「エンゲージメント」再録
数回「エンゲージメント」について書いてきたが、復習としてコンパクトにまとめてみた。
文科省が出した「教育課程企画特別部会 論点整理」の参考資料P193に「学習意欲と学習プロセスとの関係 エンゲージメントと非エンゲージメント」と題した資料がある。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/09/24/1361110_2_5.pdf
表の中で、掲げられた言葉が印象的だった。
◆エンゲージメント・意欲的な姿
一生懸命に取り組む・努力する・持続する・熱心・専念・熱中・没頭・情熱的・積極的・チャレンジ・熟達を目指す・最後までやり抜く・細部にまで丁寧で几帳面である
◆ 非エンゲージメント・意欲的でない姿
受動的で先延ばし・あきらめる、身を引く・興味がない・回避的・無関心・無目的・あきらめる・気が進まない・反抗的・頭が働いていない
「意欲」「モチベーション」「参加度」と同じような意味で用いられているが、次のサイトでは、社員のやる気向上(内発的な動機付け)に絡んでいる。http://www.yaruken.com/method/
◆学校の勉強になると、あまり物覚えがよくなかったり、創造性を発揮しない子が、ビデオゲームになると、そこで登場するキャラクターの名前を全部記憶し、ゲームの裏技を見つけるのに創造性をいかんなく発揮する子がいます。
学校のことになるとおとなしく沈んだような顔をしているのに、ビデオゲームのことになると目を輝かせてやる気満々、インスパイアされた状態になっている。
同じ子供がやる気を持ったり持たなかったりするのは何故でしょうか?
やる気の境界線は、どこにあるのでしょうか?
おそらくその答えは、おわかりかと思います。
そうです。やる気は、自分が好きなこと、大切に思っていること、重要なことに対して起るものなのです。
そして、好き、大切、重要なこととは「価値観」なのです。
私たちは、自分の価値観に合致していることに対しては、やる気が自然と起り、誰に指図されることもなく積極的に取り組みます。しかし、価値をおいていないことについては、自分で行動を起こすことは滅多にありません。誰かに指図されたり、行動しなければならない、行動する必要がある場合のみ嫌々ながら行動します。
このように私たちのやる気は、個人それぞれが持つ価値観が大きく影響します。
社員の仕事のやる気が低いのは、仕事と自分の価値観のつながりが見えない。仕事と自分の価値観の間に関連性を見出せていない状態と言い換えてもいいでしょう。
もし、その社員が今の仕事が、自分の価値観を満たしてくれることがわかれば、その社員にとって仕事の意味は大きく変わるはずです。そして、仕事のやる気はずっと高まることでしょう。(中略)
このように、これまでネガティブに捉えていた業務と自分の価値観との間に明確なリンクが認識できたとしたら、その中間管理職のやる気は、グッと上がります。
重要なのは、これが報酬や昇進といったアメ(外からのモチベーション)ではなく、自分にとっての仕事の意義に気づいたこと(インスピレーション)によってやる気が上がることです。
・・・また、次のサイトも、「内発的動機付け」の意味合いが強い。
http://g-hrd.com/stepbystep/advance/advance-chap11.html
内発的動機づけは、外発的動機づけと比べて、創造性、責任感、行動の健全さ、持続性といった点で勝ると言います[*8]。ハーバードビジネススクールのアマビール教授によると、人は仕事への興味、満足感、挑戦に動機づけられた際に、最も創造性を発揮するそうです。金銭などの外的報酬に動機づけられた人は、早く確実に成果を上げようとして、前例に沿って手堅い手段を取りがちです。そのため、試行錯誤自体を楽しみ、より創造的な解決法を粘り強く編み出すことにつながらないのです[*9]。
1万人以上の米国の科学者や技術者を対象にした研究では、知的な挑戦、自律性、改良を求める内発的欲求が高い人は、金銭的報酬を求める外発的欲求が高い人に比べ、より多くの時間を仕事に費やしました。知的な挑戦への欲求は、生産性(この研究では特許出願数)向上に最も関連することも明らかになりました。外発的欲求よりも、内発的欲求、特に知的な挑戦への欲求に動機づけられた科学者の方が、イノベーションに貢献していたのです[*10]
・・・、このサイトでは、さらに「フロー」に言及している。
◆近年注目されているのが、米国の心理学者チクセントミハイ博士が唱える「フロー理論」です。Y.K.さんには、仕事や遊びに集中しすぎて我を忘れ、あっという間に時間が経って「楽しかった!」と感じた経験がありませんか?例えば、コンピューターゲームに没頭している時に生み出される、頭はクリアで心は高揚し、活力を感じるような瞬間です。博士は、ロッククライマー、チェスプレーヤー、バスケットボール選手などへのインタビューを重ね、高いパフォーマンスを上げる人たちが、高度に集中している時に体験する最高の瞬間があることを突き止めます。そして、その高揚した心理状態を、「フロー(Flow)」と名付けました[*13]。
博士がインタビューしたビジネスリーダーたちは、「自分を成長させてくれる新しいチャレンジが大好きで、仕事が楽しくて仕方ない」、「興味あることを心の底から楽しんだ結果、成功した」と話します。定型作業に携わる作業者の中でも、自身の作業がいかに手応えがあり、満足感を得られる行為かを熱く語る人がいました[*13]。このような人たちは、職場においてフローを見つけ、仕事を心から楽しんでいるのです。
チクセントミハイ博士は、フローが機能している最適な職場として、創業期のソニーを挙げています。ソニーの設立趣意書には"技術者が、社会の必要性に応えながら喜びを持って思いきり働ける職場づくりを目指す"という意味の一節があります[*14]。博士は、ソニーの半世紀にわたる成功は、このビジョンを重んじ、職場でフローを実現した結果だと賞賛します[*13]。ソニーの元上席常務で、CDやAIBOを開発した土井氏も「創業期のソニーが大躍進した理由は、社員全員がフローを体験する"燃える集団"だったからだ」と語っています[*15]。
・・・また、このサイトの「チャプター1」でも、内発的動機づけの重要さが説かれているので、勉強になる。
http://g-hrd.com/stepbystep/advance/advance-chap01.html
◆「努力すれば能力は伸びる」の指導法
能力固定観を持つ人は、自分が正しいか、他者から高く評価されるか、に関心が向きます。失敗できないという焦りから、簡単にできることにしか手を出さず、上達するのに時間がかかる難題への挑戦を避ける傾向があるようです。さらに、一度失敗するとやる気を失いやすいといいます。一方、能力変化観を持つ人は、他者からの評価ではなく、以前に比べて、自分がより大きな成果を出せているか、スキルや知識が高まっているか、など、自身の成長に関心が向く傾向があるようです。自分が成長するために、難しい課題に挑戦し、根気よく学習を続けられるのです。
能力変化観を養ってもらうには、他者に勝てたか、上手にできたか、という目先の成果を強調するのではなく、能力をどれだけ伸ばせたか、という個人の学習目標を重んじるとよいでしょう。評価の力点を、他者との相対比較ではなく、本人の成長度に置き、本人の仕事への取り組みプロセスに着眼したフィードバックを繰り返します。
◆「能力」でなく「努力」に焦点を当てよう
もしかしたら、Aさんは無意識に身に付けた能力固定観のせいで、失敗への恐れから学習意欲を失っているのかもしれません。(中略)
「頭がいいのね」と能力をほめられたグループの生徒たちは、失敗して能力が低いと思われたくないため、その次からは新しい問題にチャレンジしなくなりました。「頑張ったのね」と努力をほめられたグループは、9割が新しい問題にチャレンジし続けます。さらに難易度の高い問題が出されると、頭の良さをほめられたグループは、解けないことを失敗と感じて「自分は頭が悪いのだ」と思い込み、問題を解くこと自体に興味を失います。一方、努力をほめられたグループは、解けなくても「もっと頑張らなくちゃ」と考え、難しい問題を解くことに楽しさを感じるようになったのです。(中略)
ドゥエックは、「優れた教師は、知力や才能は伸ばせると信じており、学ぶプロセスを大切にする」と述べています。ある調査によると、能力固定観の考え方をベースに1年間指導を行った教師のクラスでは、成績の良い生徒もそうでない生徒も当初の学力差が期末まで変わらなかったのに対し、能力変化観のもとに指導した教師のクラスでは、当初の成績にかかわらず期末にはどの生徒も良い成績を修めたそうです。
※Duckworth Grit - アンジェラ・リー・ダックワース 「成功のカギは、やり抜く力」
TED https://www.youtube.com/watch?v=_VHWLjT3pjA
「モチベーション3・0」(ダニエル・ピンク著)にも、このワードが出てきた(P192)。
従順から積極的な関与へ
自律(オートノミー)の反対は統制(コントロール)だ。行動という羅針盤において、この二つは対極に位置しており、両者はわたしたちに異なる目的地を指し示す。すなわち、統制は従順へと、自律は関与(エンゲージメント)へと導く。
この「エンゲージメント」の部分には、訳注として
◆本来は「関与」「絆」などを意味する。最近は、「仕事に対する真剣な取り組み」、さらに「個人と組織が一体になり、双方の成長に貢献し合う関係」を指すとあり、P194には
◆アメリカでは、従業員の50%以上が仕事にエンゲージしておらず、約20%が意識的にエンゲージしていないとわかった。 (中略)労働人口のほんの2、3%しか仕事に自発的な関心を示さない国もあるという。
という叙述もある。
また、次のサイトも興味深い。
◆会社の社員への期待(仕事のミッション)をリンクさせて、社員のやる気を内側から向上させる手法を『バリュー・エンゲージメント』と呼びます。
として、社員のやる気向上(内発的な動機付け)について、詳しく述べている。
◆学校の勉強になると、あまり物覚えがよくなかったり、創造性を発揮しない子が、ビデオゲームになると、そこで登場するキャラクターの名前を全部記憶し、ゲームの裏技を見つけるのに創造性をいかんなく発揮する子がいます。
学校のことになるとおとなしく沈んだような顔をしているのに、ビデオゲームのことになると目を輝かせてやる気満々、インスパイアされた状態になっている。
同じ子供がやる気を持ったり持たなかったりするのは何故でしょうか?
やる気の境界線は、どこにあるのでしょうか?
おそらくその答えは、おわかりかと思います。
そうです。やる気は、自分が好きなこと、大切に思っていること、重要なことに対して起るものなのです。
そして、好き、大切、重要なこととは「価値観」なのです。
私たちは、自分の価値観に合致していることに対しては、やる気が自然と起り、誰に指図されることもなく積極的に取り組みます。 しかし、価値をおいていないことについては、自分で行動を起こすことは滅多にありません。誰かに指図されたり、行動しなければならない、行動する必要がある場合のみ嫌々ながら行動します。
このように私たちのやる気は、個人それぞれが持つ価値観が大きく影響します。
社員の仕事のやる気が低いのは、仕事と自分の価値観のつながりが見えない。仕事と自分の価値観の間に関連性を見出せていない状態と言い換えてもいいでしょう。
もし、その社員が今の仕事が、自分の価値観を満たしてくれることがわかれば、その社員にとって仕事の意味は大きく変わるはずです。そして、仕事のやる気はずっと高まることでしょう。(中略)
このように、これまでネガティブに捉えていた業務と自分の価値観との間に明確なリンクが認識できたとしたら、その中間管理職のやる気は、グッと上がります。
重要なのは、これが報酬や昇進といったアメ(外からのモチベーション)ではなく、自分にとっての仕事の意義に気づいたこと(インスピレーション)によってやる気が上がることです。
http://www.yaruken.com/method/
外からのモチベーションではなく、内からのモチベーションが大事というのは、『モチベーション3・0』のメインの主張である。 このサイトが言う「価値観」は、ダニエル・ピンクが言うところの「目的」に相当すると言えよう。
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