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October 30, 2016

「レジリエンス」から「ポスト・トラウマテイク・グロウス=外傷後成長」(PTG)

(1)レジリエンス

 「レジリエンス」については、昨年末にも書いた。
 自分なりの定義は「逆境に折れないしなやかな心」である。
 「プラス思考」「ポジテイブシンキング」「オプティミズム(楽観主義)」に近い意味合いで使われている。

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 レジリエンスが強い人はいくつかの共通点があることが分かっています。

①自分を信じてあきらめず、いつかよい時期が来ると思うことができること。
②感情のコントロールが適切に行えること
③失敗に落ち込むのではなく、失敗を今後に生かそうと考えること

 レジリエンスは自分の努力で高めることができます。
 ◆自分を否定しない考え方を身につける。
 ◆結果よりもプロセスに目を向ける習慣を身につける
  
 「仕事で使える心理学」榎本博明参照
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 レジリエンスに関するキーワードは、

◆「多様性・関係性」
 自分がさまざまな立場をもっていれば、どれか1つうまくいかなくても、全体が倒れることはない「リスク分散」。

◆「個の強さ(ハーデイネス・頑健さ・ねばり強さ)」
 「多様性・関係性」と相対関係にある。  ふだんは全体とゆるやかにつながっていても、いざというときには切り離しても自分たちだけで成り立つ「自給自足」できる個の強さだ。
 「モジュール性・独立性」とも言う。

◆「楽観性」(肯定的な未来志向・将来の見通しが明るいと思っていること)・感情のコントロール

(2)「柔構造」の思想
 
  「レジリエンス」=「柳のようなしなやかな心」と言われることもあるが、そうなると、日本古来の建築物の「柔構造」の発想と重なってくる。
 これも先に書いたことがある。

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 現代の家の考え方は、地震に対して地面にしっかり固定し、びくとも動かないように家全体を固めようとしています。
 地震という自然のエネルギーに対して、あくまで頑なに抵抗して、人知の力で対抗していこうという発想です。
これを剛構造といいます。
 一方、伝統構法の家は地震の力に対して、どうやってそれを受け流し、分散し、逃がしていくかという考えに基づいています。
 自然のエネルギーに対して抵抗するのでなく、柔軟に受け入れていく作りになっているのです。これを柔構造といいます。
 建物は、外力を受けたとき、一重から五重まで、それぞれがヤジロベエの如く互い違いにゆらゆらと波を打つように揺れ動き、
塔全体がスネークダンスを舞うように作られています。

・・・建築構造としての「柔構造」も興味深いが、そもそも日本人が「柔構造」の発想であることも興味深い。

 「もともと日本人は、自然の力に対抗しようという意識よりも、人間を自然の一部として捕らえ、自然の中でこそ生かされるという意識が強かったと思います。その様な背景があって、柔構造のようなすばらしい知恵が生まれたのですね。」
http://www.ne.jp/asahi/fukada/gont/concept/con-text1.html
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(3)「失敗を失敗と思わない」考え方

 「レジリエンス」「柔構造の発想」を「失敗にへこまない心」とつなげて考えていこうと思う。
 失敗を失敗と思わないエジソンの言葉は、たくさんある。

◆「失敗したわけではない。それを誤りだと言ってはいけない。勉強したのだと言いたまえ。」

◆「それは失敗じゃなくて、その方法ではうまくいかないことが わかったんだから 成功なんだよ。」

◆「私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、うまく行かない方法を 見つけただけだ」
 I have not failed. I’ve just found 10,000 ways that won’t work.

◆「他の発明家の弱点は、ほんの一つか二つの実験でやめてしまうことだ。わたしは自分が求めるものを手に入れるまで 決してあきらめない」

◆「成功できる人っていうのは、「思い通りに行かない事が起きるのはあたりまえ」という前提を持って挑戦している。」

◆成功するのに最も確実な方法は、常にもう一回だけ試してみることだ。
 Our greatest weakness lies in giving up.
 The most certain way to succeed is always to try just one more time.。

◆人生に失敗した人の多くは、諦めたときに自分がどれほど成功に近づいていたか気づかなかった人たちだ。
 Many of life’s failures are people who did not realize how close they were to success when they gave up.

◆わたしは、決して、失望などしない。どんな失敗も、新たな一歩となるからだ。
 I am not discouraged, because every wrong attempt discarded is another step forward.

・・・これらの中で、今回注目したのが、「思い通りに行かない事が起きるのはあたりまえ」のフレーズだ。
 斎藤孝氏の「結果を出す人の『やる気』の技術」(角川ONEテーマ21)修業時代の不条理さを乗り越えることの大切さが説かれている。

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◆不合理だ、不条理だ、不公平だ、そう思うことが世の中には多々あります。
「努力すれば報われる」と私たちは思おうとしていますが、実際には努力が報われないこともあるのが世の常。
それに対して感情をいらつかせて文句を言ったり、ふてくされても、すっきりした気分にはなれません。
 しかし、「これも修業だ」と思うことで、心に渦巻くネガテイブな感情の矛を収めることができる。
納得できないことでも、ここで培われたこと、蓄積されたことがいつかどこかで活きるはずだと考えることで、気持ちの持っていき場ができるわけです。
 ある目的のためにやってきた努力がそこで報われなかったからといって、自分の築いた努力の山を蹴散らかしてしまわないことです。
投げやりにならない。これはこれで無駄なことではなかったと、自分で認めてやる。評価してやる。
 この「これも修業だ」という考え方は、自己肯定の一つのかたちだと思います。
 修業感覚は、否定的な感情の浄化装置であり、不合理なことにも押しつぶされないための耐久姿勢なのです(P100)

◆人間がいかに「快適」に暮らせるかということに主眼をおいた社会が出来上がっていたことで、どうにもならない不合理を乗り越えるメンタリテイを人々が失ってきてしまったようにも思います。
 そのカベを超えていくための精神の基軸を持たなくなってしまった。だからひとたび何かがあったとき、コントロールができなくなって、心が折れてしまう。
非合理なこと、理不尽なことは世の中にある。そういう状況に少し慣れないと言えないと思うのです(P181)
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・・・曽野綾子氏の『人間の分際』(幻冬舎新書)には、
「『やればできる』というのは、とんでもない思い上がり。 努力でなしうることには限度があり、人間はその分際(身の程)を心得ない限り、決して幸せには暮らせないのだ。」
とある。
 曽野氏には「思い通りにいかないから人生は面白い」の著書もある。

 先に引用したエジソンの言葉にあるように「思い通りにいかなくて当たり前」という心構えがあるからこそ、失敗を受け入れる・逆境に折れない心を保つことができる。

(4)「自分の失敗を受け入れる姿勢」

http://www.lifehacker.jp/2012/10/121021tosucceed.html#cxrecs_s より引用。

 最新の研究によると、人間の潜在能力を引き出すカギは「強い自尊心」ではなく、「自分の失敗を受け入れる姿勢」だということがわかってきたそうです。
 今回は、米・コロンビア大学で「モチベーション」をテーマに研究する心理学者Heidi Grant Halvorson博士に、私たちにとって自分の失敗を受け入れる姿勢がなぜ重要なのかを教えてもらいましょう。
「完璧な自分」を維持するため、うまくやれることだけに集中するようになり、ミスをする可能性がある課題には近寄らなくなるのです。
カリフォルニア大学のJuliana Breines氏とSerena Chen氏の研究によると、人間の潜在能力を引き出すカギは「自尊心」ではなく「自分の失敗を受け入れる姿勢」にあるそうです。

■「自分の失敗を受け入れる姿勢」とは

 「自分の失敗を受け入れる姿勢」を持っていれば、何か困難なことが起きても自分を責めたり、無理に自分のエゴを守ったりしないでしょう。(中略)
 「自分の失敗を受け入れる姿勢」を持つこととは、「がんばるのをやめる」や「高い目標を諦める」ことではありません。
 自分の短所を受け入れつつ、与えられた責任を果たし、高い目標に挑戦することは可能です。
 つまり、高い目標は変えず、達成するまでの過程を変えるのです。
 実際、カリフォルニア大学のJuliana Breines氏とSerena Chen氏の研究によれば、「自分の失敗を受け入れる姿勢」を持っている人のほうが目標を達成しやすいそうです。
 すでに失敗を受け入れてしまっているので、自分の能力や行動について客観的に考えて、「次にどうしたらもっとうまくやれるか」というように建設的な考え方ができるようになるのです。
 逆に「完璧な自分」とか「自信を持っている自分」といった自尊心が高い自己イメージを持っていると、どうしても自分のエゴを守る必要が生じて、客観的に自分を見るのが難しくなります。このような人は、何かを失敗しても次にどう改善するかを考えることすらありません。なぜなら、改善の必要性を認めれば自分の弱さや短所を認め、自尊心を傷つけることになるからです。

 覚えておくべきなのは、あなたは必ず失敗するということです。
 実際、成功した人も含めて、みんな何度も何度も失敗します。
 わかりきったことかもしれませんが、成功の秘訣は失敗から学ぶこと、そして挑戦し続けることです。
 そのためには、まず失敗を受け入れることが大切なのです。
 失敗を受け入れられなければ、失敗から学ぶことは絶対にできないのですから。

To Succeed, Forget Self-Esteem | Harvard Business Review
Heidi Grant Halvorson(原文/訳:大嶋拓人)

(5)「ポスト・トラウマテイク・グロウス=外傷後成長

 「ポスト・トラウマテイク・グロウス=外傷後成長」(PTG)も、同じような意味合いで使われる言葉だ。
 齋藤氏の前掲書には、立花隆氏の言葉が引用されている(P198)。

◆私の世代にとって引揚体験も、その一つなら、私の世代にとっての、大空襲体験も、ヒロシマ・ナガサキ体験も、あるいはオキナワ体験もみなそうだろう。
我々の世代は、みな訳がわからない理不尽な苦難体験、むごい大量死が周囲に起るのを見聞する体験、トラウマ体験をもって人生をはじめた。だが、そのトラウマ体験に押しひしがれるのではなく、むしろそれを糧として成長を遂げる「PTG」世代として生きてきた。

・・・「それが戦後日本の繁栄を導いた」と立花氏は言うが、「それがいつの時代も日本の復興を導いた」と言ってよい。 
 強烈な負の体験を前に向かうエネルギーに転換する力が「PTG」である。

 近年の研究では、ストレスやトラウマの経験は、人々にとって良い側面もあることが考えられている(Haidt, 2006)。
 その一つがPTGであり、ノースカロライナ大学シャーロット校心理学部教授のリチャード・テデスキ博士はポジティブ心理学が生まれる前から、人生における大きな危機的体験や大変な出来事を経験するなかで、そのつらい出来事からよい方向、成長を遂げるような方向に変化する人々の調査を行っている。

 「危機的な出来事や困難な経験との精神的なもがき・闘いの結果生ずる、ポジティブな心理的変容の体験」

 これがPTGの定義である。
 長い人生やキャリアにおいては、逆境はつきものであり、避けて通ることはできない。
 そうであれば、困難を乗り越える力(レジリエンス)を身につけ、たとえ耐え難い経験に直面してもその後に成長がもたらされるかもしれないと考えるほうが将来に希望がもてるという。

 http://www.positivepsych.jp/pp6/20131020.html

 ただし、PTGは不幸にも遭遇するものであって進んで求めるものではない。

◆PTGは、今まさに苦しみを経験している人に、「試練を通して成長しなさい」というメッセージを押しつけるものではありません。
◆PTGは、避けられない苦しみ、終わりなき苦痛、もはや二度と拭い去れない悲しみを心に抱え、のたうちまわり、傷だらけになりながらも、それでも未来を見つめ、一歩ずつ一歩ずつ自分の足で歩いていく人たちを意味する言葉なのです。
◆PTGが、たいていの場合PTSDなしでは生じないことを思うと、最初に述べたような、「苦労は買ってでもせよ」のような、おいそれと人に勧められるようなものではないことがはっきりわかります。

 そういう意味では、あえて「PTG的な」というニュアンスで、逆境を乗り越える前向きな生き方を推進できる方策を考えていきたい。

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