略)
「大きな絵を思い浮かべる(理由を考える)」と達成後のメリットをイメージしやすくなり、意欲が湧き、自制心や忍耐力が高まります。
「次の一歩」に注目する(具体的な行動を考える)と、細かい手順に集中することで難しく不慣れなことも行いやすくなる。先延ばしせずに行動をしやすくなるなどの利点があります。
大切なのは、「なぜ」と「何」のどちらかに偏ることなく、対象の目標を達成するためにはどちらの考えを持つべきかを判断することなのです。(p49・50)
・・・目標を具体的に設定させるために、何度も「SMART」を引用する。
S pecific = 具体的、わかりやすい
M easurable = 計測可能、数字になっている
A greed upon = 同意して、達成可能な
R ealistic = 現実的で結果志向
T imely = 期限が明確、今日やるなど
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