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September 04, 2016

「非才!あなたの子どもを勝者にする成功の科学」

Hisai_2
 グラッドウエルの「天才 成功する人々の法則」を昨年読んだ。なかなか興味深い1冊だった。
「一万時間のルール」などが、よく分かった。
http://take-t.cocolog-nifty.com/kasugai/2015/12/post-6f99.html
http://take-t.cocolog-nifty.com/kasugai/2016/01/post-a238.html

 今回読んだ「非才!あなたの子どもを勝者にする成功の科学」は、グラッドウエルの「天才」と合わせて読むことが前提になったような本だ。

 原題は、
Matthew Syed Bounce:Mozart,Federe,Picasso,Beckham,and the Science of Success
マシューサイドのBounce、モーツァルト・フェデラー。ピカソ・ベッカム 成功の科学

 「Bounce=はずむ?」の意味が、どうつながるのか分からなくて、「非才」という邦題の意味も、よく分からなかった。

 とりあえず、読書メーターのコメントを読むと、内容が分かりやすい。
 http://bookmeter.com/b/4760138382

 天才と呼ばれる偉人の成果は、才能でなく努力の蓄積によることを、具体例を挙げて説いている。
 多くの成功者は、圧倒的な練習時間の蓄積で、他から優位に立っているに過ぎないことが分かる。
ただし「一万時間ルール」に終始しているわけではない。 

◆人びとが「あたしには語学の才能がないから」とか「おれの頭は数学向きじゃないんだ」とか
「スポ―ツには体がついてかないんだよ」とか言って、自分の可能性を否定する人がどれほどいるか考えてみよう。そういう悲観論の証拠はどこにあるだろうか?しばしばそれは、ものの二、三週間ほど、あるいは、二、三か月ほど、あまり身を入れずにやってみた結果にもとづいた発言だったりする。科学の示すところでは、傑出性の域に突入するには何千時間もの練習が必要なのだ。(P22)

の部分が、単なる「練習時間=量」の問題だとしたら、次の部分が「質」の問題だ。


◆「ふつうの人が練習するときには、楽にできることに集中したがる。エキスパートの練習はちがう。それはうまくできないことーあるいはぜんぜんできないことーをやろうとして、相当量の集中した継続的な努力おこなうのだ。各種領域での研究を見ると、自分のできないことを練習しないと、なりたいようなエキスパートになれないことがわかる。」
 本書ではこれまで、頂点に立つために必要な練習の量に焦点を当て、それが最短でも10年間におよぶ膨大な時間であることも見てきた。だが、ここではもっと肝要な一面へと掘り下げたい。つまり練習の質だ。頂点に立つ人間たちが最高の地位を獲得するのは特別な学習が必要とされ、一万時間を一時間たりとも無駄にしないために深い集中力が必要となる。
 エリクソンはこれを「集中的訓練」と称して、そのほかのほとんどの人間がするものと区別している。ここでは「目的性訓練」と呼びたい。なぜか?意欲的なチャンピオンたちの訓練には、特別な不変の目的があるからだ。それは進歩である。毎秒、毎分、毎時間、変わることなく心身ともに全力を尽くし、能力の限界をこえるところまでみずからを駆り立て、トレーニングの終わりには文字どおり生まれ変わっているほど徹底的に取り組もうとする。
P89・89

◆中国が卓球でとても成功している謎がたちまち解けた。長年、中国の成功は反応速度の速さ、秘密の食生活、いくつもの神秘的な要素のせいにされてきた。長時間訓練しているからだとの意見もあった。
だが、より長く訓練していたわけではない。よりかしこく、より深く、より目的をもって訓練していたのだ。中国の選手はつまるところ、ターボドライブで訓練していたのだ。P91

◆世界に通用する水準のパフォーマンスは、少しばかり手が届かないところにある目標に向けて、そのギャップの埋め方をはっきりと意識して努力することで得られる。やがて、たえまないくり返しと深い集中力をもってギャップが埋められ、そしてまたほんの少し手が届かない新たな目標が設定されるのだ。P92

◆一流スケート選手と二流以下のスケート選手では、遺伝子にも性格にも家庭環境にも大きなちがいは見られなかった。ちがいがあったのは練習の種類だ。すぐれたスケート選手はつねに現在の能力をこえるジャンプを試みるが、ほかのスケート選手はそれをやらない。
 注目してほしいのは、一流のスケート選手がより難易度の高いジャンプに取り組んでいるだけではないことだ。すぐれた選手にはどのみちむずかしいジャンプが求められる。
肝心なのは、一流スケート選手が自分のすぐれた技量から見て、もっと難易度が高いジャンプに挑戦することだ。
(中略)目的性訓練とは、少しばかり力がおよばなくて実現しきれない目標をめざしてはげむこと。現在の限界をこえる課題に取り組んで、くり返し達成に失敗することだ。傑出とは、快適な領域から踏み出し、努力の精神をもってトレーニングにはげみ、艱難辛苦の必然性を受け入れることにかかっている。じっさい、進歩は必然的な失敗の上に築かれる。これは、プロのパフォーマンスにかんするもっとも重要なパラドックスだ。(P95)

・・・ 「コンフォートゾーン」=「現状維持」=「ぬるま湯」に関する記述もある。P107/108

◆わたしの母は長年秘書をしていて、秘書になる前にタイピングを習った。数カ月の練習で、一分に70単語をタイプできるようになったが、そこで壁にぶつかり、秘書をしているあいだにそれ以上伸びることはなかった。理由は単純だ。このスピードが作業にありつける水準で、ひとたび働きはじめてしまうと、上達することが大事であるとは思えなくなったからだ。タイプをしているときは、べつのことを考えていた。
 これがほとんどの人のやり方だ。自動車の運転などといった新しい課題を習うときは、技術を身につけるために集中する。最初は時間がかかるしおぼつかないし、動作が意識的に制御される。だがなじむにつれて技術は潜在記憶に取り入れられ、あまりに考えなくなってしまう。ハンドルを握ってほかのことに関心を向け、運転する。これが心理学の言う「自動性」だ。

・・・厳しい指摘だ。
 他ごとを考えてもできるようになるほど「自動化」できることが、非常に好ましいことだ。
 しかし、その自動化で満足してしまったら、進歩はそこで終わってしまう。

◆ノエル・テイジ―教授は、三つの同心円を描いて解説している。内側の円が快適ゾーン、中間の円が学習ゾーン、外側の円がパニックゾーンだ。快適ゾーンの外で思い切ってやってみようとしなければ、何千時間かけたところで少しも上達しない。パニックゾーンに迷いこむのも同じように無益だ。現在の能力をはるかにこえる内容を要求されるからだ。
 だが、学習ゾーンにいれば、ほぼ際限なく向上を続けられる。

・・・1万時間という「時間の目安」は分かりやすい。
 しかし、「質の目安」はどう自覚すればよいか、どう客観化すればよいかが難しい。
 「自分はこれだけがんばっている」と思っていても、はたから見れば「全然がんばってないよ」と思えることはいっぱいある。
 スポーツの成功者の多くの場合は、練習の質を吟味する指導者がいて、適切な難易度を指示を出す。
 「お前の限界は、そんなところじゃない」と見極め、監視してくれる。
 コンフォートゾーンに浸かって自己満足で終わってしまわないように自分を叱咤することは、なかなか難しい。
 だからこそ、成功者は限られるのだということが、よく分かった。

◆世界に通用する水準のパフォーマンスは、少しばかり手が届かないところにある目標に向けて、そのギャップの埋め方をはっきりと意識して努力することで得られる。
やがて、たえまないくり返しと深い集中力をもってギャップが埋められ、そしてまたほんの少し手が届かない新たな目標が設定されるのだ。P92

・・・少しずつ難度を上げていく方法の有効性を説いている。

◆(一流スポーツ分野の)すべての成功しているシステムには一つの共通点があることに気づかされる。目的性訓練の原理を制度化しているのだ。
最大の卓球王国である中国にはマルチボール・トレーニングがあるし、もっとも成功しているサッカー王国ブラジルにはフットサルがある。
トップのバスケットボールチームは「エキストラ」を使う。そうした具合だ。P101

・・・そうだろうか? 一流スポーツ分野でなくても、小中学校の体育の授業レベルでも、ハンデをつけて、「目的性訓練」を行っているではないか。
ドッチボールでボールの数を増やしたり、コートの大きさを変えたりする。
小学校でバスケットを指導していた時は、人数のハンデ戦を行った。中学校の陸上部では、女子を男子と一緒に走らせた。

◆「すでにうまくできることを練習したいと思うのは、たんなる人間の性だ。ものすごく楽だし、楽しいからね。だが悲しいかな、(ゴルフの)ハンデイを減らす効果はあまりない。」

とある。その通りだ。だから、「ぬるま湯」が好きな子どもは嫌がるが、レベルアップを望む子は、ハンデ戦に果敢に挑む。
 限界を作るな・ぬるま湯に浸かるな・現状に安住するな、と叱咤激励したいところだが、楽をしたがる人の弱さを自分1人で打ち勝つのは難しい。だからこそ、コーチの叱咤激励が必要になる。
本書では、コーチの必要性を「フィードバック」という言葉で表現している(P114/115)。

◆フィードバックの重要性は、科学にたずさわる人にはおなじみだ。科学的知識は検証を通して理論の不備が明かされることで進歩して、それによってまた新しい理論への道が開かれる。
検証できない(すなわちフィードバックと無縁の)理論は、決して改良されないのだ。
(中略)つまりフィードバックとは、知識の獲得へと駆り立てるロケット燃料であり、これがなければどれだけ練習を積んでもその境地には達しないのだ。

◆コーチはたんにはげまし、集中ぶりを分析してくれるだけでなく、選手が見のがしたかもしれない小さな技術的ミスに目を光らせている。
コーチの強みは、選手に欠けている視点・・外から内を見る視点をもっているということだ。
選手は屋内で自分の練習風景をおさめたビデオを観るときだけ、第三者の視点にアクセスできる。これでコーチと練習について話し合うことが可能になり、さらなるフィードバックがもたらされる。

・・・フィードバックが繰り返される状態を「フィードバックループ」と呼んでいる。
 練習の成果は、この「フィードバックループ」の有無、「フィードバックループ」を支える指導者の有無に規定されるのだ。

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