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October 09, 2016

「GRIT」と、「愚」と、「鈍」

Grit_2


 「GRIT」の次の箇所(P78)を読むと、成功は一夜にして得られないことがよく分かる。

◆「たしかに、才能は生まれつきのものだ。だがスキルは、ひたすら何百時間も何千時間もかけて身につけるしかない」

◆「努力によってはじめて才能はスキルになり、努力によってスキルが生かされ、さまざまなものを生み出すことができる。」

・・・訳の問題かもしれないが、「やりぬく力」=「情熱プラスねばり強さ」だとしても、それが「努力」「持続力」「忍耐力」「意欲」「我慢」「克己心」「向上心」「がんばる」などと、どう区別すればよいのかが難しい。
 学生に言い含める形で「やり抜く力」を解説したくだりは、語句整理の参考になった。(P79~81)

◆「やり抜く力っていうのは、瞬発力じゃなくて持久力のことなのよ」
◆「目標は次々に変わるようでは・・・まったく別の分野にあれこれ手を出しているようでは、だめでしょうね」
◆「ものすごくがんばるだけでは、やり抜く力があるとは言えないの」
◆「専門知識をしっかり身につけるのも、難しい問題の解決法を見つけるのも、ほとんどの人が思っている以上に、ものすごく時間がかかることなの。」
◆「そして、これがいちばん重要なこと。やり抜く力は、自分にとってかけがえのないことに取り組んでこそ発揮されるの。」

・・・日本古来の「努めて止むな」「継続は力なり」などの言葉と重なる。努力の本質もまた「持久力」である。
 そのようなワードの中で、「愚直の一念」=「愚かしいほど実直に、一念を貫く」という言葉が浮かんできた。

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これは渡辺淳一が「公園通りの午後」という短編集の中で、東大内科の呉建教授について語った言葉です。
彼は、当時の指導教授から、「心臓」とだけ言われて研究テーマを与えられたのですが、当時心臓の研究は迷路とされていて、周りからも「そんな出口の見えない研究をやってどうするんだ」と言われ続けていた時代です。
それでも呉教授はひたすら心臓の研究に取り組み、10数年後に大きな成果を上げることが出来たんです。
この実話を渡辺淳一が「愚直の一念」という言葉で紹介していました。
僕もかつて、大学の先輩に活性酸素とか特異性のない物質の研究なんてやめた方が良いと言われたことがあります。
それでも、めげずに活性酸素の研究をやっていますから、好きな言葉ですね。重なりますよね。
http://www.gs-medsci.med.tohoku.ac.jp/newlyappointed/2013...
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 こうして「愚直」を調べていたら、続いて、「運・鈍・根」の「鈍」につながっていった。

 「運根鈍(うんこんどん)」
◆成功するためには,幸運と根気と,ねばり強さの三つが必要であるというたとえ。
◆何事においても成功するには、天運に恵まれること、ささいなことにこだわらず神経が太いこと、根気強いこと、この三つが必要だという意味。

 以下は、田原総一郎氏の発言。
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近江商人について、もう1つ祖母に言われていたのが、「運・鈍・根」です。人間は「運」が良くないといけない。運がいいとか悪いとかじゃなく、いかに運を引き込むかが重要なのです。
そのためにはまず「鈍」になれ、馬鹿になれという事です。
要領良くやろうとしたり、こざかしくやろうとしたりはいけません。馬鹿になって、要領よくやるのです。
世の中で活躍する人は不器用な人間が多いものです。器用な人間は何でも出来ますから、器用貧乏で使われてしまいます。
馬鹿になって、それで「根」気強くやれば運は開ける、これが「運・鈍・根」なのです。
http://www.service-js.jp/modules/contents/?ACTION=content...
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運がいいかどうかということは、人生にとって大切なことで、人間は運がいいほうが決まっている。しかし、運はあらかじめ決まっているものではなく、自分の力で切り開いていくものだ。そして運を味方につけるには、鈍感になることだ。
物事に敏感な人間は、すぐにどちらが得かを比べたり、「こんなことをしていて何になるんだろう」と思って途中で投げ出したりしてしまう。
http://tokumoto.jp/2016/07/17342/
http://systemincome.com/35392
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 続いて、平成18年度東京大学学位記授与式総長告辞
 「知のフロントランナー」の説明から「運鈍根」の「鈍」につなげていく。
 長いが読みごたえがある。
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 それぞれの活動の場において、勇気と能力と責任感をもって、知の最先端に立ち、未知なるものに挑戦し、困難な課題を解決しようとする人はすべて、知のフロントランナーの有資格者です。皆さんは、知のフロントランナーとなるために必要な能力を、確実にお持ちです。あとは、先頭に立つ勇気と責任感を身につけて、それぞれの活動の場で知のフロントランナーを目指してください。
私がこれからお話することは、知のフロントランナーを目指すうえで必要と思われる三つの勧めです。

 三つの勧めの第一は「鈍の勧め」です。
「鈍」とは鈍感の「鈍」です。しばしば「運・鈍・根」と3つ続けて、「事を成し遂げるのに必要な3条件」の意味で使われます。
この場合、「鈍」は愚直を、「運」は幸運を、「根」は根気を指します。
私は「運・鈍・根」のうち、「運」を重視しません。幸運が時に重要な役割を果たすことは否定しませんが、科学者は幸運を当てにしてはいけないからです。
私は、「根」も重視しません。根気が成功に欠かせないことは事実ですが、根気をあまり強調すると、無意味な精神主義に陥ってしまうからです。

 「運・鈍・根」のうちで私が重視するのは「鈍」、つまり愚直です。愚直とは、愚かなほどに正直なことです。
より正確に言えば、周囲から愚かに見られるほど、自分の信念に忠実に行動することを指します。
優れた能力を持つ人が、周囲の目には愚かに映るというのは、彼、あるいは彼女が、他人の評価や社会の流行を安易に受け入れることをせず、あくまで自らの信念に則って行動するからです。
外部からの信号に同調するのではなく、自らの内部にあるジャイロスコープに従って行動する人間が、私のイメージする愚直な人です。
彼、あるいは彼女は、付和雷同しません。しかし同時に、頑なでもありません。彼、あるいは彼女の信念は、確実な根拠に基づいて考え抜かれたものであり、それゆえに単なる流行に付和雷同することはありません。
しかし、自分よりも優れた見解に出会ったときは、それまでの見解を潔く変更する決断力を持っています。
実は、こうした愚直な人間像こそ、私が長年理想としてきた研究者の在り方なのです。
 研究者は登山家に似ています。
誰も解いたことのない課題に挑戦し解答を見出すのが研究者の使命ですが、登山家も、誰も登ったことのない山に初登頂し、誰も歩いたことのないルートを初制覇することに、生き甲斐を感じるからです。そして、単に生き甲斐を感じるだけでなく、他の人々に先んじて業績をあげることによって社会から評価を受けるという点でも、研究者と登山家は似ています。
 愚直な研究者を登山家に例えれば、彼が目指すのは、彼が登るに値すると確信する山です。
周囲に他の登山家の姿はほとんど見かけません。余りに険しい山で、頂上がどこにあるかすら定かではなく、これまでに多くの登山家が挑戦してことごとく退けられ、膨大な時間とエネルギーをかけても登山に失敗する可能性が高いと、他の登山家たちは知っているからです。愚直な登山家も、もちろんそのことは知っています。しかし、この山は登る価値があると確信するがゆえに、ひたすら頂上を目指します。既存の常識に捉われず、思い込みを排して、ありとあらゆるルートを試み、時には迂回することも躊躇せず、一歩一歩着実に頂上を目指します。その試みが成功するとは限りません。しかし、成功したとき、それは世界的業績と称えられることになるのです。
 愚直さは、研究者としてもっとも重要な要素であると私は確信していますが、研究者が愚直であり続けることは、次第に難しくなりつつあります。それは、短期間のうちに、目に見える形での成果を求める傾向が、強まりつつあるからです。企業など利潤を上げることを目的とする組織では、成功の見通しの乏しい研究を長期にわたって続けることは困難です。大学は利潤を目的とした組織ではありませんが、研究費の多くが競争的資金によって賄われており、競争的資金を継続的に獲得し続けるためには、研究者は絶えず研究成果を挙げ続けなければなりません。こうした環境では、成功の確率の低い大きな問題よりも、成功の確率の高い小さな問題を選ぶ傾向が支配的になってしまうのです。
 再び登山に例えれば、研究者が成功の確率の高い小さな問題を追い続けるということは、登山家が登りやすい山を選んで登山するようなものです。
多くの業績を積み重ねても、人類の知の境界を大きく拡張するような成果は生まれないでしょう。既成の知識体系をブレークスルーするような新たな発見は、愚直な研究から生まれる可能性が高いのです。
愚直な研究者であり続けることは、困難なことです。
そのことを前提としたうえで、それでも私は皆さんに、心のどこかに、愚直な研究者を理想とする意識を持ちつづけて頂きたいと思っています。
http://www.u-tokyo.ac.jp/gen01/b_message18_06_j.html
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・・・この後、三つの勧めの二つ目が「俯瞰の勧め」、最後が「教えの勧め」と続くが、この部分だけでも、なるほど奥が深い。

 目先の結果を求めない研究者としての「志」の必須要素は「愚」なのだと説いている。
 「GRIT」では、職業を「仕事」や「キャリア」として選ぶのではなく「天職」として選ぶ人たちが「やり抜く力」が強く、仕事に対する満足感も強いと述べている。その記述と重なってくる。

 「こんなことして、どうなるのか」などと目先の損得にとらわれない愚直さが、時に強烈なエネルギーになる。
 
 とはいえ、「今自分が選んだ道は本当に正しい」と100%の自信を持てる人ばかりではない。
 愚直に突き進んだ行動が良い結果にならないことはたくさんある。
 その見極めが難しいところで、「やり抜く」と「あきらめる」の見極めが、人生を大きく左右する。
 「軌道修正」「早期撤退」「方針転換」も立派な選択肢であり、それによって成功する人生もたくさんある。
 興味を転々とさせる生き方を誰も否定できないことを前提にしての「GRIT=やり抜く力」の指導でありたい。

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